第12話 これからについて話し合おう

 コンコン。ドアがノックされているようだ。

 コンコン。更にドアがノックされる。

 うるさいな。しかたない起きるか。


 「ああ、なんだ?」


 俺は、不機嫌そうな声で、ドアの方に向かって、声を発した。


 「あら、起きたようですね。かなりノックしたのに返事がなかったから、フロントに無断で出かけたのかと思ってしまうところとでした。」


 声の主は、ディートのようだ。


 「それはすまなかった。疲れて寝てしまったようだ。」


 「そうでしたか。そろそろ夕食の時間ですが、どうしましょう?」


 「もうそんな時間か。すまないそちらの部屋に人数分用意しておいてくれ、注文は悪いがディートに任せる。俺はちょっと準備してから向かう。」


 「わかりました。疲れているなら無理をしないようにしてくださいね。」


 「ああ、ありがとう。気を付けるよ。」


 その後、顔を洗ってさっぱりさせてから、みんなの所に向かった。


 「遅れて済まない。」


 俺は、一言誤ってから、皆と食事をした後、今日、情報を集めたことを報告し合った。


 「ギリーさんの方は、ここでは、武器を持った魔物は他には見つかっていない。ただし、領内にはギルドが未発見の魔物もかなりいるという事ですね。」


 「ああ、それで、ディートさんの方は、行商や買い付けの護衛の冒険者の話だと、近隣のいくつかの村の近辺に魔物の生息域があるが、護衛中のトラブルを避けるために確認まではどこもしていないと言う事か。」


 「ええ、確実に居そうな村の場所は、いくつか確認は取ってあるわ。」


 「ありがとう。で、これからどうするかだが?」


 「うーん、いくつかの村に訪ねて確認してみるか?」


 「それもいいが、その村々がお互い近ければいいが、遠いと手間が掛かるな。その間、収入が見込めないぞ。」


 リアの提案に、俺は、現実問題として移動とその間の稼ぎの問題を上げた。移動で時間が掛かるのが、ゲームと違って面倒なとこだよな。

 それに対して、皆がそれぞれ意見を述べる。

 結局、移動や魔物探しの間、稼げないのが問題となって来る。

 俺は、兎も角、みんな収入がなくなるのは、避けたいという事になる。

 俺が、その間の生活費を出してもいいが、彼女らにしたら、俺にそこまでしてもらう義理もないと思っているだろうし、それで人間関係がおかしくなるのも困る。なので、それは、口に出さないで置く。


 今回の稼ぎを考えれば、移動中は宿代もないから、金額的には余裕がある。だが、それは、みっちり魔物退治に時間を当ててるからで、移動に時間が掛かったり、稼げる魔物に出会えなければ、その辺りも難しくなるか。

 そう、現状を考え、俺は、こう口にした。


 「今回の稼ぎを見ると、ぎりぎり大丈夫そうだが、それでも魔物がなかなか見つからないとかあると厳しいか。」


 「では、行商を行いながら、村々を回ると言うのはいかがでしょう?」


 ディートがそう口にしてきた。


 「可能なのか?」


 「ええ、幸い馬車もありますし、ギリーさんの鞄にある程度入れさせていただければ、ただ、塩や布、調理器具と言った常時必要なものは、定期的に訪れている行商人の商売の邪魔になってしまうので、売るべきでないので、確実に儲けを出せるかは仕入れの上手さ次第になってしまいますが。」


 「でも、それだとあたしらは、稼げないよな。」


 「同じパーティーですから、護衛や売り子をして頂ければ、その分はお支払いたしますよ。」


 「売り子かぁ、面白そう。」


 「ミサは、器量もいいからいいけど、あたしはなぁ。」


 「でも、リアさんだって持ち前の明るさで、結構向いてるかもですよ。」


 あー、リアが売り子するのを想像したら、おじちゃん達やおばちゃん達に囲まれているのが容易に想像できてしまった。

 俺は、そんな考えを追い払い、話を続ける。


 「それか、他の領地のギルドに向かうという手もある。それも移動の間は、稼ぎがなくなるけどな。あと一日、情報を集めて決めよう。行商をするなら一日出発を後らせればいいんだからな。」


 「そうですね。では、今日はここまでにしましょう。」


 どうするかは、先延ばしにはなったが、この領地や近辺の村を行商しながら魔物を調べていくか、別の領地のギルドで情報を集めるか、だいたいどっちかで行く形になるだろう。

 明日の聞き込みで、有益な情報が手に入ればまた変わって来るが、そう簡単には手に入らないだろう。






 翌朝、俺とリアとミサで情報を集めることになった。


 「うん。二人とも、洋服を買ったのだな。」


 「あ、気付いてくれた?今の宿だとちょっと着古した服では、入りづらかったから、ギリーさんに借金の返済もまだなのだけど買っちゃいました。」


 「うん、そこは悪いと思ったが、あたい達も一応女性だから、許して欲しい。」


 「気にするな。こちらこそ、余計なっ出費を強いて済まなかったな。」


 「いえ、そこは謝らないで褒めて欲しいのですけど。」


 「そうだな。2人ともすごく似合っているよ。」


 俺は、そう言って、一生懸命笑顔を作ってみた。


 「なんか、取ってつけたみたいな誉め言葉だよな。ミサ。」


 「そうですね。でも、ここは素直に喜んでおきましょ。」


 うん、ぎこちなさ過ぎたか。でも、本当に似合っているんだがな。

 今日もギルドで聞き込み予定だったが、夕刻の換金の時間帯までどうぜ閑古鳥だろうから、今日はいつもの市だけでなく、近郊の村々からも人が集まって来る市の日なので、そっちに行って、近隣の村の人間に聞き込みをすることにした。

 ついでに、遠征の食料や調理スキルで作れるレシピの材料があれば、買って試して見よう。

 その結果、レシピの材料は揃わなかったが、魔物の情報を狩人の男から仕入れることができた。

 そして、そのまま夕刻にギルドに行ったが、こちらでの聞き込みは残念ながら、徒労に終わった。


 そして、また夕食の後に話し合いをした。ディート達は、近郊のギルドにも出入りしていた商人の護衛にも話を聞いたが、特に武器を持った魔物の情報は手に入らなかったそうだ。

 ただ、聞き込みで得た村の情報を、地図に落とし込んでくれていた。地図と言っても北の街道を徒歩で2日で○○村、その西方に魔物有と記された簡単なものだが、十分に役立つものだ。

 そして、こちらも市で仕入れた情報を話した。


 「弓を持った魔物ですか。」


 「ああ、狩人が森に入った時、魔物の集団を見つけて、隠れて様子を伺っていたら、射かけられたらしい。」


 「そうなんだよ。でも、まぁ弓なんであたい達には不要なんだけどな。」


 「そうとも限らないぞ。前は剣と刀が手に入った。それを考えれば、他に持てに入るかもしれないし、弓を使う仲間が加入する可能性もあるだろ。」


 「そうですね。それに行って、その魔物からも武芸の書が出れば、武器持ちを探すと言うのが間違いじゃないのが分かります。確かめてみましょう。」


 「じゃぁ、そこに向かうか?」


 「ただ、途中にいくつか村を通過するから、そこも出来れば立ち寄って、どんな魔物なのか確認しておきたいな。」


 「そうですね。ついでにそこでどんな魔物が出るか確認しときましょう。」


 「よし、わかった。それでいいよ。」


 「はい、そうしましょう。」


 「それで、行商はどうしましょう?お嬢様。」


 「いくつか村は通りますが、どれも近場すぎて売り物はさほど売れないのでしょうから、しても買い付け位でしょうか?」


 「買い付けすると街で売ることになるのか?」


 「ええ、基本そうですね。そのために商業ギルドにも加入する必要はありますが、ギリーさんさえよければ鞄を貸して下さいません?そうすれば、買い付けても今すぐ売る必要はないので、この街でギルドに加入する必要はなくなりますので。」


 うん、確かに鞄に入れとくとゲームと同じで食べ物とかも悪くならないから、問題ないけど、どうしようか?


 「買い付けると、その分ギルド加入の資金が不足するんじゃ?」


 「村での買い付けです。そこまで資金が減らないでしょう。それにこの街で商業ギルドに加入する気はありませんので、貸し出しが無理なら、買い付けしないで情報収集だけで、村に立ち寄るだけに致します。」


 うん、確かに魔物の情報収集だけだと、どこかの間者に間違われるなど怪しまれて、変な噂を撒かれて面倒に巻き込まれるかもしれないか。


 「そうか。なら、買い付ける価値がありそうなものがあれば、買い付けよう。」


 「ありがとうございます。」


 「では、お嬢様、明日仕入れ用の資金を用意しておきます。」


 「いや、その必要はない。俺がとりあえず出すから、あとで街に戻った時にでも返してくれればいい。大金は一か所で管理した方がいいだろう。」


 「わかりました。申し訳ありませんが、お願いします。」


 こうして俺達は、翌朝、再び遠征に向かう事にしたのだった。


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