第11話 情報を集めよう
馬車と馬は、イオナの街の外の牧場に預けることにした。
街に入れるとその分税金が取られるからだ。領主さん、しっかり、金をとろうとしているよね。
宿の部屋割りは、結局、話し合いを余人を交えずしやすいようにと、女性陣が4人部屋を取ることにした。
食事も4人部屋ならそこで可能と言う事だし、その方が給仕も居ないので、本当に気兼ねもなく食べれるしね。
宿代は一人部屋と変わらず一人当たり銀貨1枚。5人分て1泊銀貨5枚だ。最初は、俺一人で銀貨3枚なんてところに泊まってたのだから、全く問題ない金額だ。
最初なので、長めの休息を取ることにして、4泊することにした。翌朝からの休日を設けて、その2日間で次の狩場をどうするかなど決めようという話になった。
翌朝、俺はギルドに遠征で手に入れた魔石と他のドロップアイテムを換金して、ついでにギルドで魔物について情報を集めることにした。
遅く向かったという事もあり、ギルド内は冒険者はほとんどいなかった。
まぁ、朝一で来ても、常設依頼がほとんどだし、そんな混んでもないのかもしれないが、換金時以外ギルドに来ることも殆ど無いので、よくわからない。なので、ギルドに加入しに来た時空いていた、確実に空いてるとわかっているこの時間に足を運んだのだった。
カウンターを見ると、加入時に話した受付のお姉さんレジーナがいたので、そこに向かった。その後の換金の際も手が空いてれば、換金をお願いしてたので、ある程度顔なじみになっているはずだ。
「こんにちは、レジーナさん。換金に来たのだがいいかな。」
「はい、よろしいですよ。ギリーさん、今日はお一人ですか?」
おお、良かった。顔と名前は覚えられているようだ。情報を集めるにもある程度信用があった方が有用な情報も集まるしな。
「ああ、他のメンバーはそれぞれ買い物とか別の用事をしている。では、ちょっと大きい物もあるが構わないか?」
「はい、大丈夫です。」
「では、……。」
そう言って、俺は今回の魔石と激昂蝶の羽を数十枚、それとなまくらの剣と刀数本を鞄から取りだした。
「なるほど、確かに結構ありますね。魔石は、2種類、結構な量ですね。それと激昂蝶の羽ですね。羽の状態も凄くいいです。あと、この武器は鬼人のですかね。残念ながら、剣と刀は鋳つぶして鉄として再利用でしか使い物にならないので、鉄の買取金額になりますがよろしいでしょうか。」
レジーナさんは、俺が取り出した品を、手早く確認して、買取内容を確認していく。
「ああ、それで問題ない。」
「畏まりました。では、品質確認をして買い取り額を決めますので、少々お待ちください。」
そう言うと、レジーナさんは、魔石、羽、武器をそれぞれの査定担当の所に届ける。
俺は、戻って来たレジーナさんに後ろに客が居ないのを確認して話しかける。
「持ってきた物を見て魔物を言い当てていたが、激昂蝶はあまり狩られない魔物と聞いていたがよくわかったな。」
「ああ、ドロップ品は特徴的なのが多いですからね。見れば自然と覚えていきます。」
「そう言うものか。」
「はい、激昂蝶は、確かにあまり狩られませんが薬師ギルドで年に1、2回羽を集めて欲しいと依頼が来るのです。と言っても、あまり使われない薬のようで今回の物を持っていけば暫くは、依頼がなさそうですが。」
「それじゃぁ、薬師ギルドの依頼料を冒険者ギルドとしては、取りっぱぐれたか。」
「そうかもしれませんね。でもあそこに現れる鬼人も結構な数倒しましたね。普通は手強いのと、ドロップ品が重く持ってくるのが大変な割に、買い取り額が安いので、皆さん、鬼人を避けて戦うと聞いてますよ。」
なるほど、鬼人は、確かに手強いし、歩いてあそこまで行くと、移動にほぼ丸一日、下手したらもう少しかかるし、くず鉄代にしかならない重い物をそう何本も持っては帰れない、だから狩られないのか。それなら、武芸の書が出るのを知られていないのも納得していいか。
「そうだったのか。いい腕試しになると思って何度も戦ってしまったんだ。」
「気を付けてくださいね。それで怪我したら元も子もありませんから。」
「だな。気を付けよう。それと鬼人のような武器を持った魔物は他にも聞いたことないか?いい連携確認の相手になるので似たようなのとも戦いたいのだが。」
「もう、言ってるそばから。でも、残念ながら武器を持った魔物は、この辺では聞いたことありませんね。ただ、この領内の魔物の居る場所をギルドでも、情報が得られれば更新はしますが、全部把握しているわけではありません。それと他の領地の情報も分かっていないので別のギルドで聞けば、もしかしたら、そう言った情報を得られるかもしれません。」
「同じギルドで連携していないのか?」
「ギルドとしては共有したいのでしょうけど、貴族の方々が地図や魔物の生息場所の情報を秘匿したいがため、その辺の共有が出来ていないのです。」
「なるほどな。いろいろ話を聞かせて貰ってありがとう。ためになったよ。」
領地が戦場になる際、領内の状況は敵になるべく知られない方がいいものな。同じ国内でも、隣がちょっとしたいざこざから牙をむいて来たり、国と敵対関係になるなんてこともあり得ない話じゃないものな。
それと貴族と冒険者ギルドの関係だって、武芸の書の中級を冒険者には渡さないようにしていたり、領内の情報を秘匿したりだ。
貴族の力が強いのも分かるから、情報を貰えるように強く言えないのも仕方ないのだろうな。
俺は、そんなことを考えながら、レジーナの後ろに目を遣る。するとすでに鑑定が終わり、それを確認や集計をしている職員も手が止まったのを見て、話を切り上げることにした。だいたい聞きたいことも聞けたし、換金作業も丁度済んだようだし、この辺りにしておこう。
「いえ、今回はあまりお役に立てませんでしたが、今後も気軽にご相談ください。」
そう言って、レジーナさんも後ろの状況を確認する。集計をしていた職員がそれに気付き、席を立ちこちらに来る。
「お待たせしました。」
こちらに来た職員は、そう言うとボートに載せた内訳の書かれた紙をレジーナさんの前に置いて、元の席に戻って行った。
いつも通りの換金の手続きだが、空いているだけあって、いつもより量があったにもかかわらず、それほど時間は掛からなかった。
それを再度レジーナさんが金額と内訳を確認をし、それを終えると、俺に今回の換金内容を説明しながら、お金を俺に渡してくれた。
「説明は以上になります。一週間くらいの遠征にしては結構稼げましたね。でも、あまり頑張りすぎないで下さいね。」
「仲間もいるんだ。無理はしてないさ。」
そう言って、受付から離れて、ギルド内を見回す。冒険者からも話を聞こうと思ったが、若い冒険者が数人いるだけだったので、あまり有益な情報は聞けそうもないと諦め、市場や食料品店を覗きながら、大分早いが宿に戻ることにした。
そしてフロントで他の仲間が帰ってきていないのを確認し、自室に戻った。
ベットに横たわると、頭の中で情報画面を開く。
名前:ギリー 性別:男性 年齢:18歳
所属:冒険者ギルド
武器スキル:杖術 Lv.5 斧術 Lv.3
魔法スキル:回復魔法 Lv.4
特殊スキル:調理 Lv.3、手芸Lv.3、採集 Lv.2、探索 Lv.2
能力
体力: 88
知力:109
器用: 95
敏捷: 77
魅力: 93
装備
体: 革の鎧一式(体力+5)
足: 革のブーツ(敏捷+3)
うん、大して成長してないな。スキルは新たに習得した斧術が大きく上がってはいる。その他は、回復魔法はレベルこそ上がっていないが、使える魔法は2つ増え、もう少しでレベルが上がるところまで行っているくらいだ。
能力は、体力が3と知力4が、敏捷ガが1と僅かに上がったが、強くなったと実感できるほどではない。
一カ月前後でこれだけ成長したと考えれば、まぁいいことなのか?
一年は、ここでもゲームや俺が居た世界と同じ12カ月だから、単純計算で、体力、知力は、一年で30から40前後上がる計算になる。
でも、俺の能力値は、すでに一般冒険者としては高い方だと言ってたから、実際はそんなに上がらないかもしれないな。
これが、ベテラン冒険者と強さ的には同じくらいだとすると、今後どう成長するのかいまいちわからないよな。本当にどうなっているんだろ?
しかし、俺って、これで本当に強いんだろか?昔の数値を知っているので、いまいち強く思えないし、他人の能力も分からないから比較できないんだよな。
今のところ根拠が、鞄に入っていたラクシュリアさんのメモだけだしね。
ゲームだと他人の能力もパーティーを組むうえで、キャラの性能を知る必要があるため、覗くことができたが、ここじゃ、色々試して見たができないかった。もしかしたら、見れる方法があるのかもしれながわからないんだよな。
能力面については、ラクシュリアさんのことを信じるしかないのだけど、俺の能力も他の冒険者同様ほぼ上がらないとなると、俺の持っている装備ほぼ使えなくなるんだよな。
それって、もったいないよね?ちゃんとゲームどおりの上限で成長するんだろうか?
能力値については、一緒にパーティーを組んでいる彼女たちに聞くということも考えたが、そういう話が向こうから出ないので、いまいちこちらから聞きづらくて聞けていない。
スキルレベルの話は通じているから、彼女らも自分の能力は見えていると思うんだけど、他人の能力って気にならないのかな?
その辺の仕組みも交えて、いろいろ聞いてみたいが、能力を聞くってとても失礼な事なのかもしれないしなどといろいろ考えて聞けていない。もし、能力値については俺だけしか見れないと言う可能性もあるしね。
武器や装備を見ていた時、性能がバラバラなのに同じ値段で売られていたことも考えると、俺だけ見れて、他の人は、能力値を見れないと言う可能性があるんだよな。
うん、困ったね。この辺の事情も、ラクシュリアさん、教えておいて欲しかったよ。でも、まぁ、今はこれ以上考えても仕方ないか。
結局、パーティーメンバーの信用を上げて、それとなく聞き出すしかないんだよな。
となると、直近の課題は武芸の書だけど。これを探すのも、情報が一元化されてないようだから、本格的に探すとなるとかなり骨が折れることになりそうだな。
ディート達が商人や行商人、その護衛から情報を集めてくれているが、その辺がどうなるかだな。基本、村や町の移動だから、領内はギルドと同程度の情報だろうから、領外の情報に期待する感じになるかな。
リア達は、本来俺に同行予定だったが、用があるので今日だけはと言われた。そのため、別行動をしているが、あの二人はこういうことに慣れてなさそうなので、ボロがでるといけないので、今日の所は、情報収集はお願いしていない。
それでもし、今回の聞き込みが不発に終わったらどうするかも話し合わないといけないな。
あとは、ディートさんが俺の袋を気にしていたので、手芸技能もどうに試せないかな。初級は、終わっているので、袋は二種類作れるが、ゲームの時のような性能になるかだな。これも人前で作れないし、ギルド制度のおかげで、簡単には試せないのがな。
仮に作れても、俺しか作れないとなると、それはそれで問題だよな。下手したら、どこぞの貴族や商会に一生袋づくりの為に囲われてしまいそうだ。
あ、でも、何も袋で試さないでも、もう一つの調理技能で、料理を作って、試して見れば、ある程度生産技能についても、わかってくるかもしれないな。
その辺も、どうやって試すか、もう少し考えておくか。
そんなことを考えていたら、いつの間にか寝てしまったようだ。
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