第8.5話 閑話 ディートの視点
魔物の釣り役のパルマが2匹の小鬼を引き付けようとした時、その横を動いていた3匹の小鬼が向きを変え、パルマの方に向かって来た。
慌てて声を掛けたが、間に合わず、パルマは、5匹の小鬼を釣ってしまった形になった。
今までは取り合いをするほどの狩場に居たため、パルマに声を掛けるのが遅れてしまいました。まずいですわ。
取り合えず、数を減らさないと、そう考え、小鬼に切りかかります。しかし、数が多いため、上手く有効な一撃を上手く与えられません。
その間にも盾役のパルマが傷ついて行きます。でも、焦れば焦るほど踏み込みが甘くなったりと攻撃が雑になってしまいます。
その時声が聞こえました。
「加勢するぞ。」
私は、すぐさま返事をしました。
「頼みます。」
良かったこれで助かるかもしれない。
そう思いながらも油断せず、助太刀が入るまで、私は、パルマと一緒に受け身に入ります。
そしているうちに、魔法が付与されたのでしょうか。恐怖心が和らいで冷静に対処できるようなりました。更に、力もみなぎってきたように感じます。
また、遠方より魔法による攻撃で、私の攻撃を受けて動きの鈍っていた小鬼が2匹撃ち減らせれ、援軍が1人こちらに駆けつけて、飛び込んで来ました。
完全に私達が有利に傾きました。
最後には、先程声を掛けてくれた方が、駆けつけて頂ださり、最後の一匹に止めを刺し、戦闘はその後危なげなく終わりました。
パルマと私は、無事に戦闘が終わったことに礼を言い、今回のドロップを譲ることにしました。
しかし、彼はそれを私達と平等に分けるようにしてくださいました。
自分が優位に進められる交渉を、対等に進めて下さるなんて、なんて人間の出来た方なのでしょうか。まぁ、私達に対して優位に立てると計算してなら、気を付けなければなりませんけども、どうなのでしょう。
そして、お互い自己紹介をすることになりました。声を掛けてくれた彼は、ギリーと言う回復士だとわかりました。
回復士は、多くが無償で魔法の書を貰うため教会所属することが多く、冒険者として活動するには金貨10枚とかなりの金額を支払わないと魔法の書が貰えないので、冒険者の方は滅多に居ません。
そんな方がこの辺境で冒険者をしているなんて、もったいないのではないでしょうか。
その上、パルマの傷に気付くと、無償で治療までしてくれました。私達は、申し訳ないといくらかのお金を払うと申し出たのですが、彼に丁重に断られてしまいました。
私達は2人組という事もあり、これからを不安に思っていたので、彼らと一緒にパーティーを組みたかったのですが、相手は、魔法師と回復士がおり、十分強そうだったのと、助けて貰った立場もあり声掛けできませんでした。
それを察してくれたのでしょうか、後ろのリアさんと名乗った女性がが一言、二言彼に言い。彼が私達を試しにパーティーに誘ってくれたのでした。
パルマに、どうするか問われましたが、特に害意も感じられず、ありがたいことなので、その申し出を受け入れ、パーティーを組みました。
5人で狩りをすることで、3匹の小鬼でも数の優位が作れて、皆さん、技量も良く安定して狩りを行うことができました。
敵が強くなったにもかかわらず、怪我も以前の狩場の半分のしなくなりました。その上、ギリーさんが魔法で治療までを行ってくれるのです。
稼ぎが上がって、薬代が減ったのに、パーティーの取り分は、お互いが無くてはならない関係なので、平等にと言われました。
パーティーを長く保つコツではありますが、回復士と言う特殊な立場でも、それを貫いているのは、流石です。
それから3日程お試しのパーティーで狩りを行い。休憩時間にお互いの身の上を話したりして過ごしました。
最初、ギリーさんとリアさん、ミサさんの出会いを聞いて、彼女らは騙されたのではとも思いました。だけど、ギリーさんが憮然とした表情でその話を聞いているのを見て、とても騙しているようには見えず、本当にいい人なのだと思うようになりました。
その後、お互いいろいろ情報なども交換を行いました。元冒険者のご両親に育てられたと言うこともあるのか、この辺の地理や情勢には詳しくありませんでしたが、魔物との戦闘についてや技能については、深い知識を持っていました。
ただ、中級武芸の書とかの取り扱いについて話した時は、なにか微妙な表情をされていましたが、何だったのでしょう?
習得も、順調に進み、あっという間に3日が過ぎてしまいました。
今日は、一緒に食事をしようと言う話になりました。果たして、私達は必要とされ、これからも一緒にパーティーを続けることができるのでしょうか。
食事はその辺の酒場に案内されるのかと思いましたが、中々の高級宿の食堂の個室に案内されました。値段もそこそこですし、普段使いするようなところでありません。
リアさんやミサさんも戸惑っています。近隣の村から来た彼女らは恐らく利用したこともないのでしょう。
私達でさえ、年に特別な時に1、2回利用するような場所ですよ。
食事を終えて、本題とばかりに私達にパーティーに入らないかと誘っていただきました。
なぜ?あなた達は問題なくて私達の返事待ちのように聞くのです?あなた方は、回復士に魔法師、腕の立つ剣士が居るのですよ?
それに比べ私達は、基礎こそは出来ていますが駆け出しの衛士と珍しいだけの太刀使いですよ。
パルマの怪しいと感じたのでしょうか?言葉を選びながら、私にどうするか尋ねてきます。
私は、パーティーのバランスの件や、今後パーティーをずっと続けられないことを話、遠回しに私達でいいのか尋ねます。
彼は、バランスについては問題ないと言い。今後のことについては、一口咬ませて欲しいと言ってきました。
ますますわかりません。こんな所で食事を普段からしたり出来るのです。私達と一緒じゃなくても、商売をしたいなら出来るでしょうに。
私達の利益をすいとろうとしているのでしょうか。私達にあまりメリットがないのではと、問い詰めて見ます。
すると彼は、いろいろ譲歩を示してきました。
一応、一緒に居る彼女らにも揺さぶりをかけて見ます。すると、あっさり彼女らは別の道を行くのも仕方がないと言ってきました。
どうやら、私が気負い過ぎたようです。
話していて、わかってたではありませんか。いい人だって。
そうして、私は、申し出を受けたのですが、もう少し、慎重にするべきだったのかもしれません。
ギリーさんは、私に向かって馬車をすぐに買うことができるか聞いてきました。
私は、買えるが、駆け出しの冒険者が出せる金額でないことを暗に告げたのです。
だけど、彼は、金貨100枚くらいすぐ出せるような口ぶりで話すのです。
私達が、行商をするために目標にしている金額をですよ。
しかも、行商を行うのに使う訳ではなく、理由は快適に過ごすためだそうです。
ギリーさんは、よほど大成した冒険者さんの息子さんなのでしょうか?どこぞの貴族の子息と言われても驚きませんよ。
次の日、本当に場所を買いに来ました。しかも、ギリーさんは馬車を扱えないということです。
それに馬車の良し悪しも分からないようなので、パルマに馬車を選び、購入の交渉もするよう申し出るよう命じました。
パルマがある程度交渉を纏め、購入の是非を確認しにギリーさんの所に行きました。ギリーさんは、レビテーションボードがどのような物か確認すると、わざわざ荷台にもつけるように言ってきました。普通は高価なお酒を運ぶのでもなければ付けませんよ。もったいない。
交渉がまとまり、今度は積み込む消耗品を買いに行くことになりました。
その時パルマが御者か馬丁を雇う様子もなかったので、忘れているのかと確認していたのですが、不要と言ってました。
馬は、狩場の近くまで牽くことができますが、馬車はそうは行きません。どうするのでしょう。
その後、買い物をしていたのですが、おかしなことに気付いたのです。普通、いろいろと買い込むと嵩張るので、馬車のある所に届けさせたりするのですが、ギリーさんは、それらの荷物を受け取ると、いつの間に手元からなくなっていたのです。
私は、注意しながら、ギリーさんを見ていると持っていた荷物は自然と鞄にしまわれていたのです。
そのことを彼に問い詰めると、平然と何が問題なのかと言った態度で答えが返ってきました。
「うん?商人の鞄と言われている物だが?なにか?」
それでも、私は納得できずに問い詰めます。ミサさんもそれに気付き同調してくれます。
ギリーさんは、私達に何か尋ねてきて、知らないと私達が答えると、しばらく考え込み、気にするなと言いつつ、口止めをしてきました。
確かにこんなものがあるのが知られたらまずいですよね。
それには同意しつつ、人気のない場所では、色々話させて貰いました。ギリーさんは、いい人なのは間違いありませんが、なんか色々無茶な人でもあるみたいです。
次の狩りの場所も、わざわざ戦いづらい激昂蝶を狩ると言ってきましたしね。
競合は居ないのでいいかも知れませんが、敵が強いし面倒くさいしで、人気のない狩場ですよ。
同じ人気のない狩場でも、もっと楽なとこもありますのに、本当に何を考えているのでしょう。
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