第8話 みんなで買い物をしよう
翌朝、約束どおり皆で、ギルドの前に集まった。ここからが商業区画への移動も楽なためだ。
「すまないな。ところで馬車の御者を誰かできるか?」
俺は、馬車を買うと言ったが、俺は馬車を扱ったことがないのに気付き、誰か扱えないか確認してみた。
「なんだ、馬車を買うと言ったくせにできないのか?」
リアは、呆れてそう言って来た。
「ああ、出来ないぞ。」
馬鹿にされたようで悔しいが、俺は、きっぱりとそう言い放った。
「私が出来ます。」
「ええ、私も扱えますよ。」
「私も、村で運搬の手伝いをしたことがあるので、少しくらいなら扱えます。」
おお、なんとパルマとディート、それにミサも扱えると返事があった。
まぁ、パルマとディートは行商を考えてたし、当然か。まぁ、俺も後で3人に教えを請おう。なるべく多くの人が扱えるのが望ましいしな。
「それは、よかった。では行こうか。ディートさん、馬車を扱っているところへ案内をして貰えるか。」
そう言って、俺達は馬車を扱う業者の所へ向かった。
店には、丁度中古の馬車が2台あった。1台は既に幌が掛かった荷馬車、もう一台は普通の荷馬車だった。
さて、どっちを買えばいいんだ?
俺が、そう迷っているとパルマが話しかけて来た。
「私に、交渉を任せて頂けないでしょうか。」
俺に場所の良し悪しなんてわからんからな。ここは任せよう。
「ああ、頼む。」
「お任せください。それでは、金銭を押さえる形で選びますか。快適さを優先する形で選びますか?」
「もちろん、金に糸目は付けないので、快適さ優先で選んでくれ。」
「では、そのように交渉してしまってよろしいのですね。」
「もちろんだ。」
俺のその言葉を聞いて、パルマは、店主に断って、荷馬車の確認を初めた。
一通り確認が終わると、店主と交渉を始めた。いろいろと頑張ってくれているようで、結構時間が掛かっていた。リア達は、さして興味が無いので、飽き始めて店に横に繋がれていた大きなトカゲと言うか恐竜のようなものと戯れ始めていた。
俺は、その生き物が気になり、ディートにあれは何かと尋ねた。
ディートは、あれは、馬の替わりに乾燥地帯で荷馬車を引くための竜騎と言われるトカゲ型の魔物だと教えてくれた。
あそこにいるのは尻尾が無いから、荷駄を引くことしかできないため比較的安いが、尻尾があると竜騎兵と呼ばれる騎兵の乗り物となるため、非常に高価なものになるそうだ。
一日の食事は、水と店先に積まれている30cmくらいの乾燥したコオロギのような物を1匹食べるだけで済むので、ここから東方に広がる草地が少ない場所の移動に重宝するらしい。
変わった動物もやはりいるのだななどと、リア達がトカゲの魔物と触れ合っている様子を眺めていると、パルマが戻って来た。
パルマによれば、幌が無い馬車の方が少し古いが状態は良いそうだ。
それと馬車に着ける幌は魔法薬を染み込ませた防水、防火に優れた物を用意させる。また幌の前後には虫よけの網も用意させて、御者台には、レビテートボートを設置するように手配した。
また、馬は2歳の馬2頭を用意して貰ったそうで、全部で金貨45枚となるとのことだが、それでよいかと尋ねて来た。
荷馬車は、状態が良い方がいいから構わない。幌も魔法薬を染み込ませてあると性能が良くなるようだし、良いだろう。虫よけの網もあった方が当然良い。あとレビテートボードってのはなんだ?
「すまんが、最後のレビテートボードって何だ?」
「ええと、馬車の揺れを防ぐ魔導です。他にも重い荷物の運搬とかに使われています。仕組みは、魔石を加工した魔輝石や自身の魔力を使ってレビテートの魔法を発動させてを浮かせて、馬車の振動を伝えないようにしたり、重い荷物を少人数で運んだりするための板です。」
なるほど車のサスペンション替わりのものか、なら、ロイヤルサルーンとは行かないが、荷台にも設置して移動を快適にしたいな。
「ほう、それは便利なものだな。それを荷台の方にも設置できるのか?」
「できますが、そのサイズになるとお高いですよ。」
「問題ない。」
「わかりました。それも付けるように話しましょう。」
そう言って、パルマは店主と交渉を再開した。
結局、馬車と馬2頭に、幌やレビテーションボードなど一揃えとおまけにレビテーションボード用の魔輝石を一週間分つけて貰って、合計で金貨53枚で買い上げた。
馬車は、明日までに使えるように仕上げてくれるという事なので、俺達は、そのまま遠征に必要な物の買い出しに向かう事にした。
「あの馬丁か御者は雇入れないので?」
買い物に向かう途中、パルマが人の金で用意する物なので、そう遠慮がちに聞いて来た。馬の世話人や馬を操る専門の人か。まぁ、その辺も雇入れるとなると専門の人間だ、パルマが遠慮がちに聞くと言うのは、結構するのだろう。
「うん、要らないな。」
俺は、そう即答する。
「でも、魔物と戦っているとき、馬や馬車はどうするので?」
なるほど、馬や馬車をその辺に放置するわけには行かないから、それで心配して聞いて来たのか。
「大丈夫だ。その辺は考えてある。」
俺は、うっかりその辺を考えてなかったが、手はあるので、そう言ってこの会話を打ち切った。
買い物に行く前に、そろそろ昼飯の時間か、何か食べたいが、どうするか。
この辺りでは一日3食食べる習慣はあまりないらしく、昼を食べるのは、冒険者や人足、職人と言った体力を使う者くらいで、街中でも店は昼時営業をしてなく、屋台で軽く食べるのが主流となっている。
仕方なく、5人で屋台の肉串とスープで腹を軽く満たし、その後、遠征用に鍋などの道具や塩やハープ、野菜や肉などの食材、あと布や衣類を買ったりした。
「ねぇ、あなたの持っている鞄はなに?」
ディートが、買った品物を次々鞄に入れているのを見て、そう尋ねて来た。
あー、しまったな。つい便利で使っていたよ。
これは明らかにオーパーツだよな。説明をどうすんべ。面倒だし、素直に答えるか。
「うん?商人の鞄と言われている物だが?なにか?」
「さっきから見てますが、今まで買った物全部その中に入れているわよね。」
「あ、そう言えばそうですね。不思議ですね。」
俺とディートの会話を聞いていた、ミサがそう口を挟んできた。
2人の会話を聞く限り、この手の物はこの世界に存在していないのか?
すると、ゲームで作れる序盤の鞄も存在しない?ゲームの装備もなかったしあり得るか。
「えーと、もしかしてこれの廉価版の旅人の鞄とかも一般的でないのか?」
「なんですの、聞いたことありません。」
「私も知らない。」
もちろん、リアもパルマも知らないとのことだった。
マジか?俺の技能で、材料さえあれば、旅人の鞄ともう一つ上の行商人の鞄は技能で作れるはずだ。
ただ、ギルド制度があるから生産のための作業場を俺が利用することができない。それに、材料も買い集められないだろう。
でも、その辺どうにかして後でどこかで試して見たいな。
まぁ、その辺は後回して、一応知られたら面倒事になりそうな鞄のことを彼女らに話さないように、口止めだけはしておいた。
ゲームで金策してたとき、出来のいい武器や装備は、かなり高く売れた。だが、武器や装備は、更に能力強化が行なえたのでそれを行うと強化値も運任せなので、満足できる高性能品は修理して使う人が多かった。
しかし、収納に使う鞄は強化できないので壊れても買い替える人が多かったため、多少売値自体は、武器や装備より安くなるが買う人が多く金策に向いていたのだった。
また、装備だとゲーム内で有名な職人の物は、自慢できるためより高く売れたりとかあった。
だが、袋は消耗品なので誰のでもそれなりの値段で売れたということもあり、時間があまりない俺の中盤までの金策に大変役立ってくれたのだ。
それでもディートは、鞄のことが商人として気になるのだろう。人のいないところで、俺にいろいろ質問をしてきたが、取り合えず誤魔化すことにした。
「まぁ、あれだ。知らないなら気にしないで貰いたい。」
「そうは行きませんわ。気になりますですよ。同じような鞄から今使っている鞄を取り出しましたけど、まだ、それを持っているのでしょうか?あれは私も欲しいのですけど。」
そうなんだよな。もともと装備とか入っている鞄に、今回の物を入れると入りきらなくなりそうだったので、販売用に持っていた鞄の売れ残りを取りだし、使っていたのだった。
ゲームみたいにスロット枠が無いので、装備の下に下着も着れたし、鞄も二つ持ち出来たのだ。そんな光景を見ていたら、そりゃ欲しいよな。
あと、売れ残りは他にもいくつかあるが、おいそれと渡していいような物でないのでとりあえず我慢して貰うことにした。
「それも秘密だ。」
「その答えだと有ると言っているような物ですよ。まぁ、いいでしょう。」
「済まないな。その辺は、追々解決しよう。」
「ええ、よろしくお願いします。ところで明日向かう場所はもう決めていますのでしょうか?」
「ああ、その辺は言っていなかったが、事前にリア達と検討していた。激昂蝶と言う魔物を狙おうと思う。」
「激昂蝶ですか。」
「ああ、何かまずかったか?」
「いえ、あれは飛翔しますので、戦いにくいかと思いまして。」
「まぁ、そうだが、難しそうなら場所を変えるさ。」
俺には、そこに行く目的が別にある。リア達に確認したが、そこに剣を扱う魔物が時々現れるのが確認されているそうだ。
そいつを倒すのことも、目的であった。ゲームと同じなら、そいつが落とすレアドロップ品に用があるのだ。
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