第7話 仲間に誘おう

 ディートらと、一緒に戦っている間、その休憩中にいろいろと話を聞くことができた。

 ディートは、やはり、クライン商会の商会主の娘だそうだ。ただ三女であるため、今後、商会に席はないため、それならばと商会主である父親の援助を貰い、独り立ちしようと考えているそうだ。


 ただ、この街のギルドから商業権を買って、商いをしてはやがて父親の商会と商売でかち合い迷惑をかけるだろうという事で、行商を行い、販路を街の外で開拓して、いずれ別の街で商売を始めようと考えたとこのとだ。

 そのために街道を旅するための実力を付けるのと資金延寿尾で足りない分の金銭を稼ぐために、冒険者登録をして、技能を高めようとしてるらしい。そうすれば少人数で輸送をできるようなるので、利益を得やすくなるだろうと考えてのことだ。


 パルマさんは、番頭さんのお子さんで、小さいときから一緒に過ごすことが多かったので、ディートさんの独立の話を聞き、従者として一緒に行動をすることを決めたそうだ。

 彼女らの戦闘技術に関しては、一応幼少の頃から、嗜み程度に基礎は習っていたらしく、技能を習得したばかりで、実戦経験も少ないながら、なかなか様になっていた。


 最初は、利益が得やすい別の場所で習得をしていたが、魔物を取り合いになる状況だったので、習得には効率が悪いと考え、ここに来たらしい。

 それで、あの事故を引き起こしてしまったという事だ。


 まぁ、そんな事情で、若いながらもいろいろ考えて、行動しているようだ。まぁ、いろいろ荒削りだが、まぁ金儲けの方法としては、いい考えだろう。

 それと技能について、面白いことを教えて貰った。

 戦闘技能にしろ、魔法技能にしろ習得の書があるのは、この世界では次の中級までらしい。それ以上の技能を会得している者も、中に居るようだが、それは、まだ体系化できるほどの者が居ないとのことだ。


 ラクシュアリさんは、確かにゲームの世界が形になって来たとしか言ってなかったけど、これはちょっと中途半端な出来じゃない?

 それと冒険者が初級までしか、習得の書が手に入れられないのは、冒険者が結託して、国や貴族に反発されても跳ね返せるようにするためと、中級の習得の書をそれ程多く用意できないためとのことだ。

 まぁ、特権階級にしたら、下からの実力がある者の反抗は怖い物ね。


 しかし、上級、奥義が解放されていないのか。と言うことは、あまり強い敵は、居ないのかな?

 ディート達も、元は商人の子供、魔物の知識はあまり詳しくなく、深淵付近やダンジョンの知識はあまりないらしく、魔物の強さとかについては、わからなかった。


 3日目の狩りが終わり、ディート達もレベル1の技能の習得が終わったので、今後についてどうするか話し合うことにした。

 リア達とも食事をしようと以前話していたが、それも叶えていないのを思い出し、帰り道で話を済ませず、食事をしながら、ゆっくり今後について話し合おうと持ち掛けた。

 最初に泊まった高級宿の食事の食事でもいいかと考えたが、あそこは、ドレスコードを要求する店だったのを思い出し、今泊っている宿の食事にすることにした。

 味もそんな遜色ないし、それに個室が使えるということで、今日の朝、一応予約をしておいたのだ。


 「なぁ、食事をするって聞いていたけど、こんな高そうなところで平気なのか?あたい達、ギリーさんに借金している身だから、余裕なんてないぞ。」


 「心配するな。今日は俺のおごりだ。」


 「本当にいいの?あとで折半だと言われてもだめだからな。」


 「大丈夫なのですか?」


 「ああ、構わないさ。ディート達も遠慮しないでくれ。」


 「あら、余裕ですのね。」


 店に入ると俺達は、予約した個室に案内された。


 「リアもミサも、こう言ったところは慣れていないだろ?マナーに気を配らずに済むように、個室を用意しといたぞ。」


 「ああ、慣れていないどころか、初めてだよ。」


 「はい、個室なら周りに見られたりして緊張しないで済みます。」


 「私共も、あまり人のことは言えませんが、ギリー様も本当に駆け出しの冒険者なのですか?」


 「ああ、もちろん、俺の生い立ちは話しただろ。嘘はない。それとギリー様なんて言い方はやめてくれ、ギリーでいい。」


 ラクシュアリさんから与えられた記憶の中での生い立ちの中ではだけどな。


 「わかりました。ただ殿方を呼び捨てする間柄でもないので、ギリーさんと呼ばせて貰います。」


 「まぁ、それでいい。それとすまないが、今日はメニューも酒も任せて貰うよ。」


 「それがいいでしょう。初めての人が何を頼んでいいかわからないでしょうからね。」


 「なにからいろいろ済まないな。」


 「恐縮します。」


 そうして、苦手な物とか確認する。リア達は、あまり色々な物を食べたことがないようなので、特にないと答える。ディートも好き嫌いはないらしい。パルマだけが好き嫌いではないが、ディートの警護の為と飲み物はアルコールでない物を所望した。

 一通り注文し、食事と酒を楽しんだ後、本題に入ることにした。


 「さて、ディートさんとパルマさん、そろそろ出会って3日だ。出来れば俺達は今後も一緒にパーティーを組みたいんだがどうだ?」


 俺の問いかけに、合わせてリアとミサも頷いて、ディート達に目線を向ける。


 「いかがなさいます?お嬢様?」


 「そうですね。その前にいくつか質問よろしいでしょうか。」


 「ああ、構わない。疑問や不安は、今のうちに潰しといてくれ。」


 「では、ギリーさんは、回復士でありながら、前線に立っていますが、今後もそのつもりですと、前衛が4人に後衛が1人となって、いささかバランスが悪く思えますが?」


 「その辺は、今後どこまで冒険者としてやって行くかだが、勿論、敵が強くなれば俺は後方でサポートに回るよ。もともとはそう言うスキル構成だしな。今はサポートがあまり必要のない狩りだから、前衛に回っているだけだ。」


 「なるほどです。それと、私達の目的は知っていますよね?パーティーがずっと続くわけではありませんが、そこはご理解してますでしょうか。」


 「ああ、そのことについてだが、これはリアやミサにもまだ相談していないのだが、その商売の話に、俺も一枚かませて欲しい。」


 「ほう、と言うと?」


 「金を半分若しくはそれ以上出資する。だから、できれば、経営にも口を出せる共同代表のような形にして欲しいんだ。」


 「共同代表?つまり代表者が複数になるということですか?」


 「まぁ、そんなところだ。あまり商売のギルドには詳しくないが、ギルドから営業権を買うと営業権を持つものは1名だけだよな?」


 「はい。」


 「なら、営業権における代表は、ディートさんで構わない。ただ、経営方針の決定の際に意見を言うことが出来るようにして欲しい。それと、出資に合わせて、出資者として得られる利益を多少貰うがな。」


 「ほう、ですが、私にそれではメリットが少ないように思えますが?」


 「でも、全くないわけでないだろ?まず、必要な資金を集める期間が短くなる。損失も二人で追うことになるからリスクも減る。意思決定に複数が関わることによって判断材料が増える。」


 「なるほど、ですがそこにデメリットも存在しますわよね。出資者が複数ということは利益が相反して揉める場合がある。損失はお互いが追うということは、利益もまた分配するため利益が少なくなる。意思決定に複数関わることによってすぐに決定ができない。違いますか?」


 「違わないが。出資比率については、まぁ、譲歩してもいい、利益配分については、商会が今後拡大、運営していくための為のプール分と実際運営しているディートの報酬分を差し引いた残りを分けるという感じだから、それほど多い取り分にはならないはずだ。経営についても、何も商品の差配等まで細かく口出しする気はない。どこで商売をするかといったこと程度だと思って欲しい。」


 「わかりました。まぁ、商売をするにしてもまだ元手が足りなすぎますので、話を聞くだけではわからないことも多いですし、今後もう少し詰めていきましょう。でも、リアさんもミサさんもギリーさんが商売をすることについては、それでよろしいのですか?」


 「まぁ、そん時になれば、あたい達もどうするか決めるさ。借金のこともあるしね。」


 「ですね。私達は、今後も冒険者を続けるかもしれないですから。」


 「わかりました。ギリーさんの回復士という職業は貴重ですし、一緒にいる利点は大いにあります。パーティーの件はお受けしましょう。パルマも異論ありませんね。」


 「お嬢様の判断に従います。」


 「そうか、良かった。では、今後もよろしくな。」


 「こちらこそよろしくお願いします。皆さま。」


 「それでなのだが、今俺達の技能はあそこでの習得ほぼ入らないか全く入っていない。そこで少し遠出を考えているのだが構わないか?」


 「まぁ、ギリーさん達がそうなっているなら、私達もいずれそうなるという事です。問題ありません。」


 よし、交渉成立だ。しかし、泊りがけの狩りとなるといろいろ面倒だな。しかも女性が多い。なら聞いておくか。


 「それでだ。商売に詳しいディートさんに聞きたいのだが、イオナの街で馬車ってすぐ買えるかい?」


 「馬車ですか?新品を買うとなるとすぐは無理ですが、中古でしたら物さえあれば買えますが?商売を始めるのはまだ先ですよ?」


 俺の馬車を買うと言う言葉に、ディートは答えてくれたが、理由が思い浮かばなかったようで、そう聞いて来た。

 俺は、狩りに行くのにわざわざ歩いて遠出する。そんな面倒を避けたいので狩りのために買うことを正直に話す。


 「狩りの移動用に買おうと思ってな。」


 「はぁ、すみませんが、馬車がいくらくらいするかご存じですか?」


 「うん?知らないが、金貨100枚もあれば買えるだろ。多分。」


 「ええ、中古の箱馬車を買うのでしたらそれ位でしょうが、普通の中古の幌馬車でしたら馬含めて金貨50枚もあれば十分いい物が買えます。」


 「なら、問題ないな。明日狩りを休みにして、見に行きたい。それと遠出の為の買い出しもある。みんな、明日3の鐘(午前10時)ギルド前に集合して貰えるか?」


 「はぁ、わかりました。」


 俺の断定口調に諦めたのか、ディートは2度目のため息をつき了承をした。


 「いいけど、本気で馬車なんて買うのか?」


 「そうですよ。もったいない。」


 リア達は、高い買い物に納得できないのか、そう異を唱えてきた。


 「気にするな。なるべく、快適に過ごしたいんだ。」 


 だが、俺は、快適さを優先すべくそう言って押し切った。

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