第5話 2日目の討伐をしよう


 翌朝、俺は少し早めに南門に向かった。

 断られたら、気まずいよなぁ。どうしょう。というか、待ち合わせに来ても貰えないかも知れないよな。

 提案するにしてももっと打ち解けてからが良かったかなぁ。でもそれだと、習得の時間がもったいないし、などと考えて南門の前で待つ。

 彼女らも、2の鐘がなる少し前に門のところにやって来た。よかった来てくれたよ。

 なんか告白の返事を待つみたいだ。緊張するな。


 「や、やぁ、おはよう。」


 俺はなるべく自然に挨拶をする。

 

 「おはよう。待たせたか?」


 「おはようございます。ギリーさん。」


 「いや、今来たところだよ。」


 うん、なんかデートみたいな受け答えだな。おじさんになっても独身だったこともあり、俺はこう言うシチュエーションに慣れていないし。というか、ただのパーティー加入のお誘いの返事を聞くだけだ。緊張しすぎるな俺、平常心。平常心。


 「そう、良かった。」


 「うん、待たせちゃったかと思った。」


 「で、早速で悪いが返事を聞かせて貰えるかな?」


 やっぱ、この緊張感に耐えられない。さっさと返事を聞いて楽になろう。


 「うん、あれから二人で話し合ったんだけど、パーティーの話、受けさせてもらうわよ。」


 「ええ、私達が足を引っ張る事もあるかもだけどよろしくお願いします。」


 良かった。これで気まずい雰囲気の中、今日一日狩りをしないで済む。


 「そうか。ありがとう。よろしく。」


 「うん、よろしくね。」


 「頑張ります。」


 そうして俺達はパーティーを正式に組むこととなった。

 彼女らは、銀貨2枚程すでに貯めていたらしいが、あとでまとめて返してくれればいいと金貨1枚ををそれぞれに貸して、リアは剣術の初級の武芸書を、ミサは短剣術の初級武芸書を手に入れた。

 その後、ミサに魔法についても聞くと、まだ魔術書も手に入れていないとのことだったので、魔術師組合で、初級の魔術書も手に入れた。ちなみに、こちらは授業料と言う名の目録料金が金貨3枚ととってもお高めだった。


 まぁ、ミサは魔術書は高いからと遠慮してたが、パーティーが強くなるための先行投資だと言って、多少無理やりだったが、習得して貰った。

 その後、一応お互いの安心と言うか信用と言うかのために形ばかりの借用書を作り、お互いで所持した。

 本当の所、こんな金持ち逃げされても痛くもないので、ここまでする必要は俺にはないのだが、対等な関係を維持するためにも、必要と考え用意した。

 でも、こっちの世界の借用書の様式なんてわからないので、昨日、俺が適当に向こうの知識で作成した物だ。

 そんな変わらないだろうと2人に渡したが、何も言われなかったので問題なかったのだろう。


 そして、狩りの前に少し時間を取ってしまったが、3人で再び昨日の狩場へと向かう。

 道すがら、お互いを知るために色々と話しながら進んだ。

 彼女らは、女性冒険者数名と宿屋の大部屋を借りて生活しているそうだ。宿代は一人大銅貨1枚。食事は朝夕とも大体屋台で済まし、時々大衆酒場で食事をしているらしい。それだと宿代と食費で大銅貨2枚くらいが1日の生活費だな。

 それと昨日は俺が治療をしていたが、普段は薬を利用するので、それで大体大銅貨2、3枚が消えるらしい。それに装備の補修や買い替えのお金、街の人頭税の為の貯金もある。武芸の初級の書の為の貯金は、1日大銅貨1枚貯めれればいい方なのだそうだ。

 すると普段は大銅貨5、6枚前後の稼ぎになるのかな。そう考えると大変だな。

 彼女らは、この近くの村の娘らしい。村に残るには、成人する15歳までに村の者と添い遂げなければならず。それができない女性は、村の女性は村を出て自立しなければならないそうだ。

 彼女らの周りに丁度年頃の男性がいなかったこともあり、奉公に出てで苦労するより、ミサが魔法の才能があったので、彼女らは、一攫千金も狙える冒険者になると決めたらしい。

 たくましいことで。

 彼女らは2人とも15歳ということだ。うん、若いね。いや、自立するには若すぎるね。

 俺は、彼女らの年齢を聞いて、自分の今の年齢も忘れ、そんな感想を抱いていた。


 そんな苦労話を聞いた後じゃ、俺は、流石に今の宿のことはさすがに話せない。今日3日目でチェックアウトになったので、少しグレードを落とした宿を探すことにする予定だったため、今の宿がちょっと不都合があって、今日宿を取り直すと話した。

 ベットも風呂も食事もいいが、客層が上品すぎるので、換えることにしたのだった。まぁ、嘘はついてないからいいよね。


 最初は彼女らも、宿代こっち持ちで、そこに誘おうと思ったが、女性同士で大部屋を借りているとの事なので、急に彼女らが抜けるのも大変だろうと考え、もう少し一緒にやって、誘っても平気そうなら声を掛けることにした。

 同じパーティーで宿が別だとなにかと不便だしな。

 俺の方も、ラクシュアリさんがくれた記憶を基に話した。ただ、両親が昔の冒険者仲間に殺されたとかいろいろ重たい過去があるので、その辺は、語らずに誤魔化した。

 そんな設定要らないから、それに俺が作ったのはMMORPGだから、後でこんな過去に絡んだイベントが起こるとかないよね。

 そんな話しながら、歩いていると、昨日と同じ狩場に着いた。昨日と同じく他の冒険者は居ない。


 「なぁ、なんでここは冒険者が少ないんだ?」


 「まったく、知らずにここに来てたの?」


 「ああ、冒険者ギルドにはイオナの街の近場の狩場を聞いただけだしな。」


 「ええと、ここは、敵が強いわりに美味しくない狩場だからですね。」


 「他はもっと儲かるのか?」


 「ええ、金額的にはどこも大銅貨5、6枚の稼ぎですが、他は敵の取り合いもあって、半分くらいしか戦闘回数がなくてそれだけ稼げるので、薬の消費とか考えるとお得なのです。」


 「それなら、戦闘回数が多いので習得にはいいはずだが、そう言った人もいないな?」


 「習得を目指す人は、泊りがけでもう少し遠くの狩場に行く人が多いのです。丈夫なだけで弱い敵がいるらしいです。」


 「なら、なぜ君達はここに?」


 「ふん、強いのと戦わないと自分の実力が上がらないでしょ。」


 「まぁ、弱いのとやるよりは、いいかもだが、リスクとメリットを考えて戦うべきでは?今まで2人でここでやってたのか?」


 「ええ、そうよ。でも、2体の敵だけを釣って戦っていたし、ちゃんと考えているぞ。」


 「なるほど、それなら問題ないか。分かった。では、始めよう。」


 武器の消耗とか考えるとあまり良いとも思えなかったが、あえてこれ以上触れずに狩りを始めることとした。




 そうして、3戦ほどした後、俺の斧の扱いが軽くなった気がした。

 情報画面を確認してみると斧術のレベル1の表示の次画面を見ると、『斧素養・序』の習得が終わっていた。これで、斧で攻撃した際に、ダメージがわずかに上がる。


 その後も戦闘を続け、最終的には今日はもう1つ技能の習得が出来た。『強撃』という技能で、このスキル使うと体力を3消費して、確かダメージが1.5倍になるんだっけな。


 初級の書で習得できるのはLv.3の技能までで、1レベル当たり最高で4つの技能があるから、後10技能、レベルが上がるごとに習得に時間が掛かるはずだから、レベル3を終わらせるのに、あと1か月以上は楽にかかりそうだな。先は長いな。


 リアさんとミサさんも武器の扱いがスムーズになったらしく、最初の技能は習得したようだ。

 あ、そうだ。ミサさんも、魔法を習得させないとだよな。


 「ミサさん。帰りは『光源(ライト)』の魔法を唱えながら帰ってくれないか。」


 「どうしてです?」


 「魔法を使わないと習熟度が上がらず、新しい魔法が使えないからだ。本当は行きも半分くらい使って魔法を唱え、帰りは全部の行程で魔法を唱え、本当は寝る時も魔法を唱えて魔力切れで寝てしまうのが、習熟を上げるには一番いいんだが、大部屋で寝泊まりしているのでは、寝るときに『光源(ライト)』も使えないだろうから、狩場の往復の時だけでもやるからな。」


 「わかりました。でも行きはなぜ行程の半分なのですか?」


 「ここまで移動に約2時間、『光源(ライト)』の魔法は魔力量5必要で、10分で切れるので、全行程掛けなおすと魔力60消費することになる。魔術師の能力が目覚めるには最低知力、この場合魔力だが80は必要なので、全行程使っても魔法を使い続けても、魔力は、余るけど、戦闘前に沢山使うと、疲労も残こるし、集中力も散漫になる。だから、行きは半分くらいの使用に留めると言う感じだな。」


 「なるほど、戦闘に影響が出ないようにするのですね。」


 「ええ、それと戦闘等に費やす時間も4時間程度だ、行きに魔力60使つかっても、帰りまでにそこまで回復しない、だから行きに消費する利点が無いってのもある。」


 「そうなのですね。ギリーさんは、いろいろ詳しいのですね。ためになります。」


 「まぁ、両親も冒険者だったからな。でも、そう言ってくれると素直にうれしいねぇ。」


 「それじゃぁ、帰るよ。ミサは魔法頑張って覚えてね。」


 「はい、頑張ります。」


 さて、俺も魔法技能を上げたいけど、今のままじゃ中位のLV.6までしか習得できないんだよな。それでも技能レベルは上げられるだけ、上げといたほうがいいだろう。付与系の魔法も戦闘中に使って戦闘中もレベル上げしよう。

 回復魔法は、大体一日に使うのは、6、7回で済むから、もっと魔力を使わないともったいないしね。

 しかし、ゲームと違って、これ習得させるの気長にやらないとだから結構大変だぞ。ゲームと違って一日中を体験しねぇといけないし、それにゲームとなによりちがうのは死=ゲームオーバーだ。

 流石にゲームのように生き返れるようなことはない。だとすると回復魔法のレベル9にある蘇生の魔法は欠番にでもなってるのかな?蘇生魔法はさすがにあるとまずいよね?


 でも、やぱり、そう考えるとカンストしたキャラのままで放り出して欲しかったよな。でも、そうすると面白みも何もないか。うーん。

 それにラクシュアリさんも、楽しめと言ってたし、ゲームのデバック要員という訳でもないから、無敵だったり、カンストしてたりはまずいか。

 そんな感じで、今後の成長戦略等いろいろ考えていたら、いつの間にか街の門に辿り着いた。


 ミサの魔法で周囲が明るく照らされるほど、暗くなっていた思ったより、戦闘に時間を喰っていたのか?

 でも、急がないと宿を押さえて居なかったんだ。遅くなって空きがないとかになってたら、まずいな。

 俺は、今日の宿を取るため、ギルドでの清算は彼女たちに任せて、明日の待ち合わせの約束だけして、門で別れた。



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本日 18:00に二回目の投稿をします。

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