第4話 魔物討伐をしよう
宿の食事は、相変わらずうまい。街の庶民向けの食事は、安く量を食べるのを主眼にしているのか、薄い塩味ではっきり言ってまずい。労働者用なんだから塩分どっさりにしろよ。
まぁ、この街だけでないのかもしれないが、何をするにも安くもない税金をとられちゃ、財布のひもも硬くなるっていうもんだ。
それと、食事の時は、ローブを着なくてはまずいらしいので、我慢してきている。
シャツ姿で入ろうとしたら、ドレスコードに引っかかると言われたので、着ていても劣化しない、つまり汚れないローブを羽織ることにした。もちろん素っ裸でなく、シャツの上からだよ。
まぁ、ローブだけならそこまでおかしな恰好じゃないからな。
朝食も宿屋で済ませ、兵士の鍛錬所に向かう。
そして、鍛錬所へ向かう。そこで金貨を支払い、斧術の初級武芸書を貰う。
鍛錬所で熟練者と手合わせをできるなら、スキル習得の為通ってもいいなと思ってたら、練習生は案山子に撃ち込むだけと聞かされ、習熟度もたいして稼げそうにないので、素直に外に魔物を倒しに行くことにした。
魔物の生息場所は、昨日冒険者ギルドで聞いていたので問題なし。魔物もこの街近くの森の奥地に行かない限り、常設討伐の魔物だけらしいので、改めてクエスト依頼を受ける必要もなし。
と言う訳で、そのまま街の外に向かった。冒険者ギルドの標識を門番の兵士に見せて、外に出ると、一番近い狩場である、森の入口に向かった。
森の入口付近では、2人から4人くらいの集団が数組、魔物を探すように動き回っている。
街に近い場所だけあって、結構いるな。これじゃ、満足に狩りは出来そうもないか。
俺はそう思い、別の場所へ向かった。どうせなら、人が少ない場所がいいので、今度は街から一番遠い場所に向かった。
遠い場所と言っても、歩いて2時間もかからない距離だ。そこに着くと、冒険者の姿話見えず、小さな小鬼のような化け物が2、3体で1組になってうろついていた。
あいつらは何しているんだ?暫く眺めていたが、特にこちらに襲い掛かってくるわけでもなく、彷徨っている。
いつまでも見てても仕方がない。そう思って武器を取って向かって行こうとした時、突然後ろから声が掛かった。
「あ、あの、よろしければ、一緒に狩りませんか?」
お、おう、全く気付かなかったぜ。敵意があるやつだったら、俺狩られていたよな。
声の方向を見ると、15歳くらいの女性冒険者が2人立っていた。おー、出会い系イベントキター!
んー、でも俺の体は若いが、心は50過ぎのおっさんだからだろうか、結構可愛いよ二人ともでも、余りときめかない。
あ、心の問題と言うより、嗜好の問題なのか?
俺ぐらいのおっさんが、未成年手出してニュースになるのも見たし……。
あ、このまま黙ってるのもまずいな。よし、一人で複数体は流石にきついからな、申し出を受けておこう。
「やぁ、俺はギリーだ。昨日冒険者に成ったばかりだが、回復技能はある程度使える。俺でよければ、よろしく頼む。」
「ありがとな。あたいはリア。剣士を目指している。よろしく。」
リアと名乗った女性は闊達そうな雰囲気で、青髪が印象的な女性だ。
「私は、ミサです。魔法師を目指していますが、魔法はまだ『光源(ライト)』の魔法しか使えまないので武器での戦闘になります。よろしくです。」
俺に最初に声を掛けて来たミサと言う女性は、陽の光に映える赤髪が目を引くが、落ち着いた雰囲気を醸し出している。
うん?目指している?完全な初心者さんか?それも、魔法使える者なら誰でも使える『光源(ライト)』しか使えない?
彼女らの口ぶりに、いろいろ疑問があったが、出会ったばかりなのでだ、それ押し殺す。
「ところで、あいつらなんであの辺を彷徨ってるか知っているか?」
お互い自己紹介を済ませると、俺は疑問を訪ねてみた。
「はい?」
リアは、なんでそんなこと聞くんだと言うような顔で、おれの疑問に疑問を発した。
「え、あ、なんでも自分達の生息域を広げるために自分達に合った魔素を振りまいているそうです。魔素が一定の濃度になるとあの奥の岩場のようになってしまうそうです。」
ミサは、しどろもどろながらも、疑問に答えてくれた。
「だから、冒険者である俺達は、それを阻止するために連中を狩る訳か?」
俺は、ミサの答えに対し、更に質問をしてみた。
「そうなのでしょうか?そこまではわかりません。」
ミサも、それ以上のことは分からないようで、そう答えるのみだった。
「あんた、変な事気にしてるのね。さっさと狩りましょう。時間は貴重よ。」
リアは俺の質問にこれ以上付き合っていられないと思ったのか、そう言って、魔物の方に歩みを進めた。
「ああ、そうだったな。行くとしよう。」
俺も、ここには習熟度を上げるために来ていたのを思い出し、そう返事をして歩みを合わせた。
「私が多分一番剣の腕が上の筈だから、中央に構えるね。
3匹の時は、それぞれ1体受け持って、私が1体倒したら、どちらか苦戦している方に加勢する。
それで2匹の時は、私とミサで1体、ギリーさんが1体という感じで行きましょう。
それと今日の成果はギルドで換金したお金を3等分でどうかしら?」
「ああ、問題ない。」
なるべく魔物を一人で多く受け持てれば、習熟度が稼げていいし、金については、別に困まっていないし、常識的ラインなのでそう了承した。
「では、試しにまず2体の小鬼を釣って来るわね。」
そう言うと、リアは2体の小鬼に近づく、すると、徘徊していた小鬼がリア目掛けて、駆けて来た。
リアは、付かず離れずで、こちらに逃げ戻り、俺達は、小鬼と戦闘になる。この釣って戦闘って、本当にゲームみたいだな。
俺は、慣れない動きで、斧を振り回し、小鬼に叩き込もうとする。小鬼は、ただ振り回す俺の斧の動きを読んでいるように躱すと、飛び込んでくる。
ふん。
飛び込んできた小鬼を咄嗟の動きで蹴とばす。その動きを読んでいなかった小鬼は、腹に足蹴りを諸に喰らい転がるように倒れ込む。
それを俺は追いかけ、両手で斧を持つと上段から振りかぶり、小鬼に斧を叩き込む。
すると小鬼が叫び声を上げるが、俺は血を浴びることもなく、傷口から光のエフェクトを発して、小鬼は消えて行った。
そして、その後には小さな魔石と牙が残っていた。
うん、聞いていた通り、魔物を倒すと、体は魔素に還元されて消え、魔石と運が良ければ実体化しやすい部分の部位が残る。
これは、敵を倒しても精神的負担が無くていいな。グロイ血肉を見ないでいいと言うのは気分的に殺したという実感も少ないからいいな。
俺が敵を倒し、リア達を見やると、丁度向こうも、敵を倒し終えたところで、魔物の体が魔素に還元されていた。
「やるわね。次は3体を試すわね。」
そうやって、戦闘を俺達は繰り返した。途中何度か俺もリア達も小鬼の爪により傷を負ったが、その都度俺が『回復(ヒール)』を行なったため、傷の治療時間や薬品代の節約になると喜ばれた。俺もスキルを行使出来て、熟練度が上がるからいい事尽くめだ。
1時間戦闘をして20分休みを3回位繰り返した頃、小鬼たちの数も減って来たし、俺も疲れたし、街に戻るにもいい時間だしという事で、今日は終了した。
「うん、中々の収穫ね。」
リアは、倒した小鬼の魔石と牙を見ながらそう言った。
「そうか、よかったな。で、技能の習熟はどうだった?」
「え?私達、技能の取得のためにお金を貯めているところよ。」
なんと、彼女らは、まだ技能を習得していないようだ。考えてみれば当然か、この若さで、金貨一枚を簡単に払えるわけないか。
なら、現地人のサポートも欲しいし、交渉してみるか。それに金を貯めるために狩りをするなんて時間の無駄だしな。
「そうだったのか。すまん。なら、俺と改めて正式にパーティーを組まないか?そうすれば、武芸の書とかの習得に必要な書のお金は貸してやる。もちろん無利子でいい。」
「無利子って、なんだ?」
リアは、俺の言った言葉の意味がわからないようで、そう聞いて来た。
うん、利子を知らないのか?普通に生活していれば聞かない言葉なのか?そう思いつつも、こっちがお願いしている立場なので、説明することにした。
「お金を借りると借りたお金の他、借りた期間に応じて余計にお金を取られるだろ?」
「そうね。」
「それが無いということだ。それが無いから急いでお金を返すこともない。どうだ?」
「それってあなたにいいことが無いわよね?怪しくない?」
「いや、利点はある。金を貸している間は、少なくてもパーティーを組んでいられるだろ。一人だとここまで危なげなく戦闘を続けることができないからな。それに仲間も強い方が安心して戦えるだろ。」
「どうする?ミサ?」
俺の説明を聞いて、リアが、ミサにどうするか尋ねた。
「そうね。少し考えさせて貰っていいですか?」
ミサは、少し思案したが、即答はせず、そう言って来た。
まぁ、金銭の絡む話だ、即答は出来ないよな。そう考え了承する返事をすることにした。
「もちろんだとも、他にも不明な点があれば聞いて貰っていい。」
「ありがとうございます。では、明日ご返事します。明日2の鐘(午前8時)の鳴る頃に南門で待ち合わせしましょう。その時ご返事させて貰います。」
その後、2人はどうするか話し合いながら町へと戻った。
しかし、俺に話が筒抜けでいいのだろうか?
そうして、イオナの街に戻り、冒険者ギルドで今日の成果を換金すると今日の稼ぎは、銀貨2枚と大銅貨6枚になった。
うん、一人当たり約大銅貨8枚と銅貨8枚だ。これが多いか少ないか分からないが、彼女らの表情を見ると多分多いのだろうな。ここから宿代、食費、装備や薬代とかいろいろ経費が差し引かれる。金貨1枚貯めるのにどれぐらいかかるのか。
やはり冒険者も大変なのだな。
この後、食事にも誘われたのだが、明日の為に話し合う時間も必要だろうからと、俺は、大銅貨8枚と銅貨8枚を貰って、別れることにした。
まぁ、俺だったら、初めて会った素性も分からない男から、武芸の書とか学ぶための金を貸すから一緒にパーティーを組んでよと言われたら、そりゃすごく悩むよなぁ。
怪しさ200%だよなぁ。さて、明日はどうなるか?
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