第2話 街へ行こう
さて、どうしたものか。
昔のゲームだし、MMORPGと言っても、それほどマップが広くなかったので、マップが無くても問題がなかった。
しかし、ここは現実世界、間違った方向に進んでも行き止まりという物がない。
慎重に進まないと、何時まで経っても、人に会えない。
逆に、やたら強い魔物がいる場所に辿り着く可能性だってある。
しかも情報画面には、地図機能もなかった。
いくら自由にしていいとは言われたが、選択を間違ったら、初手で積むとかおかしくね?
くれた記憶に、ここまでの歩いて来た道のりとかが無いので、どうすればいいか、マジわかんないのですけど。
おい、ラクシュアリさん、いろいろ便宜図ってくれるって、話なんじゃねぇの?
まぁいいや、男は度胸だ行くぜ。
そう思って、とりあえず街道見つけようと適当に進もうとしたところ、俺の探索スキルに何か引っかかった。
人か魔物かわかんねぇけど、反応があるな。全部で4つ。
この世界の女の子との出会い系イベントならいいんだけどな。
そう思いながら、反応がある方向に進む。
反応は、どうやら人らしいことが分かった。
ひとまず、魔物に襲われて、野垂れ死ぬは、回避できそうかな?
こちらに気づいていないようなので、怪しまれないように手を上げて大声を出して、近づく。
「おーい。」
向こうもこちらに気づいたようで、多少警戒しながらも、俺の近づくのを待ってくれている。
「そこで止まれ。」
だが、一定の距離まで近づくとそう声が掛かった。
言葉は通じるようだな。よかった。
でも、あんまり歓迎されて様子だな。
「わかった。」
俺は、そう返事して、そこで立ち止まる。
よく見ると男が4人だ。なんだ、異世界特有の出会い系イベントじゃないのか。残念。
「俺達は、イオナの街の冒険者パーティーだ。お前は何の用だ?」
「俺は、ギリー。旅の者だ。ちょっと薬草採集のため、街道を逸れたら戻れなくなって、彷徨っていた。」
「間抜けな奴だな。まぁいい。街道はあっちだ。さっさと行け。」
俺の言葉を聞いて、警戒を緩めたのか、笑顔でそう言って、男達は、同じ方向を示した。
同じ方向を皆で示しているんだ、嘘じゃないだろう。これで、嘘だったら、本当にいけ好かない奴らだ。
「ありがとう。助かった。」
そう言って、俺は言われた方向に向かった。
男だけ4人とか、もし襲われたら怖いからな。さっさと遠ざかりましょう。
能力で勝っているかもしれないけど、あんなマッチョ4人も前にしてたら、ビビっちまうって。
そして、言われたとおり進むと、無事に街道に辿り着くことができた。
うん、中々、いいあんちゃん達だったな。
だが、まだ問題があった。
どっちに進めば正解なんだ?
あいつらに聞いても良かったが、そうすると街道を逸れて迷ったという設定が怪しまれる可能性があったからな。
さすがに街道を跨いで、街道がどこにあるか彷徨ったりはしないだろうから、どっちに進めばいいかは聞けないよな。うん。
それに、どっちに進んでも近いか遠いかでいずれ街か村に着くだろう。
ということで、右に行こう。
歩きながら、暇なので、貰った記憶を確認しながら進む。あんまり、役立たない記憶だな。
そんなことを思いながら、歩き続ける。
あ、記憶に下着とかもあるじゃねぇか。
気を利かして、そう言った物は用意しとけよ。ラクシュアリさんよ。
なんなら、俺に管理者権限をよこしてくれてもいいぞ。
さらに、しばらく歩く。
見渡す限りの草原だったが、日が天頂に差し掛かった頃、周りが穀倉地帯に変わった。
そろそろ、街か村が見えて来るかな?
さらに進むと、城壁に囲まれた街が見えてくる。おー、街だよ。暗くなる前に辿り着けてよかった。
でも、本当にこの格好で大丈夫か?
さっきの奴らは、遠目に見てただけだから、なんも言われなかったけども。
格好がおかしいからって、捕まったりしないよな?
だけど、まともな装備にすると能力が落ちて、何かあった時に戦えなくなるからな。困ったぞ。
えーい、仕方がない。覚悟を決めて進むぞ。
門の所では、簡単な荷物チェックと、身分照会、通行税の徴収が行われていた。
身分証なんてないぞ?どうしよ?
そんなことを考えながら、待っていると、俺の順番が来た。
「イオナの街にようこそ。で、どこから来た。」
うん、イオナの街か、そう言えばさっきであった冒険者もここから来たと言っていたな。
「クーリシュラから来ました。」
そこがこいつの生まれ故郷らしい。地名や国名等は流石にゲームのまんまではないので、先程の知識が生きた。
「目的は?」
「ここで一旗揚げに?」
なんて答えりゃいいんだ。旅行になんて言っても多分通じないだろうしな。適当でいいか。
あ、ちょっと偉そうな口ぶりだったな。兵士さん相手だからもうちょっと言い方を考えるべきたな。
「なんで、疑問形なんだ。」
「あ。なんかちょっとカッコつけちゃったかなと思って。」
「まぁ、いい。では、通行税支払いと入場の記帳をあそこでしろ。」
「へい。」
そう答えて、記帳台の方向に向かう。
そこの役人が義務的に話しかけて来る。
「通行税は、銅貨3枚。あとここに記帳を、字が書けない場合は代筆する。その場合追加で銅貨2枚だ。」
「はい、通行税。字は書けるので大丈夫です。」
そう言って、通行税を渡し、記帳を済ませる。
すると記帳の際に振ってあった番号の書かれた木片を渡される。
「3日間、それがあれば街中で自由にできる。ただし、紛失したり、3日過ぎて街に滞在したりする場合は、ここか、政庁舎で所定の手続きをしろ。怠れば罰金で銀貨3枚か、それを支払えなければ相当分の役務をすることになるぞ。以上だ。行け。」
うん、厳しいね。ゲームじゃここまでの設定はなかったしね。
結局、この格好でも怪しまれずに無事に城門をくぐる事が出来た。
この格好に、突っ込まれもしなかったけど、まさかこんな変な恰好の奴が街に沢山いたりしないよな?
こりゃ、いろいろ聞かないと、生活するのも大変そうだ。
では、まずは、何はなくても宿を確保しましょうか。
俺は、店でパンを買って、ついでに多少高くてもおすすめの宿屋の場所も聞き出す。
パンは、大きいがとても堅そうだ。おかしいな、ゲームだと食生活豊かな設定になってたのに、高くはないがこれ囓っても食い千切れそうにないな。どうやって食べよう。
そんなことを考えながら、パンを鞄にしまい、場所を聞いた宿屋に向かった。
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