世界の管理者が、俺が作ったゲームをパクって世界を作ったので、死んだ俺はそこに転生させて貰い、自由に楽しむ。

日比野 麻琴

第1話 ゲームの設定が活かされた世界へ行こう

 ん?ここは?

 目覚めた俺は、真っ白な空間に横たわっていた。

 ここは、どこだ?


 「あら、お目覚めのようですね。」


 透き通った、落ち着いた女性の声が聞こえた。

 声のする方を見ると、なぜか顔が見えない女性が座っていた。

 別に被り物をしているとか、そんな訳ではないのだが、顔を覗くことができない。顔の部分だけ、真っ白な背景に溶け込んでいるような感じなのだ。

 俺が不思議そうに女性を凝視していると、やがてそれに気付いたのか、再び俺に語り掛けてきた。


 「失礼、私の顔が見えないようで不審がらせてしまい申し訳ありません。」


 俺も、そう言われまじまじと見続けていたことに気付き、こちらも謝る。


 「こちらこそ、返事もしないで、すみません。いったいここはどこでしょうか?」


 「そうですね。ここは、貴方達の認識だと、天界というのが一番近いですかね。」


 なに言ってんだ、こいつ?やばい宗教の勧誘か?


 「そういうのは、生憎と興味ないので、失礼したいのですが、出口はどこでしょう?」


 「いえ、宗教の勧誘とは違います。あら、でも、勧誘には違いないかしら?」


 「あ、マルチ商法も怪しげな金融商品も興味ありませんよ?とにかく返してください、でないと拉致監禁で警察呼びますよ?」


 そう言って、携帯の入っている胸のポケットに手を掛けようとする。

 あれ、俺、素っ裸だよ。なにこいつ、本当にやばい人なの?


 「私は、やばくありませんよ。少し落ち着いて貰えます?順を追って説明させていただきます。」


 あれ、こいつ、さっきから、俺の心読んでない?ん、ん?偶然か?

 まぁ、いいや。取り合えず現状把握の為、話は聞こう。

 どう行動すればいいか決めるのは、それからだ。


 「わかった。説明を頼む。」


 「まずは、私は、時空管理者の一人、ラクシュアリと言います。」


 「はぁ。」


 「わかりやすく言うと、神様のようなものと思ってください。」


 「あー、それで、先程天界のようなところと。」


 「そういう事です。で、貴方は、死んでしまったのです。」


 「だから、ここにいると?」


 うーむ。そう言って、少し思い出してみる。

 あー、確か、うん、恥ずかしながら、あれで死んじゃったのか。


 「思い出したようですね。このまま、魂を浄化してしまっても良かったのですが、もう何度目かの世界創造に行き詰ってた私は、たまたまこの世界の下界を覗いた時、貴方が以前作ったゲームを見まして、そのアイデアを拝借して世界を作ったので、よければ、その世界を堪能して貰えればと呼び止めたのです。」


 こいつ、俺のアイデアをパクったという事か。でもまぁ、ゲームと世界創造、ジャンル違いだし、大目に見よう。

 でも、世界ってそんな簡単に構築できねぇだろ。そう思い、疑問をぶつけた。


 「俺がゲームのプロデュースしたのって、確かに大分前だけど、それでもそんなすぐに世界なんて作れないでしょ?」


 「ええ、でも私は管理者なので、時空を行き来できるのですよ。」


 その後、詳しく話を聞くと、その世界がやっとゲームのような技術や魔法体系が形になって来たので、それを体験して欲しいとのことだ。

 もちろん拒否しても構わないが、拒否すると俺の魂は浄化されて、無へと還元されてしまうらしい。

 なら、昔作ったゲームに似た世界、魔物が徘徊し、魔法がある世界で、生きるのも悪くない。というか、やるべきでしょ。


 でも、そんな物騒な世界観で世界を構築するなんて、この管理者(ひと)、精神的にやっぱやべぇんじゃね。

 結局、その提案を俺は飲み、俺がそのゲームで一般ユーザーに紛れて遊んでいたキャラの能力をある程度引き継ぐ形で、その世界に送ってくれるという事で話はまとまった。

 俺の体は既にないし、向こうで一から成長していくのも面倒くさい。

 ならば、キャラデータを使えば、その辺りは、省略できるしね。


 ただ、俺が、そのゲーム自体もう20年も前にやったきりなので、大分忘れているのと、その世界のことなどわからないこともある。

 その辺は、ラクシュアリさんが何とかしてくれるそうだ。

 それと、ゲームと一緒で、深淵と言う物に世界が浸食されているが、その辺にはかかわらないで欲しいと言われた。

 まぁ、その解決方法をゲームで考えたのは俺だし、その俺が解決しちゃ確かにまずいよな。

 もっとも、MMORPGなので、深淵の中に入ってボスを倒すと、個別エンディングが見えるだけで、クリアしても深淵はゲーム的に消えてないんだけどね。

 俺は、その世界で、魔物を倒して暴れ廻ってもいいし、知識を生かして金儲けに走ってもいい、とにかく自由に楽しんでくださいとのことだ。

 



 俺が、次に意識を取り戻すと、平原に居た。


 「ここはどこだろう?」


 街中におろしてくれなかったのかよ。

 参ったな。

 困っていると、今までのギリーの記憶が頭の中に流れて来た。

 ちょっと、急に記憶を入れないで貰いたいな、ラクシュアリさん。

 そんな文句を言っても、記憶はどんどん入り込んでいる。

 んー。中々凄い生い立ちだねぇ。ってか、そんな重い生い立ち要らねーよ。

 それよっか、もっと役立つ情報をくれや。


 俺の作ったゲーム、昔のゲームだから、オープンワールドって訳でもなかったから、エリア地図を見たりは出来たが、自分の位置が分かるマッピング魔法とかなかったんだよな。

 とりあえず、俺の能力の確認をしよう。

 渡された記憶から、そんなことを考えながら、情報画面を思い浮かべる。

 よし、情報画面がみれるな。


 でも、これゲームだから良かったけど、ここは現実だろ。能力値が低かったら、やりきれないんじゃないか?ガチャ外したじゃ、すまんだろこれ?

 まぁ、能力値を確認しておくか。

 

 名前:ギリー  性別:男性 年齢:18歳 

 所属:無所属

 武器スキル:杖術 Lv.5

 魔法スキル:回復魔法 Lv.4

 特殊スキル:調理 Lv.3、手芸Lv.3、採集 Lv.2、探索 Lv.2

 能力

   体力: 82

   知力:105

   器用: 95

   敏捷: 75

   魅力: 93

 装備

   頭  : 賢者の頭巾(体力-18)

   体  : 賢者のローブ(体力-26)

   武器右: 聖者の錫杖(知力-15、体力-25)

   武器左:

   首  : 

   足  : 旅人の靴(敏捷+15)

   指輪右: 知恵の指輪(知力+5)

   指輪左: 炎の指輪 (火魔法 『火球弾』)

   特殊 : 商人の鞄(容量220 重量軽減100%) 


 なんじゃこりゃ、俺の能力値低すぎ。初期のキャラデータは、20から100の間でランダムに振り分けられ、後は行動により上昇して行くと言う仕組みだ。

 それと能力上限は、昔のゲームなので8ビット符号を用いていたため、255となっていた。

 ただ、魅力だけは、行動によって上下するという仕様になってたけど。

 それと初期能力値によって上限値も5倍までと決まっていたため。プレイヤーは魅力値以外51以上をみんな目指して作成していたな。


 なので、要望で初期データの最低値を上げろと要望が結構出てたっけな。

 懐かしいな、うん。


 俺も、半日以上頑張って、かなり良い数値のキャラにしたんだったよな。リセマラ頑張ったよな。思い出すなぁ。

 でも、これ初期に近い能力だぞ。体力、知力は255でカンストしてただろうが、このキャラ。


 あと、体力とかは今回造られた体のデータだから文句ないよ。知力って、俺の知識や経験は反映されてんのか?ゲーム的に知力が高いけど、実際はしょぼいとかあるのかな。

 そんな疑問も持ったが、自分の知力だけが反映されてるとこんな高い分けなさそうだなと思い直し、あまり考えないことにした。


 あとは、鞄の中身か。

 お金は、だいたい金貨で50万枚以上、十分すぎるほどあるな。管理者も使える貨幣になっていると言ってたし、これで、1カ月も生活できないとか言われたらどんなインフレ世界だって、話だ。

 でも、この今居る場所にある国の規模はわからないけど、本来流通予定にない金貨が50万枚、これが一挙に市場に流れ出たら、経済がヤバイよな。

 あまり無駄遣いは避けよう。


 さて、肝心の鞄の中の所持品だが、食料は、かなりの種類のほぼ上限の999まで入っている。薬も上位薬だけだが同じく上限まである。十分にそろっているな。

 予備の武具もある。修理材もある。売れ残りの鞄や中途半端な材料がもいくつかある。

 俺の作ったゲームは、装備等もプレイヤーが作れるので耐久値が設定されている。また、初期装備とかもある程度売れるように、能力値に応じて装備できるものが制限されるように作られていた。


 ただ高級装備も耐久値が減って使い物にならなくなると、あまり高く売れないとか弊害が出るので、能力によって高い修理費を払う事で買い換えるよりお得に改修できるようになっていた。

 正直、これは生産者の為の仕様というより、廃人様救済の仕様だったけどな。

 しかし、耐久値も問題だが、装備自体が適正能力に達していないから、マイナス補正が掛かっている。今戦闘になるのは非常にまずい。


 とりあえず、装備できる武具と防具があるかな。鞄の予備の武具を調べて、装備できそうな物を探す。

 ……、仕方ない。これを使うか。

 ハロウィンの時のイベントアイテムの魔女の帽子、魔女のローブ、カボチャのステッキを装備する。

 

 能力補正もないが、耐久値もない。完全なおしゃれアイテムだ。指輪は耐久値が減るともったいないので、外しておく。ただ、靴は替わりが無いのでそのままだ。

 カボチャのステッキが恥ずかしいが、戦闘になった時、無手では、回復魔法は使えないので、何か武器も持っている必要がある。

 それに、杖を持っていないと戦闘スキルも生かせないから仕方ない。

 しかも、装備設定に下着なんてないから、ローブの下スースーするし、恥ずかしい。


 ローブの中見られたら、変質者扱いされるよ。これ。

 しかもこの外見、現地の人が見たら怪しくないかな?真っ黒な帽子にローブ、かわいい帽子をかぶったカボチャがついたステッキ、どう考えても普通の若い男がするような格好じゃないよな。白い目で見られて、迫害とか嫌だぞ。

 それにこんな装備で大丈夫なのか?


 さらに袋の中を見ると、最後に、紙切れが一枚入っていた。

 なになに、この世界を楽しんでもらうために、この世界の一般的冒険者より、強めの能力レベルにしておきました。だと。

 いや、そこはそのままにしておけよ。安心して生活できないし、俺強ぇーもできないじゃないか。

 でも、一般冒険者はこれより弱い?大丈夫なのかこの世界。でも、この能力で強い方なら、このイベント装備でも問題ないのか?


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