(75)ディジーリアを見詰める時、ディジーリアもまた汝らを見付けるのだ

 再びの冒険者協会の女性宿舎です。

 あれからぐっすり休んだ御蔭で、試験の有った昨日よりも調子がいいくらいです。

 日が昇っているのを確認したら、早速とばかりに職員食堂へと向かいました。


「あら、お早う! 早起きさんにはグレンの実をサービスして上げましょう」


 おお。居心地が良過ぎて、ずっと宿舎に泊まり込みたくなりますよ?

 でも、残念。学院に通うならば、やっぱりそこは寮暮らしです。

 合格していなかった時は、考えてみてもいいかも知れませんね。


「お早うございます! グレンの実は昨日初めて食べましたけれど、酸っぱくって美味しいですねぇ」

「ええ、目覚ましには丁度いいでしょ? 口の中もすっきりするわ」


 有り難くグレンの実付きの朝食を頂いたら、そのまま学院にお出掛けですね。

 合格していてもいなくても、お昼まで時間は空きますけれど、待っている間はオルドさんやファルさんとお話しするのもいいでしょう。オルドさんが届けてくれた千両鉄の加工をするのも有りですね。

 どちらにしても、まずは合格発表の確認です。

 そう思って冒険者協会を出ようとすると、後ろから声が掛かります。


「王城からは回答待ちだから、日程が分かるまでは協会には寄るようにしてね~」

「はーい! 分かりました!」


 そうですね。王城にも行かなければならないのです。

 時告ときつげの魔道具は私の家に置いたままでしたけれど、王都でも手に入れた方が良さそうです。

 何だか盛り沢山なのですよ?



 協会を出ればてくてくと、再び学院への道を辿ります。道を外れて探検するのはまた別の機会ですね。

 オルドさんへと繋げば特に何事も無く、ファルさんに繋げば魔法薬の礼を言われた他に、学園から来る新人達が、卒業と同時に余り月から研究所に来るらしいとの事だとかを教えて貰いました。

 勤勉な事ですね。つまりは、採取ナイフの出番も早まるという事です。

 遠隔操作で浮かせた鉄塊を、ふよふよと鍛冶場まで動かして段取りを進めておきます。

 警備鎧に持たせたりなんかはしませんよ? あれは只の張りぼてで、警備鎧も動かそうと思えば其の分負担が増えるだけですから。


 因みに、爺鬼ゴブリン盗賊団を監視していた人は、接触先を増やしながら今も私の監視下です。ですが、その始めに接触した相手が、昨日は研究所に出勤していたみたいでどうにも頭が痛いです。

 これも王城に丸投げですね。私が首を突っ込む話では無いのですよ。


 今日も昨日と同じくらいの時間帯に研究所への道を行きますが、道には昨日よりも若い人が多いです。合格発表が有る事を考えると、皆さん受験生に違い有りません。

 時折脇の御屋敷から投げられる朝の挨拶にも応える余裕は無さそうですけど、私と同じ様に大きな荷物を背負っている人も数多く居ますので、分からないでも有りません。ここで不合格になってしまうと、長旅をして王都まで出て来た時間も費用も意味が無くなってしまうのでしょう。もしかすると、王都で働きながら来年に望みを繋ぐ人も居るかも知れませんが、それで合格出来るかと言えば難しいところでしょうしね。

 私の場合、研究所長という身分を着せられては仕舞いましたけれど、基本的に何処へ行くのも自由気儘な冒険者です。硬い表情の同期を横目に、私はのんびり挨拶も交わしますよ?


「お早うございます!」

「はい、お早うさん」


 挨拶を交わすのは気持ちいいのです。顔を歪められたり、舌打ちされたりした私ですから、それはそれは本当にそう感じるのです。

 ですから、ほら! 学院の入口でも――


「お早うございます!」

「はい、お早うございます♪」


 受付に居たお姉さんに挨拶をすれば、にっこり挨拶を返してくれた上に、手まで振ってくれました。

 手を振り返した私は、そのまま隣の貼り紙へ――


 ……。

 貼り紙へと目を移した私です。

 貼り紙には合格者の番号が、縦横綺麗に整列させて記されていたのですが、探すまでも無く私の番号が見つかってしまいました。

 なんか、一番上に首席合格者として私の番号、“終の一番”が記されています。

 これ、どういう事なんでしょうかね?


 貼り紙の前は人に埋もれていて、近付くには宙でも踏んでいこうかというところでしたから、見付け易いのは有り難いのですけれど……。

 どうやら、一般教養の試験をした会場で手続きなんかも受け付けているみたいでしたので、入口を入ってみればぐるりとコの字を描く様に広く机が並べられていました。

 右手側を伝う様にして右・奥・左と順に回って、最後は入口の逆の端から出る様です。これ、説明会が昼からという言葉をそのままに信じていたら、間に合わなかったかも知れませんよ?


 何だか王都に来てから不意打ちを食らう事が多くなっている様な気がしますけれど、まずは手続きを済ませてしまいましょう。


 手招きに誘われて、右側初めの机の前に立つと、受験の時の番号札を要求されました。確認された後に、判別の魔道具に触れると青い光が灯ります。

 そこで初めて手招きしていた男の人が、にっこり笑顔を浮かべると、魔道具に触れた左手を両掌で包み込んで、「首席合格おめでとう」と言ってくれたのです。


 おっと、いけませんね。何をすればいいのか分からない場だからか、挨拶を忘れていましたよ。

 そこで私もにっこり笑って、有り難うございますとお辞儀を返したのでした。


 そこからは流れ作業です。腰の後ろの小物入れから、金貨と入れ替え済みの十両銀を取り出して支払うと、大きな籠を渡されました。

 次の机で「よろしくお願いします!」と挨拶すれば、教本の束を渡されます。

 順繰りに回れば教本や教材の数も増えて、籠がどんどん埋まっていきますけれど、……え? どういう事ですかね? 私は魔道具について学びに来ましたのに、今配られている教本は何をする物なのでしょう?

 訝しく思いながらも、重くなってきた籠を魔力の腕で浮かしながら次の机へと向かったならば、浮いている籠に気を取られる人も居ますけれど、大体熱心に握手をしてくれます。他の合格者の人が、私に対してだけ違う歓迎具合に訝しんでいる様ですよ?

 私自身も首を捻りながら、最後の品目チェックを終えたからでしょうか。一人会場内を見渡していた職員さんが、声を掛けてきたのです。


「首席合格おめでとう。先程から何やら悩んでいる様だが、どうしたのかな」


 職員さんは、受験の時にこの会場で試験官をしていた人ですね。


「ええ……私はここに魔道具について学びに来た筈なのに、なんでこんなに教材が配られるのかとか、首席ってどういう事とか……」

「んん? 君は学院の案内を見て受験したのでは無いのかな?」

「いえ、ここの学院長さんから学院に来ないかと招待を受けたので、丁度魔道具について学びたかった事も有って、それで王都まで来てみたらその日が入学試験の最終日だったのですよ。ご領主様に伺った話でも、そんな細かな話はしていませんし、何より出身は南の端の大田舎ですからねぇ……」


 正直、案内書が有るのなら、今からでも見てみたいものですね。

 そんな気持ちを込めて試験官だった人を見上げると、戸惑っていたその人がぐっと姿勢を正しました。


「む、むむ、生憎今は学院長が不在にしていてな。しかし学院長に誘われたとは何か心当たりは有るのかな?」

「そうですねぇ……幾つか研究論文を出しましたから。鬼族の角について書いたのが目に留まりましたかねぇ」


 タイミング的には大猪鹿の肉でしょうけれど、それで学院に誘われるとも思えません。

 ただ、既に研究論文を出しているという事に感銘を受けたのか、試験官だった人は深く息を吐いたのです。


「流石だな。……んんっ! まぁ、いい。それらの教材は、言ってみれば一般教養の上級編という物だ。学園で学んだ一般教養が雇われる側に必要な知識だとすれば、これは人を雇う側、自ら事業を始める側に必要な知識だな。学院で専門技術を学ぶ者なら必ず何処かで関わる事になる。知識系技能で調べる事が出来るとしても、何を調べればいいかも分からなければ技能の活用の仕様も無いからな。そういった知識を知っておく事も、学院生に求められる事なのだよ」

「はぁ」

「まぁ、学園と同じで試験に合格しさえすれば良いのだから、そこまで気にする事は無い。学園で学ぶ内容と重複する部分も多い。学園を飛び級してきたのなら楽勝だろう? 初めの試験は始業第一週目に有る。まだ二十日以上有るのだから、まぁなんだ、その、頑張れ」

「……そうですねぇ。本を読めば済む話なら、まぁ、何とか。今から魔道具の講義を受けるにはどうすればいいかとか、寮の予約はいつから出来るのかとか聞くのは気が早過ぎますかねぇ?」

「んんん!? 講義については気が早いが、寮の予約は受け付けている筈だぞ? 確かこの会場を出て直ぐ右だ」

「おお!? それは気が付きませんでした! 有り難うございます、直ぐに予約してみますね!」


 随分と親切に思えるのは、私が首席合格者だからなのでしょうかね?

 そう言えば、どうして首席なのかを聞き損ねてしまいましたが、私は既に慌てて寮の予約受付へと足を運んでいたのでした。


 そうして会場を出てみれば、丁度建物の陰に設えた大きな天幕の下に、寮の予約の受付が設けられていました。幾つか並べられた長机で、既に何人かの合格者が相談している様子です。

 私も慌てて空いた受付の前に立てば、利発に見える青年が受付を担当してくれました。

 学院の上級生なのですかねぇ? 私としては、もっと筋肉が付いていなければと思うのですが、戦いに明け暮れたりしない街の男ならば、これでかなり格好いい方なのかも知れません。

 それでいて表情も柔らかいので、何だかとてももてそうです。

 「よろしくお願いします」と声を掛けると、にっこり微笑むのも高評価ですね!


「寮の予約でいいのかい? 希望する条件が有れば言ってくれるかな」


 声の調子も優しいですよ? これは人気が高そうです。

 それにしても、条件から先に聞いてもいいのですかね?


「そうですねぇ。部屋で作業もするので、一人部屋がいいですね。今日から入れる所がいいです。それで、鍛冶場付きか、鍛冶の炉を置いてもいい作業場付きなら尚いいですね。鍛冶をすると床に衝撃が加わりますので、作業場は一階じゃ無いと駄目ですよ?」


 と、ちょっと無茶を言ってみました。

 私としても無理な条件と思っていたのですが、お兄さん、「ちょ、ちょっと待って」と言いながら、カタログを凄い勢いで繰ってます。

 有るんでしょうかね? そんな物件。

 ちょっと驚きながらもお兄さんが調べ終えるのを待ちましたけれど、どうやらやっぱり難しいようです。


「いやぁ、君も凄い条件を出してくるね。有るとすれば上流区画だけれど、鍛冶の許可を交渉をするなら直ぐに入寮は難しいし、商業区画に確保しているのは完全に宿舎だからそこも無理だね。学内寮なんかは必要最低限って感じだし。――いや、待てよ?」


 おおう、お兄さん。そこで待ったを掛けてしまうのですね?


「うん、学院の寮について説明するとね、元々は上流区画から召し上げた貴族の邸宅しか無かったという話だね。その貴族の部屋を上流階級の寮として、使用人の部屋を一般の部屋としたのが始まりだ。そういう屋敷なら鍛冶をする部屋が有る可能性も有ったんだけれど、部屋数が足りないと言っている現状では交渉も難しいというのが僕の考え。

 で、部屋が足りないのを何とかしようと学院の奥に造られる様になったのが学内寮なんだけど、直ぐに寮が建つ訳でも無いからね、それで確保したのが商業地区の宿舎。宿舎も一時期借りているだけだから、やっぱり融通は利かない。

 だけど、学内寮は建築科で建てているから、少しは融通が利くんだよ。だから、君の希望を叶えられるとすれば一つだけ。学内寮に住みながら、建築科に交渉して屋外に作業小屋を建てて貰うか、作業小屋付きの寮を何とかして建てて貰って引っ越すか。

 それも駄目だって言うんだったら、もう王都に自分の好きな家を建てるしか無いんじゃ無いかな?」


 家を建てるというのもそれはそれで魅力的な提案ですけれど、建てるとしたら自分でですかね。二度目ですから、今度は戸惑う事も無く建てられそうです。


「纏めると、上流区画は造りがしっかりして学院にも近いけれど、まず一人部屋は無いし、鍛冶なんかも出来ないだろうね。

 学内寮は意外と外れにあるから通学するのは兎も角、街に出るには不便だし、学院生が造っているから雨漏りなんかもお察しだけれど、一番融通は利く感じだね。

 商業区画は学院へは遠いし融通は利かないけれど、街に出るには便利だよ。

 この中から君の希望で選ぶとするなら、学内寮だと思うけれど、どうしたい?」


 そんな物思いに耽っていると、お兄さん、また微妙な纏め方をしてくれました。

 そんな言われ方をされると、冒険者協会に近い商業区画も視野に入ってきてしまいます。

 でも、結局は、悩んで悩んで悩んだ末に、学内寮に決めたのですけれどね。


「はい、了解! それじゃあ、女子寮の北二階の角部屋だよ。鍵は管理人にこの用紙を渡して受け取ってね」


 直ぐ様受付の奥に貼られた案内図から、該当する部屋に貼られた用紙を剥がして、お兄さんが渡してきます。

 場所は、……案内図を見れば分かりますね。


「今から行っても大丈夫でしょうか?」


 そんな問いに、お兄さんは奥の職員へと目を向けましたが、その職員が手で丸を作るのを見て肯きました。


「大丈夫みたいだね。学内寮の寮費は初回は月当たり一両銀。次からはもう少し安くなる筈だけれど、管理人に確認してね」

「籠の教材だけは説明会で必要ですから、持って来て下さいね」


 奥の職員からも、説明会での必要物について声が飛びます。

 お兄さんと、職員にお礼を言ってから、学舎の右手を抜けてその奥へと向かいました。

 学舎を抜けたその裏に回れば、魔術実技の試験をした演習場が有りますが、寮へは右手に聳える壁沿いに向かうみたいですね。この壁の向こうは王城です。どうやら、演習場で右手に見えていた雑木林の向こう側に、学内寮は有った様です。

 両翼に、一階二階がそれぞれ五部屋の、合わせて二十部屋の建物が二棟。手前が男性用で、奥が女性用ですね。

 その女子寮の向こう側にはもう寮を設ける広さは有りませんが、作業小屋付きの家ならば充分配置出来そうです。

 寮が建つのは林の中と言っても、細い木が疎らに生えるだけのそこは日当たりも良好です。これは中々いい選択だったかも知れませんね。


 そんな期待と共に女子寮へと踏み込んだのですが……。

 何処か嘘臭い表情で見送る管理人の女性から鍵を貰って、軋む階段と廊下を渡り、一番北の端の部屋の扉を開けた私が見たのは、壁紙を貼っても隠せない雨漏りの跡を壁に残した、そんなお部屋だったのです。

 それはその部屋を学院での定宿とはせずに、僅かな間の一時の仮宿と決めた、正しくその瞬間だったのです。




『ねぇ、クルリ、聞いてよ』


 そこだけは調えられた寮のベッドの上で、クルリに渡した研究所のプレートに、秘密基地の特大輝石を通して声を届けました。

 まぁ、鍛冶場で新しい鎚を造るのに、鉄塊を捏ねている序でですけれど。


『聞いてるよぉ?』


 と、クルリの声。

 初めは吃驚してプレートを取り落としそうになったのに、今は落ち着いて耳を傾けています。


『壁紙を剥がしたら、壁板が腐っているのよ? 信じられないよ~』

『棟梁さんなら怒っちゃう?』

『怒っちゃう怒っちゃう。指で突いたら指が埋まるんだもの。大爆発よ』


 ちょっと前まで、ずっと近くに居ながら、お話だって殆どしなくなっていたのに、

 今は遥かに遠くに居るのに、ずっと近しくお話ししています。


『それは大変だね~。学院って、もっと凄い所だと思ってたよぉ』

『私もそう思ってたよ。クルリはどんな感じ? 研究所の自分の部屋は、雨漏りとかしてないよね?』

『あはははは、そんなの有りっこないよ~』

『なら、いいけどね~』


 本の僅かな時間なのに、クルリと話しているだけで、凹んだ気持ちが随分と楽になりました。

 そうですよ。気に入らないなら、変えていくしか無いのです。

 私が家を出た様に。

 私が冒険者になった様に。

 私は凹んだ気持ちをクルリに癒されながら、そんな事を考えていたのでした。




「よし、時間だ。入学説明会を始めよう」


 一般教養の試験官だった人の号令で、説明会が始まりました。

 会場となっている食堂は、元は大貴族の宮殿の大広間です。ドレスを着た人達がみやびやかに踊るのが似合いそうなその場所に、今は美しい白い丸机が幾つも並べられています。

 私は何故か真正面の机へと促されたのですけれど……あー、首席だからと何か喋らないといけないのでしょうかね?

 給仕される昼食は、お貴族様のディナーとも思える物で、これからの学院での輝かしい未来を象徴――


 ……って、それは有りませんけれどね。

 寮に行く前に説明会に出ていたならば、ちょっと勘違いしたかも知れませんけれど、あの寮を見てしまえば勘違いも出来ません。

 これは単純に、今回限りのご褒美の御馳走なのでしょう。


 そんな昼食会に出ている私の姿は、お婆様に頂いた原色仕立ての普段着です。不規則な形のパッチワークだというのに、卓越したセンスでとても格好良くてお洒落なのです。

 籠以外は結局部屋に置いて、今は“黒”と“瑠璃”が警備中。小物入れすら籠に入れて、嘗て無い程に身軽です。

 まぁ、会場の優美さにはそぐわない格好では有りますけれど、それを言ったらここに集う人達の殆どがそうですね。

 しかも皆さん、食事も共に進めていいと言われたからと、司会が喋っているのに御馳走にもう夢中です。

 お行儀は悪いですけど私だって食べてしまいますよ?

 スープを掬ってかぷっと食べて、パンを千切ってクリームを付けて――

 おっと、クリームがあんまり美味しいので、もう無くなってしまいましたね。

 給仕のお姉さんににこっと微笑んで、そっと軽くクリームの器を示してまたにこり。

 同じくふんわり微笑んでくれたお姉さんが、クリームのお代わりを持ってきてくれましたので、軽く会釈をしながらまたにこり。

 ふぉおお、思わず自然と出てしまいましたけれど、服装は兎も角、とってもお姫様的ですよ!?


 司会の進める説明会は、既に一般科目の扱いから、専門科目の受け方へと進み、学院での成績について説明が進んでいます。

 成る程、学院の卒業はいつになるかと思えば、一般教養科目の合格の他に、専門科目を一つでも合格すれば、いつでも卒業扱いに出来るという事ですか。取りたい一つが取れればいいと言うならそれでも良く、複数科目取るまで粘るのも自由という事ですね。逆に、どの科目にも合格出来なかったとしても、自身の目的を達成出来たなら学院を去るのも自由です。

 何て言うか、この割り切り方は私好みかも知れません。


 丁度食事を終える頃合に、説明も終盤へと入りました。

 同じく席に座っていた講師陣と思わしき人達が、順次前に出て紹介されてます。

 結構な人に見覚えが有りますねぇ。まぁ、受験チケットの半分近くを気が付いたら使っていたのですから、当然の事かも知れませんけれど。

 気になる講師の先生方も、結構色々居るものです。


 まずは武術の先生方。学院で武術の講師が始めに紹介される意味を勘繰ってしまいましたけれど、単に勢力の大きい科目から紹介しているみたいです。考えてみれば、領主様の様な騎士を輩出しているのも学院なのですから、研究所に居てそうな人達ばかりでは無いのですよ。

 それに、近くに“クアドリンジゥルの門”を擁するからといって、筋骨隆々の戦士ばかりでも有りません。束ねられた針金の様なしなやかさを感じる人だとか、研ぎ澄まされたつるぎの様な鋭さを持つ人も居るという事は、騎士様達は王都の冒険者とは違って、色んなタイプが居るのでしょうね。

 受験の時には隙を突く事も出来ましたけれど、『隠蔽』頼りな戦い方に慣れてしまっては、『隠蔽』が効かなくなった時に終わりが来てしまいます。ナイフに剣、刀、槍、棍。それに投擲。一流の冒険者になる為に、学ぶべき事はまだまだ一杯有りそうですよ?


 次は魔術の先生方。と言っても、『儀式魔法』全盛の中での講師達ですから、私の趣味からは外れてしまいます。見るからに、魔力を垂れ流している人が多いのです。それに受験の時の事を思い返せば、今でも駄々漏れというのに、これが魔術を使う時にはもう決壊する有り様なのですよ。

 そんなお漏らし名人にお漏らしの方法を教わりたくは無いと思うのですけれど、悩ましい事に魔道具に使われる魔紋や魔法陣の技術は、もしかしたら『儀式魔法』寄りの技術なのかも知れないという事です。

 ただ、感情の色の見えない観察者の視線で私を見ていた魔道具の講師は、『儀式魔法』使いに有りがちな“そう決まっているものだから”という意識が余り感じられませんでした。魔力も駄々漏れにさせてませんでしたし、そこは自ら『儀式魔法』を使う人とは少し違うのかも知れません。

 そうなるとお漏らしの技術とは関係が無くなる訳ですから、少しは期待出来るのです。

 それに、自分で魔術を使うからこそ、融通の利かない『儀式魔法』に苛立ちを感じたりもしましたけれど、道具にするならあんまり融通が利いても困ってしまいそうですし、『儀式魔法』に軍配の上がる分野なのかも知れませんしね。


 武術魔術と続いた後に、政務や法務といったものが来るのは必然でしょうか。受験でも顔を合わせた、生き字引の様なお爺さん先生も居ましたけれど、生憎興味は有りません。続いて紹介された一般科目で、一般的な法律を学べば充分です。

 尤もそれも講義を受ける気は無くて、初回の試験に合格して飛び級してしまうのが目標ですけどね。

 それにしても、一般科目に有る体育とかは、一体何を学ぶのでしょう? 体を動かすだけならば、学院で無くても充分なのに、何とも不思議な講義も有るものです。


 一般科目の紹介が終わった後には、専門科目の紹介です。

 でも、専門科目と言いながら、振り分け方が微妙です。弓術もこちらですし、重要そうな農学なんかもこっちです。

 全員が必須なのが一般科目で、騎士に必要な文武に関わる物も別にして、それ以外を専門科目としている様な、そんな感じです。学院という響きから想像していた事と違って、騎士を重視しているのかも知れません。


 植物学とか農学とかは、第三研究所に持ち帰れば良いお土産になりそうですね。ですが、私自身が興味が有るかと言えば微妙です。見れば何となく分かる事を、私の感覚よりも正しいかどうかも分からない講義に時間を費やす気にはなれないのです。

 そういうのは、試しに覗いてみてから決めるのが良さそうです。


 別の意味で興味を惹いたのが建築です。何と言ってもあの寮を是としている人達ですから、今後私の作業場を建ててもいいか交渉するにも、どういう人達なのか見極める必要が有るのです。

 と思って見ていたのですけれど、……よく分かりませんね。自信に満ちて偉そうな先生達と、何だか遣る気の無さそうな先生が居て、正直よく分かりません。遣る気の無い方が手を抜きそうなものですけれど、体付きからも足場の上を飛び回っていそうなのは、その遣る気の無さ気な先生なのです。

 これはちょっと保留ですね。評判を聞いてからでも良いでしょう。


 それからも、調理や芸術、木工、金工、鍛冶、陶芸、錬金、魔法薬、等々と、興味の有る物も有れば、私の遣り方で突き進むのが良さそうな物、それ程興味の無い物含めて紹介されたその後で、ほぼ終盤になって出て来たのが、機構学の先生でした。

 そして私は、一気に惹き付けられたのです。

 機構学の先生方は、皆一様に昏い色のローブを着て、猫背で俯いた顔からは表情が読み取れません。喋る言葉もぼそぼそと聞こえ難く、一言で言えば物凄く陰気でした。

 ですが、その彼等が会場に持ち込んだ大きな箱を開けた時、その雰囲気が一瞬で入れ替わったのです。

 箱から出て来たのは、子供程の大きさの人形です。その背中から何本も突き出た棒を、先生方が握ったその瞬間に、人形に命が吹き込まれました。


『やあ! 僕は機構学科のアイドル! キッコ君だよ!』

『僕の体は機構学の結晶さ! 歯車とベルトが僕の体を動かしているんだ!』

『魔法なんて使わなくても、機構学さえ覚えれば、絡繰り仕掛けで色んな事が出来るんだよ!』

『さあ! みんな機構学を学びにおいでよ!!』


 言葉を喋れない人形は、垂れ幕を翻してアピールします。

 魔力も働いていないのに、飛んで跳ねて踊ります。

 わらわらと追い縋る陰気な先生達が、突き出た棒を操作するだけで、人形は陽気なアイドルへと生まれ変わったのです。


 気が付けば、立ち上がっていました。

 うぞうぞと先生達が撤収する時には、拍手までもしていたのです。

 これこそ、私が求めていたものの一つです。

 喩えるならばそれは無機物に命を吹き込むというカラリヤ山脈の地の精髄石か、それとも悍しき死の還り人の命たる幻冥樹の果実。

 いえいえ、光り輝く精髄石の伝説は、丸で天然の輝石の様では有りますけれど、ふふふふふ、警備鎧に息吹を吹き込むのは、そんな神秘に頼る物では無くなりそうです。

 の手に因る英知の欠片を見付けましたよ!



 その後に幾つか残っていた科目については、可哀相な事に欠片も頭に残りませんでした。

 静かに続く興奮に身を任せながら、飛び跳ね踊る人形の動きを頭の中で反芻していたら、締めに入った司会の先生に、前へと促されたのです。


 やっぱり有りましたね。

 有るのだろうと思ったのですよ。


「では、これで説明会は終わりになるが、最後に最終日に駆け込みで受験して、そのまま首席合格者を掻っ攫っていった“終の一番”ことディジーリアに挨拶をして貰おう。静粛に――では、挨拶願おうか」


 そう言われて前に立って、本当はこれから学院で学んでいきたい事だとかの決意表明をするのだと考えていたのですけれど――

 ……まだ興奮が残ってふわふわした頭のまま、前に立って皆さんの方を向いた時に、そんな考えは吹き飛んでしまいました。


 前に立って振り返ってみれば、そこに居たのは当然の事ながら、私よりもずっと年上のお兄さんやお姉さん達の姿です。

 一番前の席に居たので気にしていませんでしたが、三十人と少し居ますでしょうか。

 意外な事に、獣の特徴を残す獣人達も結構居ます。商都では獣人の地位が低いようにも思われましたが、王都ではそうでも無い様です。

 鍛えた体で表情も険しい人達も何人か居ます。そう言えば、学院は上級騎士の為の学校でも有るのです。

 男に女、人に獣人、青年に壮年。騎士の卵に研究者の卵。

 その全ての目が、私に注目しているのです。


 言葉が、止まってしまいました。

 ここで学びたい事を言って決意表明するなんていうのは、それは何か違うのです。

 何を言えばいいのかも分からなくなってしまいましたけれど、言葉を止めたままでは居られません。

 だから私に出来たのは、今の想いを語る事だけだったのです。


「ディジーリアです。ディジーでいいです。

 本当は、学院で学びたい事を述べて決意表明しようと思っていましたけれど、皆さんを見てそれは違うと思ってしまいました。

 だからと言って何を言えばいいのか分からないので、考えながら私の事でも話したいと思います」


 突っえ突っ支え、言葉を何とか口にします。


「私が育ったのは、王都から遥かな南の果てで、それこそ一番南の端と言ってもいい田舎の街です。街の直ぐ近くにまで魔の森が迫っていて、森からやって来る守護者と今の御領主様達が戦う音が、昔は街まで鳴り響いたりもしたそうです。

 そんな街ですから冒険者の数も多く、それでいて御領主様の人柄の影響かお行儀のいい冒険者ばかりでしたから、住人達も多くが冒険者を目指す、正しく冒険者の街と言ってもいい所でした。

 そこで育った私も、小さな頃からずっと冒険者を目指して生きてきたのです。


 それこそ五歳の頃から街の中を駆け回って、花屋や食堂の手伝いに、配達、お掃除、草刈り、農園の収獲と、冒険者に成る為の糧になるものなら、何でも手を付けて走り抜けてきました。

 鍛冶場の手伝いで屑鉄を貰い、仕立屋の手伝いで端切れを手に入れ、屠殺場の手伝いで余った皮を譲って貰って、時には街の外で砂鉄を集めて、草原で薬液の元になる草花を採取して、そうしていつか冒険者に成る時の為に、装備の素材を集めてきました。

 学園にしても、冒険者に成るのに必要な条件の一つと割り切って、最速で駆け抜けてきたのです。


 そんな風に全て自分で何とかしようとしていたのは、冒険者の街なのに私が冒険者に成る事を、父が拒絶していたが故の事でも有るのですけれどね。

 私が首席を取れた理由が有るとしたら、そうやって色々と手を付けた経験からの、受験科目数が効いたのも有るのでしょうけれど、でも、そんな駆け足では、一緒に何かを乗り越えていく、そんな仲間というのは作れないのです」


 話し始める前までの興奮とは、全く違った興奮で、何故だか声が震えます。

 呼吸も一定しませんけれど、皆さんがじっと見詰めるから、私は語らないといけないのです。


「私にとって、友人と思えるのは、よく手伝いをした花屋と食堂の子供の二人だけ。一緒に何かをしたと思えるのは、学園に入る前からの、その二人だけでした。


 そんな事に気が付いたのは、今回学院に受験に来たのが切っ掛けです。

 学院に来る事にしたのには、まぁ、色々と理由は有ります。

 元々、街のお祭りで見た拡声の魔道具が学院製だと聞いて、興味を持っていた事だとか、つい最近まで私は『根源魔術』は使えても『儀式魔法』は使えませんでしたので、使い方を教わりたいと思っていた事だとか、私の装備は私のお手製ですので、『魔紋』だとか『魔法陣』だとかを組み込めれば、より一層力を高める事が出来るのではとの期待だとか。

 そんな感じで興味を持っていたところに、偶々私が出した研究論文でも目に留めたのでしょう。ここの学院長さんから招待状が届いたので、これを機会にと受験する事に決めたのです。

 特に私としては装備の強化が重要かも知れませんね。私はまだ成長途中ですので、攻撃に重さが足りず、装備の力に助けられる事が多いのです。


 招待状には期日が書かれていなかったのですけれど、早目に王都へ出向いた方がいいと思って、秋になる前にと街を出て、王都への道を急ぎました。招待状に学院の受験日程が書かれていなかったから、学院は冬からだと勘違いしていたのです。一昨日の夜、王都へ辿り着いたその次の朝に、学院へ顔を出してみれば吃驚する事に入学試験最終日の看板です。慌てて受付に入学希望を告げて、受験する事が出来ました。

 受験会場では妙な先生も時折居ましたけれど、これまで培ってきたその力を出せたのか、こうしてここで挨拶が出来る事になったのです。

 まぁ、冒険者をしているのですから、私の技術に懸かっているのはそれこそ私の命ですからね。その多くが我流の独学で、一般的に知られている技術とは何かが違うと言われてしまうものなのですが、多少何かが違ったとしても打ち込んできた魂の分だけ評価して頂いたという事ならば、それはとても嬉しい事なのです」


 そう、それで済んでいれば、そのまま楽しい学院生活を夢見ている事が出来たのでしょう。


「その合格発表はつい先程、皆さんご存知の通り今日の朝の事です。

 王都に知人が居る訳でも有りませんので、今日からでも暮らせる場所を手に入れる為に、その後、寮を予約したのです。

 私の場合、部屋で作業もすれば鍛冶が出来る場所も欲しかったのですが、今直ぐというのは上流区画や商業区画の寮では難しいだろうと教えられました。場合によっては家を確保するのでも良かったのですが、その時相手をしてくれていたお兄さんに提案されたのが、学内寮の利用なのです。

 学内寮は建築科が学院生を使って建てている物だから、交渉次第で作業小屋を建てて貰うぐらいの融通は利くかも知れない、と。

 作業小屋付きの家を借りるにしろ、自分で建てるにしろ、直ぐに動けるものでも有りませんから、一時の仮宿にするにもいい選択だと私もその時は思ったのです。


 ですが訪れた学内寮で寮費を払って入ってみれば、軋む床に飛び出た釘頭、部屋の壁紙は雨漏りで濡れて、壁紙を剥がせば腐った壁板に、節穴から空が見えました。

 こんなのでは木組みも真面に出来ているか信用なんて出来ません。私に木組みを教えてくれた棟梁なら、ぶっ壊して建て直せと、ぶん殴られて怒られる代物です。こんな何も知らない学園の子供が建てた様な欠陥住宅を是としてお金を取って学内寮にしてしまう学院にも失望が抑えられなくて、こんな廃棄物の中で暮らす事になる自分も情け無くて遣る瀬無くて、学内寮だけが殊更酷いのかとも思いましたけれど、学院生にも酷いと知れ渡っている事を放置している事だとか、受験では魔術の学科で魔術について何も分かっていない人が試験官をやっていたりだとか、そんな学院で時間を潰すくらいならもう学院なんてやめてしまいましょうかと気落ちしていたのですけれど――」


 今はもう悲しいとか悔しいとかいう気持ちは収まっている筈なのに、感極まってか声が震えて視界が滲みます。

 頬をぽたりと雫が落ちていきました。


「……そんな気持ちの時に、親友の一人と話をする事が出来たのです。

 話をした内容に大した事は有りません。大変なんだよって、大変だねーって、そう言い合ったそれだけです。

 ですけどそれだけで私の心は楽になって、また前を向ける様になったんです。気に入らない事も有るけれど、学ぶべき事も一杯有るのだから、そういうのを糧にしていけばいいんだって。

 そして友達とか仲間の持つ力というのを、そこで初めて理解しました。冒険者としての私はいつも一人でしたから、誰かと一緒に何かをやり遂げるという事を知りません。他の事なら……まぁ、食堂や花屋の手伝いなんていうのを一緒にしたのが私の友人達なんですけれど、私の芯に近い所とは違う何かで達成したものですから……。


 そんな友人達の有り難味を実感しながら、私はまたこの学院も学園と同じ様に、駆け抜けていくつもりでした。私に必要な部分だけを糧にして、それ以外には見向きもせずに。必要な知識や技術を身に付けたなら、卒業なんてしなくてもそのまま学院を離れればいいと、そんな事さえ考えていました。


 ――こうして皆さんの前に立つ、その時までは」


 くすんと鼻を鳴らします。

 面白い話でも無い筈なのに、私を見詰めるその眼差しが、私の言葉を後押しします。


「この真ん前の席に促されてから、何となくさせられるのではないかと思っていた首席合格者の挨拶です。受講方法の説明の間も、学科の紹介の間も挨拶の内容を考えてはいたのですけれど、前に立った私に注がれるその眼差しに、逆に私が皆さんの事を全く見ていなかった事を気付かされて、考えていた挨拶は何かが違うと思ったのです。

 そう、それまでは、皆さんの事も学院という場の、舞台装置の一つの様にしか見ていなかったのです。


 でも、その直前に、私は友人が、仲間が大切なんだって気が付かされています。

 その事も有って、本当なら学園とか学院というのは、そういう仲間を作るのに一番の場所の筈だったんだと、漸く思い至ったのです。

 今日の説明会の内容を考えても、学院は学園と違って、一緒に入学した同期だからと言って共に行動する機会も少ないでしょう。もしかすると今日以降、全く顔を合わせない人も居るかも知れません。

 今迄ずっと蔑ろにしていて、今更ながらに気が付いた私ですが、それでも今は、皆さんと仲間と言える様になっていければいいと思っています。


 長々と話をしてしまいましたけれど、結局の所言いたい事は一つです。

 どうか皆さん、こんな到らない私ですが、どうぞこれからよろしくお願い致します!」


 最後まで言い切って、深く頭を下げました。

 暖かい拍手が降り注ぎました。

 頭を上げると、厳しい顔をしていた人達も、どこか表情を軟らかく緩めています。

 悲しくて涙を流した訳では無いのですけれど、貰い泣きをしてしまっている人も居ます。


 そんな人達を見渡しながら、嗚呼、きっと私はこの人達と、仲間になる事が出来るのだろうと、そんな事を考えていました。

 でも――


「まぁ、でも、結局の所、私は私の好きにするんですけどね?」


 思った事をぽろりと溢してしまいましたら、えっ、と目を見開かれてしまいました。


「「「「「ええぇ~~~~!?」」」」」


 と声が上がります。

 いえ、皆さん、えー、って言いますけれど、本当のところそういうものだと思いますよ!?

 ぐすんと鼻を鳴らして、私は首を傾げたのでした。

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