第74話

「ゾーイ、お前は本当に男なのか?」

「?急にどうしたんですか、ご主人様」

「あれはてっきり冗談なのかと、そう思っていたのだが」

「フリーハグのことですか?冗談ではありません。僕は本当にしたいと思っていっているのです」

「お前は、他の国に攫われた時もこんなことをしていたのか?」

「はい」


と帝都を歩きながら、そんな話をする。


 ご主人様のペットになってから一日が経過したが、特に酷いことはされていないし、普通の生活を送れている。


 普通と違うことと言えば、ご主人様にお手とか犬の真似事をさせられていることくらいだろう。


「もしかして、フリーハグをしてはいけませんか?」

「いや、我は約束を違える事はしない」

「それならば、良かったです」


ご主人様がいるからか、帝都を歩いていると周りからの視線がすごい。あと、僕への興味の視線も感じる。


 さて、いい感じの場所も見つかった事だし、始めるとしますか。


 この国に来てから新しく作ったボードを持って、往来の多い場所に立つ。


「フリーハグをしませんか?」


 ご主人様のことを気にしつつも興味を持った人々が恐る恐る近づいてくる


「僕とハグしてくれませんか?」

「してもいいけれど…」


そういった女性はチラリとご主人様のほうを伺うようにみる


「別に構わん」

「ご主人様もこういっていることですし、大丈夫ですよ」


そういって腕を広げると女性も僕に応えて抱きしめてくれる。


 帝国の女性は、男性の事を精液の取れる奴隷くらいに思っていて、僕からのハグを受けてもあまり効果はないのかとそう思っていたけど、この反応を見る限り大丈夫そうだな。


 だって、他の国の女性のように涎を垂らして幸せそうな顔をしているし。


「気持ちいいですか?」

「う、うん。気持ちいいです」

「それなら良かった」


 一頻りその女性をハグしたり頭を撫でると、次は私だという女性が、殺到したが今までの経験で培った技術を活かして全ての女性と平等にハグをすることに成功した。


 途中、興奮しすぎて僕を連れ去ろうとした女性がいたが、ご主人様が絶対零度の瞳で見たため、正気に戻り土下座をしてことなきを得たり、そんな事がありもしたが。


 みんな幸せそうな顔で帰ってくれて良かった。


 ご主人様と城へと戻り、部屋で何もする事がなくボォーとしていると…


「ゾーイ」

「なんですか、ご主人様」

「あの…」


いつものクールなご主人様はもどかしそうな感じでそう言ってくる。


 思えばフリーハグをしている途中からずっとそうだった。


 言いにくそうにもじもじとしていたご主人様だったが、決心がついたのか僕の顔をじっと見てこう言った。


「主人命令だ。我にハグをしろ」



 




 

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