第73話
「ゾーイ、今日からお前は私だけのペットに成れ」
「......え?」
グレア様が言った言葉に驚いてしまって、思わず間の抜けた声を発してしまった。
グレア様が発した言葉は以前何処かで聞いたことがあるような.......って、そう言えばエリザ様は帝国の皇女だったからグレア様はエリザ様のお母さんって事か。
確かに切れ長の眼とか髪の色とかよく似ているし、エリザ様にもペットに成れとか言われたっけ。
懐かしいなぁ、あの頃。
あの頃は純粋にフリーハグをして世界の人を笑顔にしたいって思っていたけれど、いつの間にか世界中の人から狙われるようになっちゃって、今では帝国に攫われてここにいる。
出来る事ならあの頃に戻りたい.......とは思わない。
だって、どうせ僕はフリーハグをしなくとも、他の形で日々頑張って働いている女性の人たちに還元していたと思うから、自ずとこうなっていた気がするし。
それより、今は目の前の事を考えないと。
エリザ様の時は、何の前触れもなく「ペットにする」という一方的なものだったから分からせることが出来たけれど今の状況の場合、僕が無礼を働いたことに対しての対価としてペットに成れと言われている。
だから、以前のように抱きしめて有耶無耶にすることは不誠実だから出来ない。それに、僕じゃ、この人に勝てるわけがないし。
「どうするのだ?ゾーイ。我のペットになるのか。それともならないのか?」
「うぅ.......」
仕方が無い......のか?
ここでグレア様のペットになる事で不都合はあるのだろうか?僕の目的はただ一つ。この神様から貰った体でこの世界の女性たちを幸せにしたいという事だけである。
勿論、自分の体が壊れない程度にだけれど。
ならば.......
「グレア様」
「なんだ?」
「一つだけ、烏滸がましいですけれどお願いがあります」
「なんだ?内容によっては許可をする」
僕を値踏みするような視線でそう問うてくるグレア様。
深呼吸をして、僕はグレア様にお願いをする。
「帝国でフリーハグをさせてくれませんか?」
「フリーハグ?」
「はい」
フリーハグと言うものが何なのかを説明すると、グレア様は少し考えた後.......
「良いだろう」
「ありがとうございます」
「ゾーイ、それじゃあ今日からお前は我のペットだ」
「はい。グレア様」
「違うだろう、ゾーイ」
「え?」
グレア様は椅子から下りて、座っている僕の前に来ると頬を手で掴み、目と目を合わせ
「ご主人様、だろ?」
「す、すみません。ご主人様」
「.......あぁ、それでいい」
満足げに首を縦に振って頭を撫でられる。
あれ.......意外とペットになるのも悪く無いかも?
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