第72話
「ん.......んぇ?ここ…は?」
ゾーイは目を擦りながらぼんやりと目を開けて見ると、またも知らない天井だった。
まだ完全に開ききっていないぼんやりとした視界の中、左を見るとドアで右をみると.....優雅に椅子に座りながら紅茶を飲んでいる青髪の美女が座っている。
「お、おはようございます」
「あぁ、起きたのか」
グレアは見下すようにゾーイへと視線を送った後に指でくるくると毛先を弄ぶ。
ゾーイはこの世界に来て初めて女性からそういう視線を受けたため戸惑いの感情、それと同時にグレアに対して興味が出てきた。
「あの…ここはどこなんですか?」
「ここは帝国城内だ」
と突き放すようにグレアから言われ、もう一度見渡す。
2度攫われたことがあるので、今更攫われることに驚く事は無いが、その攫った相手が帝国という事に驚いた。
最後の記憶は…部屋のドアが破壊されて誰かが入ってきた所で記憶が途絶えていた。
今の状況が全く分からないため、部屋にいる人へと声をかけることにする。
「これから、僕はどうすればいいんでしょうか?」
「…別に何もしなくても構わん。事が終わるまでそこでじっとしていればよい」
「…?そうですか」
てっきり神聖国のようにこの国の王になれ、みたいな役割が与えられるのかとも思っていたが、考えてみればここは帝国。
男である自分の価値は子種を吐き出せるくらいのものであると考えたゾーイはまたベッドへと寝転ぶ。
「あなたの名前はなんでいうんですか?」
「私はグレア。この国の女王をしている者だ」
そう言われてすぐに寝転がっていた体を起こしてベッドから降りて姿勢を正す。
「申し訳ありません。無礼な態度を」
「…別に構わん」
ゾーイが即座に姿勢を正し、頭を下げたのを見てグレアはつまらなそうな瞳から興味深げな目に変化し、意地の悪い目へと変わった。
「別に構わん…そう思ったが、気が変わった」
「…え?」
「女王である我に、あのような無礼な態度をされたのに腹が立って仕方がない」
部屋が音を立てて凍っていく。霜が降り、飲んでいた紅茶は凍り、天井には氷柱が作られていた。
ゾーイは頭を下げるだけでなく、元の世界でいう土下座をして誠心誠意謝罪の意を見せる。
「だが、私は寛大である。お前の謝罪に免じて許してやらんこともない」
「あ、ありがとうござい.......」
「ただし、私のお願い事を聞いてくれた場合に限るがな」
そうグレアは、土下座をしているゾーイを見下すようにそういう。
「お、お願い事って......」
「ゾーイ、今日からお前は私だけのペットに成れ」
どこかで聞いた事のあるようなフレーズだった
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