第59話
ゾーイが己の未来に軽く絶望しかけている頃、此方はこちらで他人が見たら気絶するほどの殺気を放っている者がいた。
「あらぁ、ドロシーちゃんおかえりなさぁい」
「ゾーイをどこにやった?」
ドロシーはさっきの籠った目でヴィクトリアを見つめるがおっとりとした声でこう返す。
「酷いわぁ、ドロシーちゃん。ママに挨拶を返してくれないなんて。そんな子にはすこぉーしだけお仕置きするねぇ」
と言ったと同時に常人では見えない速さの風邪魔法を放つが、ドロシーは自身に結界を貼りそれを防ぐ。
「流石、私の娘ね。普通の子だったら死にはしないでしょうけれどぉ、無事では済まないくらいのぉ、威力だったんだけれどなぁ」
「五月蠅い、そんなことどうでもいいから私のゾーイの居場所を教えろ!!」
ドロシー以外の他の者はと言えば、国に侵入するのと同時に迎撃態勢を取られ他のエルフたちに足止めを食らっていた。
唯一、この国の第一王女であるドロシーは標的にはされなかったためここまでたどり着くことが出来た。
「ドロシーちゃん、口が悪いわぁ。いきなり何処かへ行ったっきり帰って来ないしぃ、帰ってきたら、ママにそんな強い言葉使うなんてぇ。良くないわよぉ」
ドロシーがヴィクトリアに圧を掛けるが、流石は国の女王と言える。その威圧を何事もないかのように、ニコニコと受け止める。
「黙れ!!いいから、さっさと…………」
「それとぉ、私のゾーイってどういうことなのかなぁ?ママ、良く分からないけれどぉ、ゾーイさんはぁ、私のゾーイさんだから、私の娘だからと言ってぇ、そこは勘違いするなよ、クソガキ」
次の瞬間、ヴィクトリアの魔力が一気に膨れ上がり、物凄い威圧が放たれる。そこら辺にいる魔法使いならば勝てないと悟って自死をするレベルであるが、腐ってもこのドロシーと言う少女は賢者であり、この親あってのこの娘であった。
全くと言っていい程、動じていない。
「ゾーイさんとはぁ、別の意味でたぁくさん可愛がってあげるからねぇ。せいぜいくたばらないように頑張ってね、ドロシーちゃん」
「何時までも自分が有利だって勘違いするのは、老害の証拠っていう事を娘から直々に教えてあげる」
「うふふ」
ヴィクトリアは悠長に笑っているが、まったくと言っていい程隙は無く、対するドロシーも余裕気な表情はしているがその隙は無い。
達人同士の間合いと言うものがここにあった。
じぃっと間合いを図っていたが先に動いたのは、ドロシーだった。
こうして、二人の戦いが始まった。
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