第58話
「………ここは?」
うっすらと目を開けると、最近ずっとあった柔らかい感触や谷間が見えない。
首には誰かに舐められたような液体のような物がべっとりとくっついているような
感覚があったので思わず拭こうとするが手が動かない。
顏だけを動かしてどうにか自分の状況を見てみると、どうやら僕は両手、両足を拘束されているらしく、まったくと言っていい程動かせない。
魔法を放とうと思っても、拘束具による力なのかは不明だが思うように力が入らず逆に使おうとすればするほど魔力を失っているような感覚がする。
最後に見た光景は確か………一度ヴィクトリア様に起こされて、まだ眠いから眠っているといつも通りに、胸に抱きかかえられてそれでつい居心地が良くてそのまま胸に抱きかかえられたまま寝て………。
「もしかして僕………監禁されちゃったのか?」
一度、大きく深呼吸をして、ゆっくりと考えてから導き出した結論はそれだった。
だって、そうとしか考えられないし。別の部屋に移し替えるだけなら僕を拘束しなくてもいいし。
最近、ヴィクトリア様の僕に対する態度がものすごい甘いというか、前世で言うところの恋人くらいの距離感。
いやそれ以上だったような気がする。
僕が何処かへ行けば必ずついてくるし、目線は慈愛に満ち溢れた視線をしていたけれど、どこか危なげだったような気もする。
この状況、どうすればいいんだろう?
それに、僕を監禁したと思われるヴィクトリア様はどこに行ったのだろう?
そう思っていると、自身のような大きな揺れが起きてびっくりしてしまう。
なに興ったのかと確認しようにも手足が拘束されたままじゃ出来ない。
これ、本格的に詰んだのかもしれない。まずいなぁと思うけれど心のどこかではいつかこんなことに成るような気もしていたので驚きは少ない。
これからどうしよう。そんなこと考え始める。
拘束されたまま、数十分間考えてたどり着いた結論は……
「誰かー、助けて―。誰か―!!」
唯一動かすことを許された口で精一杯助けを呼ぶ事にした。
だけれど、人っ子一人……エルフっこ一人すら誰も助けに来てはくれない雰囲気が漂っている。
まるで、外に気配が無いのだ。
軽い絶望に暮れていると
『……ゾーイ、聞こえる?聞こえたら応答して欲しい』
ドロシー先生の声が脳内に響いた。
応答したいけれど、僕は魔法が一切使えないから応答できない。
『もしかして、魔力拘束具でも使われている?あのくそババア許さない。私のゾーイを監禁するなんて』
ドロシー先生、お口が悪い。ヴィクトリア様は全然、美人だし若いでしょ。
『なんか、ゾーイが私以外の事を考えているような気がする』
……あれ?僕、魔法使えないはずだよね?聞こえてないよね?
『兎に角、ゾーイ。絶対に助けるから待っててね。それと……なんで逃げちゃったのかしっかり体に聞くから覚えて置いてね?たっぷり愛し合おうね?もう、出せなくなっても、無理やりひりだしてもらうからね。覚悟してて』
……なんだろう、どっちにしろ助からない気がしてならない。
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