第52話

ある大きな屋敷。


その屋敷のある部屋で、ある女が一心不乱に枕の匂い毛布の匂いを嗅ぎ、その手は自分の胸、そして股に伸びていて恍惚とした笑みを浮かべている。


 その部屋はもうその女のあらゆる汁で汚されていて、むわっとする匂いが立ち込めていて他の人がこの部屋に入ったらきっと顔を顰めるだろう。枕に鼻を擦り付けて大きく吸うけれど、もうほとんど彼女が産んだ男の子の匂いは無くなっている。


 それでも彼女は必死に嗅いでその存在を感じるのに必死だった。


「ゾーイちゃん、私のゾーイちゃん。だぁーい好き。いっぱいいっぱいエッチなことしようね。大丈夫だよー?怖くないから。ママが優しく教えてあげるからね」


 彼女の妄想は加速しまるでそこに自分の息子がいるように見えて、幻の息子に性教育をし始めていた。


 自分の息子が攫われてからすぐは、必死に手を打って探して監禁してもう家から出さないと考えていたが、もう彼女のネジは緩むどころか、弾け飛んでしまっていた。


 もし自分の息子を捕まえることが出来たら、魔力拘束具をつけベッドに固定し排泄から食事まですべてしようと思っている。


 食事も噛むことはさせず、自分が咀嚼したものを口移しで食べさせ、便は流石に無理だが尿は自分で飲むつもりでいる。


 性欲の処理も勿論しようと思っていて、自分が孕むまで何度でもするつもりでいる。孕んでも毎日暇さえあれば搾精しつづける。


 家がどうなろうともう彼女にはどうでも良かった。ただ、ずっと愛しの息子と一緒に居られればもうそれだけで良いのだ。


「ゾーイちゃん、ゾーイちゃん。んっ……んっぁ」


 そして、同じ屋敷にもう一人同じ男に狂える少女がいた。


「お兄様、お兄様、お兄様、お兄様、お兄様、お兄様、お兄様、お兄様、お兄様、お兄様」


 彼女は自分の兄に幼い頃に貰ったクマの人形を抱きしめ、どうしようもなく濡れている股に手を伸ばして自分を慰めている。


 少女もまた、ゾーイという男で頭が一杯になっていた。


 お兄様以外、どうでも良いのです。ねぇ、お兄様。私と永遠に二人っきりでいましょう?大丈夫です。私がしっかりお世話してあげますから。なぁーんにも心配しなくて良いんです。妹の私に任せておけば大丈夫ですから。


 私は一生、お兄様の味方でお兄様の妹でお兄様のこと以外考えられません。


 ですが、お兄様。私だけがお兄様の事をこれほど思うのは少しフェアではないと思いませんか?お兄様も私の事が大好きで愛しているのは知っていますから、それを私の体に直接示してください。


 ねぇ、お兄様、私、お兄様の事愛しております。


 少女は一人部屋で寂しく喘ぐ。


 きっとすぐに会えると信じて。

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