第53話

「ゾーイさん、本当にするんですかぁ?私がいるから万が一なんてことはないとぉ、思いますけれどぉ。それでも私はゾーイさんが心配なんですぅ」

「大丈夫です。万が一の時は女王様が守ってくださるんですよね?」

「はい。勿論ですぅ。ゾーイさんに無礼を働く者なんてこの国には要りませんのでスパッと殺しちゃいます」

「こ、殺すのは無しにしませんか?頬を抓るとかその程度の罰で大丈夫ですよ」

「うふふ、ゾーイさんは優しいですね。分かりました、殺すのは無しにしますね」


 女王様の眼が先ほどまで完全に人を……同属のエルフを殺す眼つきだったのはこの際見なかったことにしようと思う。きっと気のせい。


 朝、女王様に起こされてまた二人で何だかんだ一緒に寝た後に、ダラダラと朝ご飯を食べて女王様にお願いして、やっとフリーハグをすることに成った。

 

 女王様は承諾はしてくれたが、僕のお願いだからと致し方なくらしく、酷く僕の事を心配してくれている。


「まぁ、兎に角女王様が僕の事を守ってくれるのならば心配はしていません。女王様の事信頼していますから」

「っ!?そ、そうですね。大丈夫ですよぉ。私に任せちゃってくださぁーい。ゾーイさんの事は絶対に何があっても守りますからぁ。ゾーイさんの優しさを民たちに分け与えてあげてくださぁーい。民の皆がハグをしていたら私もしたくなってしまうと思うのでぇ、帰ったらハグさせてもらっても良いですかぁ?」

「勿論ですよ、女王様。女王様とのハグを拒否するわけないじゃないですか」


 民の人たちとするのに、女王様都のハグだけ拒否するなんてそんな無礼なこと出来ないし、何よりそんな贔屓なんてしたくない。


「っ!!そうですよねぇ、帰ったらいぃーっぱい、ハグしましょうねぇ。楽しみにしていますぅ。それとぉ、もうそろそろ、女王様じゃなくてぇ、オリヴィアって呼んでくださいませんかぁ?」

「良いんですか?そんなに親し気に女王様の名前何て呼んでしまって」

「いいに決まっているじゃないですかぁ。私とゾーイさんの仲なのですから。うふふ」


 女王様改め、オリヴィア様が僕の事をじっとりとした視線を僕に向けてくる。


 元々女王様の雰囲気はかなり大人の女性っていう感じで初対面の時からエッチな雰囲気があったけれど、今は何というか絡みつくようなじっとりとしたエロさがある。


 フェロモンのような物を発していて、最近は女王様につい手を出してしまいそうになることが多々ある。


 ハグをすることだって一苦労だからね。


 元から女王様みたいな綺麗な人がタイプと言えばそうだから、本当に拙いけれど今までの経験で培った鋼の心があるからまだ大丈夫なだけだ。


 まぁ、今はそれは良いだろう。


「さて、オリヴィア様。やりましょうか」

「様は要らないんですけれどぉ……今はぁそれでぇ、妥協することにしましょうかぁ」


 早速、フリーハグを開始することにした。

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