第30話
シャーロットさんの制止を無視して、ドアを開くとそこには一人のシャーロットさんと同じ服装の女性が立っていた。
「ゾーイ様、お初にお目にかかります、エマと申します」
「は、はじめまして」
かなりおっとりとしたような雰囲気を漂わせており、この人が彼女だったら母性全開で一生甘やかされてダメ人間にされてしまうと分かるくらいオーラが駄々洩れである。
見た目は茶髪でものすごい胸が大きく、涙袋があり目の下には小さいほくろがある。
「ふふっ、噂通りの人なんですね。ゾーイ様って」
「噂通りの人って?」
「女性に優しくて、天使のようなお方だっていうことです」
「まだ、会って間もないじゃないですか」
「分かりますよ。あなたが本当に心優しくて大天使様だっていうことは。私、人の邪の心が見えますから。ゾーイ様にはそれがありませんので。あなたのこことは澄み切った晴天のような暖かな心をしています。それと.....」
とそこで耳を近づけてこんなことを言ってくる。
「女性をたまにエッチな目で見てますよね?少しだけ色欲の心を感じ取りました。私で良ければいつでも.....」
「あ、ありがたいですけれど、今はまだ.....」
「ふふっ、そうですか」
エマさんは優しく微笑んで、僕の傍から離れる。
「そ、それでエマさんは、何をしに来たんですか?」
「あなたに挨拶をしようかと思いまして。一応、私はあなた様の種付け候補
且つ婚約者候補の一人ですから」
「......ということは、あなたは七聖女の一人なんですか?」
「そうですね。私にはもったいない程の称号ですが、七聖女の一角を担っています」
ってことは、この人はシャーロットさんレベルで強いんだ。
僕がもし、シャーロットさんと本気で戦ったら多分だけれど勝つことが出来るが、シャーロットさんとエマさん二人が相手だった場合、僕は多分負けてしまうだろう。
僕の先生であるドロシー先生ならば余裕だろうけれど。
あくまで、僕がドロシー先生に教わったのは、授業で教えていい範囲内の話だ。古代魔術とか禁術とかは一切教えられていないし、多分これから先も危険だから教えてもらえないだろう。
「ここで立っているのもなんですから、座って少しお話しませんか?」
「そうですね、私もあなた様と今、少し会話をしてもっと親交を深めたいと思いましたので、ありがたいです」
「.....むぅ」
僕とエマさんが二人話す中、一人シャーロットさんはむすっとした顔つきでエマさんの事をジト目で睨んでいた。
「私と、ゾーイ様だけの時間だったのに.....」
「それはしかたないでしょう?私もゾーイ様の種付け候補且つ婚約者候補なのだから挨拶くらいはしなければいけませんし」
「それは分かっているけれど、エマにゾーイ様を取られたような気がして。こんな醜い嫉妬をするなんて、聖女失格です」
と項垂れるシャーロットさん。
僕とエマさんが楽しくおしゃべりしていて嫉妬しちゃったみたいだ。この人、すっごく可愛い。
「ごめんなさい、シャーロットさん。でも今はエマさんとお話ししたいから、また後で二人でゆっくり、ね?」
「は、はいっ!!ぜ、絶対ですよ?」
「うん」
シャーロットさんに近づき、耳元でそんなことを言うとビクッとしてから嬉しそうな顔をしてくれる。
元気になってくれてよかった。
「…ゾーイ様は天使でもあり、小悪魔さんなのかもしれませんね」
「…?どうしたんですか?」
「いえ、なんでもありません」
エマさんが何かを呟いたが、何を言っているかは分からなかった。
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