第27話
ゾーイがみんなに監禁されて、自分の未来に軽く絶望していた頃より少し前のお話。
ゾーイが攫われてからすぐに、学園中で騒ぎになった。
アリスは目を覚ますとすぐに、ゾーイの元へ走ったが既にゾーイは部屋にはおらずもぬけの殻だった。
アリスの身に何が起こったのかというと、アリスがシャーロットに服を貸すため服や下着をクローゼットから出している所、シャーロットが気配を消して後ろに割り込み気絶させた。
シャーロットは聖王国の七聖女と呼ばれる神聖国内の最強の七人の一人である。アリスがいくら強いと言ってもそれは、この学校内でだけの話であって国全体と考えると中の上。
まともに戦ってもシャーロットが勝つだろうが、戦闘をしてことを大きくすると人が集まり、騒ぎになってしまいゾーイを攫うことなんてできなくなってしまうため今回は不意打ちを行った。
話を戻そう。
ゾーイが攫われたと理解してすぐに、自分一人で解決しようなどとは思わずドロシーの元を訪れ、事情を話しそのままドロシーの研究室とゾーイの家を繋いである転移陣に乗ってシュヴィ、そしてゾーイの母へと事を伝え、ゾーイ関係者すべてが事を知るまでにたいした時間はかからなかった。
事を聞いたゾーイの母エヴァは最初、頭が真っ白になり何も考えられなかった。自分のどんなものよりも大切である息子が誘拐された。ゾーイが誘拐されるのはこれが初めてではない。あの時、自分でもう二度とこの子を離すものかと誓ったあの日の自分に嘘を吐いてしまった。
自分自身の情けなさに絶望するのと同時に沸々と心の内からマグマのように湧き上がった。
守れなかったアリスにではない。自分自身と誘拐した人への怒りだ。
絶望して動くのをやめるのか?いや否である。そんなことはゾーイを取り戻してからいくらでもすればいい。
母であるエヴァは自分の頬をぶん殴って正気を取り戻して、急いで転移陣に乗った。
妹であるシュヴィ。
物心がついた時から、兄のことを心から慕っていた。
兄妹愛などではなく、一人の男性として兄のことが大好きだった。それはもう狂えるほどに。
シュヴィは何度もゾーイのベッドに潜り込み、ゾーイの息子をそのまま食べてしまおうかと悩んだことか。
シュヴィはゾーイがやさしく抱きしめてくれることが大好き。仕方がないなぁと言う顔で頭を撫でてくれる時が好き。ダメなところを優しく叱ってくれることが好き。性格が好き、顔が好き、ふとした仕草が好き、あくびをした時も好き。つまらなさそうに窓の外を見ているときが好き。たまに馬鹿なことをしているのが好き。女性に優しいところは嫌いだけれど好き。美味しそうに食べているときの顔が好き。素直に美味しいって言えるところが好き。ありがとうってしっかりいえるところが好き。たまにエッチなところもすき、たまに困った顔をする時が好き。私がいたずらするとわざとでも引っかかってくれるところが好き。すき、すき、すき、すき、すき、すき、すき、大好きなのだ。
そんな兄が攫われたとなると、シュヴィの心は真っ黒に染まった。
『だから、お外に出ちゃダメっていったのに』
本当に、困ったお兄様。今助けに行ってあげるからね。
シュヴィは母に続いて転移陣に乗り、王宮へと急いだ。
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