第26話

「つまるところ、君と結婚けいやくしてこの国の王様になってよってことですか?」

「簡略化するとそうですね。あなた以上の男性使徒様はいらっしゃらないと思いますので。その子種を私たちにお恵みしてくださると大変助かります。憎き帝国を打ち滅ぼすことができ、他の小国を統べることも将来的には可能となるでしょう。安心してください、大天使ゾーイ様の生まれである王国を属国化などはせずできるだけ穏便に済ませたいと考えていますので」


 .........穏便に済ませられるかなぁ?


 多分今頃、アリスとかエリザ様、その他諸々の僕の関係者たちが物凄い激情に駆られてこの聖王国という国をどう料理しようかと考えている感じがする。


 特にアリスは、この飄々として実はものすごく強いお漏らし聖女さんであるシャーロットさんに出し抜かれ、僕を奪われてしまったことについて自分自身に怒りを感じて自害までしようとしているかもしれない。


 それは他のものがきっと止めてくれるだろうから自死はないと思うが、その自分に対する怒りを一度抑え込み、僕をこの国から救い出すという思考に変わったとき容赦なく僕以外の人を殺しそうな気がする。


 王国側の王家の人間側も大激怒だろうな。


 ヴィクトリア様の母であるヘレナ陛下も僕のことを大変気に入っていて、母さんが猛反対しなければ自分の子として僕を育てようとしたくらいだからね。


 もちろん、ヴィクトリア様も激おこだろうとは思う。


 一番不味いのは、僕の家族である母様とシュヴィそして、ドロシー先生と王国の聖女様だろうね。


 きっと母様とシュヴィは僕があっちに戻ったら僕のことを監禁して一生外には出させてもらえないような気がする。


 そしてこういうのだ。


「ゾーイちゃん、やっぱりお外は怖いところだったでしょ?もうお外に行ってはダメです。可愛い可愛い、私のゾーイちゃん。ずっとお家にいましょうね?母である私がずっと見守っててあげるから」


 と顔は笑顔だけれど目は一切の光を通さない真っ黒な瞳で僕に抱き着いて離れない。


 半月は本当にずっと一緒の生活になるだろう。


 ご飯も、お風呂も果ては、トイレの中まで。


 シュヴィもきっと.........


「お兄様、やっぱりお母さまが言っていた通りお外は危険なの。だからお兄様みたいな優しすぎる完璧な人がいたら理性のない獣が襲ってきちゃう。だからずっとお母様と私と三人でずっと一緒にいよう。それとも、お母様何ていらない?私とだけがいい?お兄様、だぁーいすき。ぎゅー」


 っと捕まったら最後一生離れられない抱擁を食らうことに成るかもしれない。


 ドロシー先生も.........


「ゾーイ、やっぱりゾーイは私だけのもの。他のゴミ虫に何てもう二度と触らせない。私だけのゾーイ、今日からずっとわたしと一緒。ねぇエッチしちゃう?それとも、エッチしちゃおっか?」


 と僕の精魂尽き果てるまでプレイすることに成るだろう。


 聖女様は.........


「やはりあのバカエルフがいる学園に何て任せられないと思ったのです。もうあなたを手放すことなんてしません。ずぅっと私と一緒です。お互いを癒し合い《もとめあい》ましょう?きっとものすごく気持ちいいはずですから。この先ずっとあなたと共に」


 とあの完璧すぎる程の笑顔できっとそういうはずだ。


 みんなのそれぞれの言うことがありありと想像できるほどだ。


 ..........................あれ?もしかして僕って元の国に戻ったら学園を辞めさせられて家か聖女様のところかドロシー先生のところで一生を過ごすことに成るかも?


 これから先、家をシュヴィに任せて旅をして色々なところでフリーハグをしてつらい人とか出会いのない人を勇気づけたいと考えていた僕の未来が破綻する?


 もしかして聖王国こっちにいた方が安全なのか?

 

 あぁ、これからどうしよう。



 





  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る