第3話 計画

 ドロシー先生の講義の次の日。


 朝早く目が覚めて早々.....


「お兄様、朝のギューして」

「はいはい」


 妹がいつの間にか僕の部屋に忍び込んで、ベッドの中に入っているのなんてもう慣れたものだ。


 偶に母様も一緒になって入ってくるときさえあるからな。


「そろそろ良い?」

「ダメ。まだ足りない。ぎゅー!!」


 シュヴィは本当に甘えん坊さんだな。もう11歳なのだからそろそろ甘えん坊は卒業かなって思ってたんだけれどまだまだダメみたいだ。


 シュヴィに抱き着かれるままそのままでいると.....


「ゾーイ様、おはようございます。.....ってシュヴィ様。またいるんですね」

「おはよ、アリス」

「おはようございます、ゾーイ様。ゾーイ様は朝が早いですね。私が毎朝起こすまでもないようですし」

「アリスはもう少し寝ていても良いんだよ?」

「私はゾーイ様に尽くすことが生きがいなのでその生きがいをなるべく減らさないで欲しいものです。ですので、ゾーイ様こそもっと寝ててくださっても良いんですよ?」


 事あるごとに主人を堕落させようとしてくるこの子は僕の専属メイドであるアリス。


 髪は白、というよりはベージュに近い色をしていて、肩まで伸びた髪はよく手入れされているなと感じる。


 アリスは僕よりも年が低いけれど、しっかり者で助けられることが多々ある。その度に何故か至福のような顔をしているのは気にしないでおこう。 


 彼女が何故僕専用のメイド(従者)になったのかという話は簡単に説明すると彼女が元奴隷でぼくが買い取ったというだけ。


 詳しいことはまた別の時に。


「シュヴィだけじゃなくて、アリスも来る?」

「.........とても魅力的な提案ですが.........」

「ほら、おいで?」

「魅力的な提案なので乗らせていただきますね!」

「むぅ、お兄様のばかぁ」


 シュヴィは頬を膨らませて抗議してくるけれど、ごめんね。アリスにだけしないのは良くないなって思うから。


「やはりゾーイ様のハグはものすごく落ち着きます。このハグが私の精神安定剤となっています。給料何て要りませんから、ゾーイ様のハグを独り占めできる券を下さいませんか?」

「それは、多分、色々な人から抗議されると思うよ?」

「お兄様のハグを独り占めなんてさせない。私がしたいくらいだから」


 僕のハグは大人気だからなぁー。独り占めなんてしたら母様、ドロシー先生、聖女様とかも名乗りを上げそう。


 その他にも僕のハグを求めてくれる人はいるからね。


 このハグをもっと有効活用したいと考えている案はあるけれど、15歳になるまでは難しい。


 まず、この国の男性の扱いはというと女神さまが言っていた通りそれはもう優遇されまくっている。甘やかされて育った男性はブクブクと太って横暴になり自分が王様であると勘違いをするほどだ。


 顏が良かったり高い魔法適性があったりする優秀な男性は、国がその家族に多大なお金を出して5歳の時に宮中に入って育てられる。


 僕も国からの要請で宮中に入ることに成ったが母様が猛反対して、ゾーイちゃんを宮中に入れるのなら爵位何て捨てますと言い切るくらいだった。


 普通の男性は心底大事に育てられ、中々家から出ない。中には稀にお金を稼いだりするために男娼をしている人もいる。致し方なくしている人も中にはいるけれど。


 国の運営はもちろん女性が主体となって動いている。男性の果たす役目は国への精子の提供位なもので他にはあまりない。


 昔は最低10人と結婚をしなければいけないという法律も作って出した時もあったようだけれど、帝国や神聖国、他の小国に男性が逃げてしまって王国が滅びそうになったことがあったので、その義務はなくなっている。


 他国ではどうかと言うと神聖国という国は男性を神からの使徒だと考えていて、帝国とかは男性を一種ペットのような感じで扱っているところもあるが大抵の場合、男性は優遇されている。獣人の国とかエルフ国はどうなっているか知らないけれど。


 まぁ、その話は一旦置いておこう。


 それでハグをどう活用するか、という話になるわけだけれど僕は前世で言うところのフリーハグというものを考えている。


 前世では駅前とか人通りの多い場所で「FREEHUGS」というボードを持って立つというものだ。


 これをすれば、この世界にいる女性の人たちに癒しを与えることが出来るのではないかと思うのだ。


 仕事で疲れて死にそうな人、とか人生に疲れてしまった人とか何か悩みがある人、不安な人、この先生きていくことが辛い人。単純に男の人と少しでもいいから触れ合いたい人。


 そんな人たちに少しでも何か与えられるんじゃないか。


 そう思って前々から計画はしているのだけれど、母様やシュヴィ、その他の人たちも僕を止めようとしてくるだろうと思って、中々行動に移せないでいる。


「どうしましたか?ゾーイ様」

「ん?あぁ、いや何でもないから大丈夫だよ」


 でも十五歳になったら僕は世界有数の王国内にある学園へと通うと心の中で決めている。


 まあでも、母様に学校へ行くという許可と学校内と王都でフリーハグをしても良いか許可を取るという最難関ミッションがあるけれど。


 母様はきっとこの家から出さずにずっと僕を可愛がりたいみたいだけれど、僕はせっかくこんな力を神様から貰ったのだから、この世界の人に還元していかなければならないと思うからごめん。


「ゾーイ様、名残惜しいですが今日は聖女様の授業がありますのでそろそろ起きて支度をしなければなりません」

「むぅ、良いじゃないちょっとくらい休んだって。聖女様なんかよりお兄様の方がすごい素質や才能があるんだから」

「シュヴィ、そういうこと言ったらダメだよ。聖女様は忙しい中教えに来てくれているんだから」

「忙しい人は暇さえあればこの家に来てお兄様の近くにはいないと思う」

「そ、それは.........あはは」


 ドロシー先生と同じで聖女様も講義がない日でもしょっちゅうこの屋敷に来ている。


 忙しいと思うんだけれどなぁ。

 

  




 

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