生け贄2


 ――無数の死体に矢――


 俺は情報を頭に叩き込みながら「他には?」とアカリに問う。


「わ、分かりません。薄暗くて丁度死体がある場所が明るくてドアがあって……ちょっと行ってみます」


 ドアを押し、アカリが姿を消す。足音を聞こうとするも二人が煩く聞こえず、やれやれ、と凭れ待っているとコツコツコツコツと足音に俺はドアを見る。

 勢いよくドアが開き、ハァハァ……と息を切らすアカリの姿。綺麗な肌には赤い血。怪我をしたのかと思い「大丈夫か」と声かけると「はい、死体の血が飛んだだけです」の言葉に安堵する。


「此処、もしかしたらかもです。死体の場所に足を運んだら何処からか矢が飛んできて……ギリギリ当たらず逃げてきたのですが刺さる場所が一定の高さなので頭下げたらどうにか行けそうです」


「罠、だらけか。まるで俺達を殺しに来てるような感じだな」


「あの、もう一回行ってきてもいいですか?」


「あぁ、無理するなよ」


 その後、アカリが戻ってくると死体を目印に危険な場所を伝えてくれた。

 バックヤードの先はショッピングモールでそこには数えきれないほどの死体が絨毯のようにあると――。


「地図とかなかったか?」


「すみません。なくて……でも、紙とペンがあれば簡単なマップ描けます、多分」


「そうか、紙とペンか。そこの煩い二人なにか持ってるか?」


 ギャンギャン騒いでる男女に声かけると「無いわよ」と女は言う。だが、「僕はあるよ。使えるか分からないけどタブレット」と文字書き、絵描きなのかタッチペント共にアカリに渡す。


「こ、これで描けるはず」


「ありがとうございます」


 アカリは雑ながらも可愛い地図を描き、俺達に見せる。彼女が分かるのはバックヤードとショッピングモールの一部の図。彼女曰く「上手く地図が見つかれば逃げ道が分かるかも」と言うが、罠だらけとなると話が違う。


「私もう一度――」


 と、明るく言ったが“それ”が彼女アカリの最期だった。


         *


 何分、何時間待っても帰ってこない。牢が開かないと言うことは生きている、と考えていいのだろうか。

 喧嘩した二人は黙り「帰ってこないわね」と高貴な女が言うとギィ……と弱そうな男の牢が開いた。


「……死んだのか。罪もない優しい子が」


 俺は牢から出られないかと何度も柵に蹴りを放つ。黙ってみてろ、と笑われている気がしてならなかった。


「ぼ、ぼ、ぼ、僕!?」


「そうよ、早く行きなさいよ!!」


 また始まる喧嘩。


「嫌だ、死にたくない」


「男でしょ、シャキッとしなさい!!」


 飛び交う暴言と説教。


「うぅ……分かった。行ってくるよ」


 そうひ弱な男が自信なさげに言うやドアを開けると――。


「あ、あの、タブレットがある!!」


 慌てて戻ってきた男は画面を点けや目を遠し「これ」と俺に差し出す。メモ機能に罠の場所や可愛さあるザックリとしたイラストが描かれていた。

 どうやら此処は“豪華客船”のようで何層もあるらしい。彼女ので分かるのはショッピングモール、カジノ、客室、デッキ、など簡易的な地図を見つけたのだろう。詳しくは描かれてないが十分な情報だった。


「ん、これは?」


 その他に無いのかとアルバム機能を開くと複数枚の死体の写真。これは罠の場所なのだろうか、死体が山のように積み重なっていた。

 そして、アカリの物ではない男物の誰あの靴。真っ赤に染まり、死体を踏みつけたのか内蔵が絡み付いた不快なビジネスシューズ。揉み合ったのか、誰かがいることを残したかったのだろう。写真はブレていた。


「な、なんかあったかい?」


 弱そうな男が話を切り出す。


「あぁ、誰かいるらしい」


「ひぇっ僕は平和主義だ。た、戦うなんて出来ないぞ!!」


「待て、敵かは分からない。もし生存者だったら話はガラリと変わる。とりあえず“タブレット”頼りに進んで見てくれ。くれぐれも慌てず冷静にな」

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