入隊
少し肌寒い中私は目を覚ます。
朝日が空間を白縹色に染め、空中の埃を照らし、教会に雪を降らせた。
とても美しかった。
なるべく音を立てないように、左足からベッドを降りる。
私がこのベッドを使うのは最期だろう。
悲しそうにギシリと鳴くベッドを優しく撫でる。
梯子を降り、朝食を用意しているシスターに話かける。
「シスター、私は少年兵に志願します。」
「危険すぎるわ。それに女子は戦闘出来ないのよ。」
シスターは私の手を握り言った。
目には不安の色が浮かび、手が震えていた。
私は手を握り返し、落ち着いた声で言う。
「私は祖国を失うのが怖いのです。それに私はもうすぐここを出て行かなければならない。」
「あと一年はいられるじゃない。」
「私が出て行けば、子ども達の空腹が満たされるし、丁度良い機会なのです。」
私は目を見つめて言った。
シスターは私を抱きしめた。
「神の御加護があらんことを。」
シスターはそう言って、朝食の用意を再開した。
私はテーブルに皿を並べた。
シスターは朝食を用意し終えると同時に、子ども達を起こす。
目を擦る子ども達は芳しい香りに大喜びした。
食卓にはパン、チーズ、焼き目の付いたベーコンが並んでいた。
チーズとベーコンを食べるのは2ヶ月ぶりだった。
子ども達は久しぶりのご馳走を一口で食べようとして、冬眠前のリスのようだった。
朝食が食べ終わり、食器を片付けるとシスターが子ども達を集めた。
「クリスティーナとは今日でお別れしなくちゃいけないの。」
子ども達は驚いていた。
泣き出したり、拗ねたり、色んな反応をした。
「ごめんね。私兵隊さんになるんだ。」
金髪の少年とダークブラウンの目の少年は、私に抱き付いた。
私はしゃがんで二人を抱き締めた。
泣いているお下げの少女をあやし、頭を撫でる。
街では酔い潰れた人々が寝ていた。
皆と一緒に食べる最後の昼食は、悲しくも優しい味がした。
少ない荷物をまとめ、振り返る。
子ども達はまた泣いていたが、シスターは笑顔で手を振っていた。
「元気でね。またいつか会える日まで。」
私は手を振り教会を後にした。
教会から2㎞の軍部に行き、私は少年兵になった。
身体検査の後、軍服が支給された。
黄土色のようなカーキの軍服に袖を通す。
イギリス国民の団結力ほど硬く、国を守る使命ほど重いものだった。
翌日から他の志願者と共に訓練が始まった。
銃の扱い方、分解、階級、模擬戦闘等多岐に渡った。
女と馬鹿にされながらも、必死で食らいつき訓練し続けた。
入隊から約1ヶ月、講義室に全員が集められた。
「ただ今より、想像を絶する作戦について説明する。」
教官は黒板に作戦を書きながら説明した。
ソビエト連邦のヨーロッパ赤化を恐れたチャーチル首相と、軍部はフランス共和国とアメリカ合衆国に協力を要請し、東欧をソビエト連邦から守るため、戦争を起こす。
7月1日午前にソビエト連邦に宣戦布告後、ドレスデン地域から進軍し、オーデル・ナイセ線で交戦。
想像を絶する作戦には軍人が足りないため、少年兵を大量に投入することになった。
少年兵達は訳も分からぬまま、ドレスデン地域へと派遣された。
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