第5話 マスカラの場合

マスカラは、擬人化した化粧品の中で、最年長で、執事のような格好をしている

葉月「マスカラさんは、落ち着いた雰囲気がありますね」

マスカラ「そうですか。私ももう、良い大人ですし、擬人化した化粧品の中では、最年長なので、落ち着いて見えるんですよ」

葉月は、マスカラが、最年長ということだけで、落ち着いているとは思わなかった

マスカラ「葉月様。紅茶でも飲まれませんか?私が入れますよ」

葉月「紅茶ですか?」

マスカラ「はい。お疲れの葉月様に、リラックスできる紅茶を入れて差し上げますよ」

葉月「リラックス効果?」

マスカラ「飲むことで、よく眠れるようになりますよ。近頃、よく眠れていなかったみたいですので」

葉月「知っているんですか?」

マスカラ「僭越ながら、存じ上げております」

葉月「マスカラさんといると、やっぱり落ち着きますね。まだ、数分しか一緒にいないのにですけど」

マスカラ「ありがとうございます。葉月様に、そう言われるのは、嬉しいです」

葉月は、マスカラが入れてくれた紅茶を飲む

葉月「すごい、おいしいです」

マスカラは、微笑んで言った

マスカラ「良かったです」

マスカラは、その人の目的別に使い分けるアイメイクの化粧品である。

「ボリューム」あるものから、「ロング」、「カール」など、ブラシやコームの形状も様々だ

マスカラ「私は、葉月様のまつげを上げる役割をしております。でも、無理にマスカラを毎日使わなくても良いと思っております。私は、葉月様が、毎日頑張っていらっしゃることを知っていますから」

葉月「でも、マスカラを使わないと目力がアップしません。がっつり塗るわけではないにしても、私にとって必要な化粧品ですよ」

マスカラ「そう言っていただけるのは、本当にありがたいことです。ですが、無理はしないでください」

葉月「大丈夫です。無理なんてしていませんよ」

マスカラ「私の願いは、葉月様がお疲れモードではない、本来の自分を取り戻してもらうことです。そのためなら、何だってします。私達の存在が、あなたを少しでも癒せるなら、それよりも嬉しいことなどございません」

葉月「ありがとうございます。そんなこと言ってもらったのは初めてです」

マスカラは、見た目の格好だけではなく、言動もジェントルマンだった。マスカラと過ごした時間は、間違いなく葉月に癒しを与えたのであった

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