第22話 邪神教の本拠地は
カレーをあっという間に食い尽くした俺達は、ソファーに座って駄弁っていた。
「ああああ……体が痛いぃぃぃ……」
「そんな状態なのに掃除もご飯もしてくれてありがとうございます……」
「まぁ俺もここに居候させてもらってる身だし、これくらい平気平気」
嘘です。
めちゃくちゃ痛いです。
もう体が千切れそうなほどの激痛が俺の全身を走り回っております。
でも少しは美少女の前で格好つけたいじゃん?
俺も一端の男なわけだし。
まぁ美少女の家に居候している時点で男としてどうなのかと問われれば情け無いと言われるかもしれないけど。
「レオンさん……そう何度も美少女と連呼されるのは恥ずかしいと言いますか……」
「俺はそんなこと1ミリも言っていません。それは全部シンシア様の幻聴でしょう」
言ってないのは嘘じゃないもんね。
まぁ幻聴というのはただの嘘だけど。
だがそんな見え透いた嘘を純粋なシンシア様は結構信じているらしく、『今度また教会に行ったほうがいいのでしょうか……』と真剣に考えている。
ピュアピュアすぎるよ。
今時その歳でそんなにピュアな人はいないと言っても過言じゃない。
我がエンジェル達もここまでピュアピュアじゃないぞ。
俺がそんなことを思っていると、この家の玄関のドアが叩かれる。
「ん? シンシア様、誰かと遊ぶ約束でもしてるのか?」
「私に友達がいると思っているのですか?」
「? いるじゃないか、俺が」
「ひゃっ、あ、そ、そうですね。…………私達友達だったんだ……とても嬉しいです!」
「お、おう、それはよかったな……」
いやぁ……よかったぁ……。
もしこれで『いえ、私とレオンさんは友達ではありませんよ』とか言われてたら俺は一生外に出なくなってたかもしれない。
ん? じゃあ一体誰が来たんだ?
「すいません。ちょっと出てきますね」
そう言って玄関に向かうシンシア様。
扉を開けたシンシア様は、フードを被った男と思わしき人と何かを話している。
俺ほどのものになると聴力を強化することもできるが、別に大して興味もないのでスルー。
もしかしたらまた面倒なことに巻き込まれるかもしれないからな!
もう俺は居候先を見つけたからこれから自堕落な生活を送るんだ!
そんな決意をしている俺にフードの男との話を終えたシンシア様が話しかけてきた。
「レオンさん、邪神教徒の尋問結果が出ましたよ」
「………どうだった?」
もう嫌な予感しかしないんだが。
嫌だよ、動きたくないよ?
これ以上動いたら俺過労で死んじゃうよ!
頼む神様! どうかあそこが本拠地であってくれ!
そしたら俺も女神教に入るのもやぶさかではないから!
だがそんな俺の希望など呆気なく破壊される。
「やはりあそこは小さな支部でしかなかったそうですよ。本拠地はまた別の場所にあるらしいです」
「ですよね~~俺わかってましたぁ~~」
クソ使えん女神がああああ!!
分かっていたよ、神なんて1ミリも使えないことが!
やっぱりお前は俺の敵だ!
いつか絶対ぶっ潰してやる!
「そ、それで、本拠地は何処だったんだ?」
「心との温度差が激しいですね……。えっと、本拠地は——」
「……やっぱり聞かないでおこうかな? うん、もう怒りは治まってるし」
「い、いやですが……場所が場所でして……」
言いにくそうに縮こまるシンシア様を見て俺は確信する。
あっ、これ絶対に巻き込まれてるやつや……と。
「場所が———ドラゴンロード領です」
「———よぉし、今すぐぶっ潰しに行こうか!」
こうして俺の次の予定が決まった。
最悪だよコンチクショウが。
<><><>
「はぁ……結局また来てしまった……。やっぱり帰ろうかなぁ……」
「もう遅いですよレオンさん。それに私たちは25人で来てるんですから」
「ぐっ……それはそうだけどさぁ……」
それでも嫌なものは嫌なんだよな。
あの頑固親父にバレたらマジで無理やり連れて帰らされそうだし。
まぁ俺がそんなことをグダグダ言ってもシンシア様の言う通り今更遅いんだけど。
俺達は邪神教を撲滅するため、一騎当千からはシンシア様が、そして主に国内の治安維持のための騎士団、『守護団』の中から選りすぐりの23人が派遣された。
ん? 俺?
俺は謎の人物Aとして本拠地までの案内役を務める。
一応ここの領出身だからね。
「シンシア様! 自分の発言が烏滸がましいことだと分かっておりますが、いいでしょうか?」
そう言う顔以外を鎧で固めた30代ほどの男。
「どうしたのですか?」
「……この男は本当に信用してもよろしいのでしょうか?」
俺を見て眉を潜める男。
めちゃくちゃ疑ってますやん。
まぁフード被ってて顔も見えないからそうなる気持ちもわかるけどさ。
でもそんな嫌そうな顔しなくてもいいじゃんか。
ほっといてくれよ。
「彼は私が信頼している人で、と、友達ですので大丈夫です」
少し友達の所で頬を赤らめるシンシア様。
うーん可愛い。
そう思ったのは俺だけではないらしく、眉を顰めていた男もポーッとシンシア様に視線が固定されている。
と言うか男の殆どがそうなっている。
そしてそんな男を白い目で見ている女騎士数名。
うーんなんて面白い空間。
シンシア様はキョトンとしてるし、未だ男達は視線が固定されたままだし、女騎士はとうとう近くの男を蹴り出した。
いやぁ~こんな面白い騎士団があるとは。
俺が心の中では爆笑していると、シンシア様がジト目で俺を睨みつけてきたので、身振り手振りで誤魔化す。
そうだった、シンシア様は心を読めるんだったな。
俺は少し気を引き締めて心なし顔もキリッとさせて全員に声をかける。
「い、今から本拠地へと案内する! 少しスピードを上げるからついて来てくれ!」
俺はそれだけ言うと、カレン達と冒険していた時の半分くらい———約60km———で走り出す。
それにシンシア様は余裕でついて来ており、あの発言した男も特に苦しくはなさそうだ。
まぁそれ以外の騎士達は結構息が荒れてるけど。
うーん、この騎士団は体力が無いのかなぁ?
もしこれくらいで疲れてたら普通に騎士団で怒られたりしないのか?
「この騎士団は治安維持が主なので比較的戦闘の少ない騎士団なのです」
「それにしては体力無さすぎない?」
「ま、まぁ、そうですけど……」
俺とシンシア様は後ろを振り向いて息が荒れている団員達を見て苦情をこぼした。
その時発言した男が申し訳なさそうな顔をしていたのは言うまでも無い。
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