第6話 俺って昔結構理不尽な目に遭わされてたよな

「―――……やっと終わったぁ……」


 俺は洞窟の入り口で大の字に寝転ぶ。

 俺の体は半年振りの過激な運動により筋肉痛で悲鳴を上げまくっている。


 俺は引きこもりだって言ってるのに外でこんなに動くとか何? 

 拷問ですかね、死んじゃうよ? 

 主に俺の精神力がさ。

 それに引きこもりは太陽の光を浴びると吸血鬼のように灰になるんだよ。

 日々大して明るくない部屋に篭っているからさ。

 ―――決めた、もう絶対ここから出ない。


 洞窟は太陽の光が反射するほど光り輝いており、先ほどの臭いや血も完全に消失している。

 地面も壁も天井もまるで加工した水晶ですかってほどツルツルだしピカピカだ。

 俺はそんな洞窟を見て思った。


 ……少しやりすぎたかもしれん。

 だってこんなキラキラ光ってたら目がチカチカするもん。

 正直言って俺の部屋より綺麗だもんな。外のくせに。

 これじゃ寝れんがな。


 そんな無駄に綺麗にしたせいで既に外は日が傾いており、どれだけ時間がかかったが分かる。


 いや俺始めたの朝なんだけど、いつの間にか夕方か……。

 これは誰のせいだ? 

 俺のせいか?

 俺が黒竜と戦ったからか?

 それとも洞窟をツルツルにしすぎたせいなのか? 

 今洞窟はそこらの貴族の家でも見ないくらいに綺麗になっているけどさ。

 やっぱりそうなのか? 

 ………………どう考えても俺のせいだな。

 なら自分が悪うござんしたね、ごめんなさい!


「……はぁ、誰に謝っているんだか。……よし、取り敢えず洞窟の中で一眠りしよう……眠いし疲れたしもうやる気も起きん」


 俺はふらふらと立ち上がって洞窟に戻る。

 洞窟の中は年中そこまで気温が変わらず涼しい。

 まぁ自分の部屋が1番快適なんだけどね。


 はぁ……部屋ごと持ってくるんだったなぁ……まぁ無理なんだけどさ。

 せめてずっと極楽亭に泊まれてたらどんなに楽だったか。

 しかも毎日可愛い看板娘たちに絡まれるとか……最高かよ。

 もうあの2人のどちらかに俺を婿にしてくれないかな?

 だって2人ともしっかりしてるしなんだかんだ言って養ってくれそう。


 なんで思うが今の俺は森の中。

 美少女どころか人すらいない。

 周りには低級モンスターの気配がするが、俺に近づこうとはしていない。

 要は俺は自然の森のはずなのに完全に孤立していると言うことか。

 

 だが待てよ……もしかして俺は今引きこもりと言えるのではないだろうか。

 だって俺は今森の洞窟で寝泊まりしようとしている。

 そして森にいれば働くことなど不要!

 完璧だ……素晴らしいぞ……さすが俺だ。

 いやありがとう森!

 ついでに黒竜!

 お前のお陰でここ何ヶ月かは狩りなんてしなくても良くなったぜ!

 これで安心して引きこもれる!


 俺はここに来た時とは違い、力強い歩みで洞窟に入り、空間魔法から取り出したベットに寝転んだ。


「よし、おやすみ! また2日後に起きよう! ―――ぐがぁ……」


 ―――それから本当に2日間眠った。






<><><>






 俺はくらい洞窟で目を覚まして一言。


「―――おぇ……気持ち悪い…………寝過ぎた……」


 ベットの隣の机に置いていた時計を見ると本当に2日経っている。

 

 通りで気持ち悪いわけだ。

 だっていくらなんでも寝過ぎたもん。

 人間って疲れすぎたら気絶じゃなくても2日も寝れるんだな。

 クソどうでもいい情報だけど。


 俺はもう少しダラダラとしていたかったが、お腹が思いっきりなったので起きることにした。

 しかしここで新たな問題を発見した。


「…………火がねぇ」


 そう、ドラゴンの肉を焼くための火がないのだ。

 いつもはメイドに作ってもらっていたり、自分で自炊したりしていたのだが、それは家に魔導コンロでしている。

 しかし自然に魔導コンロなどある訳もなく……。


「……………探しに行かないといけないのか……コンチクショウが……」


 乾燥した木の棒や葉を探さないといけない。

 俺は気持ち悪さを我慢しながら乾燥しているものを一瞬で見分けて採取していく。

 学園時代はずっとこれをしていたから今ではパッと見ただけで見分けられるようになった。


 こんないらないスキルを手に入れたのは昔は全部俺の当番だっからなんだよな……。

 俺が学園時代の頃は、親友の中で1番料理が上手かったから何故だが任されてた。


 いやおかしいよね。

 なんで俺が作るのにその前の火の調達までしないといけないんだよ。

 それをみんなに言ったら、またカレンに冷たく言われたよ。

『あんた全く戦闘してないんだからやりなさい。これくらい出来るでしょ? だって体力は全然使ってないものね?』ってね。


 いや俺は体力雑魚だから付いてくだけで疲れるんだよ。

 だってこいつら普通に時速6、70km位で移動するからな?

 しかも俺は戦闘に参加しないからハンナを背負わないといけなかったし。

 まぁハンナを背負ってたらデカいお胸が密着するからめちゃくちゃ良かったけどさ。


 でもそれとこれは別なんだ。

 だからその日のご飯はハンナ以外の全員にゲロまずソースをかけた生焼け肉を食わせてやったぜ!

 まぁその後あまりの不味さに俺はボコボコにされて、みんなはお腹痛くなって依頼失敗になったけどな!


 あの時はマジで殺されそうになった。

 主にカレンに。

 いやカレンにみんなよりも更にまずいソースをかけたのがいけなかった。

 マジで容赦なく顔面ボコボコにされた。


 いや俺って貴族のはずなんだけどね。

 しかも公爵家だよ?

 それを言っても『そんなのアンタのお父さんに許可貰ってるからいいのよ』って論破されて更にフルボッコにされたよ。

 本当にカレン理不尽。

 あれが美少女じゃなかったら絶対に許してないね。

 

 と言うか俺ってカレンに理不尽なことしかされてなくない?

 まぁ俺がいじるのもいけないんだろうけど。

 でも昔は楽しかったなぁ……みんなとわいわいするのもさ。


 俺は昔のことを少し懐かしく思いながら1人枝を拾った。






「なるほど……ここが例の目撃情報があった場所ですか……」


 森のすぐ外側にはシンシアとブラウンの姿があった。

 どうやら調査に来たようだ。


「シンシア嬢よ、これからは警戒しながら向かおう」

「勿論です。もしかしたらドラゴンがいるかもしれないですから」


 2人は腰の剣に手を添えながら慎重に森の中に入っていった。





 ―――レオンとシンシアが出会ってしまい、レオンが絶望するまで後30分。

 


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