第4話 野宿しなければならなくなりました
どうも、僅か1日で宿を追い出されたニート兼引きこもりです。
いやまぁ実際は引きこもりとは言えなくなってきているけどね。
昨日は外にいる時間がなんと6時間もあったからな!
まぁそんなことは置いておいて。
取り敢えず新たに泊まる宿を探さないといけなくなったんだが……
「あの……ここに泊まらせて欲しいのですが……」
「お名前は?」
「レオンハルトです」
「ごめんなさいね。この宿は名前にレオンハルトがつくお客さんは入れられないの」
「ただの嫌がらせやないかい!」
まず1件目ではこんな事を言われ。
「あの……ここに泊まらせて欲しいのですが……」
「お名前は?」
「レオン———」
「あ、ごめんなさい。この宿はレオンがついた時点で止めることができないの」
「それは俺以外にも被害が出ると思うよ多分!?」
2件目では名前を最後まで言い終わる事なく追い出され。
「あの……ここに泊まらせて欲しいのですが……」
「ごめんなさい。貴方の顔だとここには泊めることができないの」
「いやなんで俺の顔が出回ってるんだよ!」
3件目では俺の精巧な似顔絵を突きつけられて追い出された。
よし、鬱だ。死のう。
なんて一瞬思ったが、俺はまだ童貞すら捨ててないひよっこ。
こんなところで死ぬわけにはいかないのさ!
と言うことで最終手段を取ることにした。
俺はある事にお金を全部使い、意気消沈しながら街を出る。
「まさかこの街全ての宿屋に泊めてもらえないことがあるなんてな……」
俺は
うん、もう泣きそうになったね。
だって最後ら辺なんて入ろうとしたら入るなって言われたもん。
余りにも酷くない?
一応貴族だったんだけどね、俺。
まぁ親父が十中八九何かしたんだろうけどな。
だがもうそれはいいんだ。
と言うかもうこれ以上考えたら本気で泣けてくるからやめておく。
これから俺が行こうとしているのは、この街の近くにある森だ。
この森は食べられる弱いモンスターが沢山おり、虫なども少ないため野宿にはもってこいな場所だ。
しかしそれにしても暑いな……。
引きこもり生活ではそんな事感じなくて良かったのに……。
今は8月で1年の中で最も暑い時期だ。
太陽も俺を焼き殺さんとばかりに燦々と照り付けてくる。
俺は汗を拭いながら歩く。
いや始めは馬車を借りようと思ったんだよ?
でもここでも親父が邪魔しやがった。
馬車を借りようと店に行ったら、
『今18歳以下の人には馬車を貸さない様にしているんだ。だからほら、帰った帰った』
とにべもなく断られた。
もうあの街嫌いだよ。
いくら俺が家を出たからってやり過ぎだろ。
何度も言うが一応俺は貴族だったんだぞ?
なんで俺に貸さないどころかあんなに無礼な態度を取れるのかな?
考えれば考えるだけグロッキーになっていく。
引きこもりがこんな時に外を歩いていいと思っているのだろうか。
いいのかもしれないが俺にとっては良くないんだよ!!
くそッ……絶対に可愛くて優しくてお金持ちの俺をお婿として迎えてくれる女の子を見つけてやるからなっ!
俺はそう改めて決意し、トボトボと森に向かった。
~~~~~
「や、やっと着いた……もう無理、死ぬ……」
街を出て1時間半。
真夏の太陽に殺されそうになりながらも、何とか目的地の森まで到着した。
いや本当に死んでしまう。
暑すぎるし喉乾くし水が一瞬でなくなるしで大変だった。
もうここまできたら絶対に街に戻りたくないね。
だって帰るのも疲れるもん。
そのために色々な物を買ってきたんだからな!
俺は森の比較的浅い場所まで行くと、近くに洞窟がないか探す。
洞窟は雨風を避けれるし、崩れる心配も少ないため、長時間の野宿をするにはもってこいな場所だ。
まぁすぐには見つからないとは思うけどな。
「———なーんて思っていたけど案外すぐにあるもんなんだなぁ……」
俺は目の前にある結構大きめな洞窟を見ながらそう溢した。
いや本当にすぐに見つかったんだ。
なんなら5分くらいでさ。
もしかしたらモンスターが住んでいるかもしれないけど。
まぁ、その時は全員追い出せば問題ないか。
なんか自分がされたことをしようとしているからか物凄く罪悪感を感じるがね。
しかし俺は出来るだけ快適な野宿がしたいわけで……そのためにはモンスターにはどっか言ってもらわないと困るんだよねぇ。
よし、それじゃあ物凄く、物凄ぉぉぉぉく面倒だがこの一帯のモンスターの排除といきますかね。
俺はぶんぶんと腕を回して準備体操をする。
「ふっ……ふっ……よし、じゃあ———お邪魔しまぁぁす……」
俺は意気揚々と一歩歩き、それ以降はビクビクしながら洞窟へと入る。
勿論ビビってなんかないよ?
だってこれでも学園時代は何回もモンスターを倒したからね? 我が親友たちが。
おっと、情けないとか言うなよ。
俺はやむを得ない事情があったんだ。
そんな言い訳をしながらゆっくりと洞窟内を進んでいく。
この洞窟はとても涼しく、住むにはめちゃくちゃいい。
だが奥にいくにつれて寒くなってきたし暗くなってきた。
そして何より———
「何かの気配がするな……」
そう、先ほどから奥から何かの生物の気配がしているんだ。
まるで俺と共鳴しているかのように——ああ……何かめちゃくちゃ戻りたくなってきた……。
だって奥にいるの絶対に強いもん。
もうビンビンと感じるんだ……鳥肌立ってきたよ。
俺は腕を擦りながら進むと、とうとう気配の正体が分かった。
巨大な体に黒光りする鱗、強靭な顎はどんな物でも噛み砕けそうだ。
そしてここでは全く使えなさそうな体より大きな翼。
そいつは大きく叫ぶ。
「グルァァアアアアア!!」
「ご、ごめんなさぁぁい……すぐ帰りまぁす……」
俺はくるっと後ろを向いて帰ろうとする。
しかし——黒竜は俺を逃してくれなかった。
黒竜はドラゴンの中でも最上級に強く、この世界の冒険者のランクで言えば上から2番目のSS級がタイマンはって勝てるくらいの強さだ。
そんな化け物が俺の目の前にいる。
今にも俺に
「ガァアアア!!」
「ねぇそれはないと思うなぁ!? ———うわっ!?」
俺は咄嗟に地面に伏せて息吹を避ける。
しかし息吹はまるで生きているかのように向きを変えてまた俺の方へきた。
「ごめんなさいごめんなさい無理無理無理、これは卑怯だって! ひいぃぃぃぃ!!」
俺は叫びながら逃げる。
しかし俺が走るよりもブレスは圧倒的に速いわけで……。
「ふあっ!? ちょっ!? 待ってくださいよ!? ドラゴンなら知能高いだろ!? ——それは龍だったなチクショウ!!」
龍とは、人間が倒すことは不可能とされているドラゴンの上位種でもあり天災級モンスターで、人間以上の知能を持っているともされている。
ただその下位種であるドラゴンはごく一部を除いて知能が低い。
どうやら黒竜も知能が低いようだ。
ああ、クソめんどくさい!
こんなことなら別の場所にすればよかった!
大体なんでこんな低級モンスターしかいないところにドラゴンがいるんだよ!
アホか! こんなの出てきたら誰でも死ぬって!
俺は逃げながら考える。
このまま逃げ切ることは恐らく
だが今すぐ対処できる奴なんて居ないだろうからこれが街に現れたら……別にいいか。
アイツら俺に酷いことしやがったし。
俺は今日の朝から昼にかけてのことを思い出す。
どの店にも追い出され、挙げ句の果てには馬車すら買えず、こうして野宿する羽目になった。
……全部アイツらのせいじゃないか。
もうこのまま逃げようかなぁ……でもあそこには実家もあるし、もし実家がなくなったら可愛い弟と妹が悲しむだろうし……ああくそッ!
いつか絶対にお金をふんだくってやるからな!
俺は逃げるのをやめて黒竜の放った息吹へと飛び込んだ。
「初日からこんなの最悪だ……これだから野宿は嫌なんだ! お前は取り敢えず俺と可愛いマイエンジェル達のためにここで終わらせてもらうぞ!」
その数分後に洞窟から大絶叫が響いた。
その声に低級のモンスターは逃げ出す。
中級のモンスターでさえ自分の巣へと逃げ帰った。
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