津山 美穂

「………気持ち悪い…。」

 …………?珍しい人の声に僕は薄目を開ける。冷たいアスファルトの上。僕は座っていた。ここはずっと日陰だから冷たくて気持ちいいの。

「た、太陽って…こんなに辛かったっけ…?」

 太陽は痛いよぉ〜。すぐ焼いてくるんだもん。もし、僕が宇宙に行けるなら太陽くんに布を被せてあげたい。きっと世界中から称賛され……って、布じゃ太陽くんにすぐ焼かれちゃうか…。う〜ん……。

「目は痛いし…頭は痛いし……はぁ…。息は、すぐ上がるし…。」

 あれ…?でも今日ってそんな暑…あっ、やばい気がする…!

 お姉さん、ちょっと休憩していかない?僕は鳴いてみる。

「……あら。こんなところでどうしたの?」

 食いついた…!お願いっ!鳴って……!

「え…?」

 女の子は驚いて横を見る。電話ボックスからベルの音が鳴る。

「あれって……電話ボックス、よね?かかってくることなんて、あるのかしら?…君、何か知ってる?」

 僕は首を傾げる。さぁね。知らないよ。

 女の子は恐る恐る扉を開けると、中に入り、受話器を手に取った。リーンと大きな音が耳の奥で鳴る。

「もしもし…。津山つやま、です。」

『あぁ、美穂みほ?やぁっと繋がった。あなた、あなた。美穂に電話が繋がったわよ。』

『本当か!』

「母、さん…?」

 美穂ちゃんは目を見開く。

『なぁに、そんな驚いた声出して。誰からかかってきたか見たうえで出たんでしょう?』

 女の人は笑う。美穂ちゃんはホッとしたように笑った。

 もう大丈!?え…!

『……すごい音したけど大丈夫…?…美穂〜?………美穂、美穂!』

 僕の目には美穂ちゃんがゆっくり倒れていくのが映る。……いやだ。嫌だ嫌だ嫌だ…!

『美穂、美穂?』

 電話の奥からは美穂ちゃんのお母さんがずっと声を上げている。………大丈夫。呼吸は、してる。

「………春ノ宮公園。そこに、救急車を呼んでください。」

 僕は言った。

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