第3話 ねぇ、見てみて!ドラゴンだよ!お腹にタブレットがあるよ!すげぇ、ファンタジーに文明開花がやってきた!
優雅な空中散歩はおしまいを迎えた。
ふんわりと降り立ったのは、森の中だった。幸い、ひらけた場所だったから木の枝とかに引っかかることなく、無事に着地した。
(ふぅ、何とかなった)
安堵する私を他所に、ヒールはプスンと音を立てて黒煙の香りを放出させた。ありゃりゃ、これは修理が必要だな。
ドレスのポケットからドライバーなどを取り出し、近くにあったやや大きめな卵に腰をかけて、ヒールを修理することにした。
カチャカチャと直していると、どこからかピキピキという絶対にヒールからは出ない音が耳に入ってきた。
一旦中断して耳を澄ましてみる。私のお尻の下から聞こえてきた。腰をあげて見てみると、私が座っていた卵にヒビが入っていたのだ。どうやら、私が直している間に孵化させてしまったらしい。
あ、どうしよう。確か卵から生まれた子って一番最初に見る人をママだと思うんだっけ。やべぇ、育てられる自信がない。
どうにかこの場を去ろうとするが、そうはさせまいと言っているかのように一気にパカーンと割れた。
現れたのは、ドラゴンだった。恐ろしいイメージを想像していたが、ゆるキャラのように可愛らしく、クリンクリンしたお目々と小さな羽、私の半分以下ぐらいのフォルムが母性本能を掻き立てられた。
だけど、お腹が奇妙だった。なんというか、真っ黒で長方形のものがはめ込まれていたのだ。レンガでもない、石板でもない、何か黒いもの。
ジッと見ていると、その子は生まれてすぐに仁王立ちして、見つめ返してきた。
「はじめまして!僕はドモラと言います!よろしくお願いします!」
「きゃああああ!!」
叫ばずにはいられなかった。いきなり人間の言葉を話したのだ。なんだこいつ、もしかして絵本で読んだ魔物というものなのだろうか。だったら、対処しないと。
私はポケットからありったけの銃火器を取り出して、こいつに標準を合わせた。
ドモラという子どもドラゴンはそれを見るや、慌てたように「待ってください!怪しいものではございません!王妃様の命令でやってきたのです!」と、黒いものに触った。
すると、黒から急に明かりが灯り、そこに私のママンの顔が現れたのだ。何これ、一体どうなっているの。もしかして、食べられちゃった。
武器をしまって恐る恐る近づいてみると、お腹にいるママンが急に喋りはじめた。
「リヴル、驚かせてごめんなさい。この子はタブレットドラゴンといって、見ての通り死ぬほど便利な魔法の石板みたいなものが搭載されているドラゴンなの。あなたの発明は素晴らしいけど、この子といればさらに安全よ。仲良くしてね。それじゃあ、あなたの帰りを待っているわ」
一方的に喋った後、また元の黒い状態に変わった。見れば見るほど不思議なものだ。これは一体どういう原理で動いているのだろう。ちょっと解剖して調べてみたい。
そう思った時、ドモラは何かを察したのか、話題を切り替えるかのように「あっ!あれを見てください!」と指をさした。
その方を見ると、おったまびっくり。宙に浮かぶ四角い箱を見つけた。それは白黒で複雑な模様をしている。
「あれ、なに?」
「あれはQRブロックといって、ポインを稼げるものです!」
「ポイン?」
「この世界の通貨です!ご存知ないんですか?」
「いや、知らないけど」
「お金を知らないでよくお姫様やっていますね」
「うるさい」
なんかちょっと生意気になってきたこのドラゴンの口の中に、わさびでも入れてやろうと思ったが、どういう原理かポワンと煙を出していつの間にか手帳みたいな形になって私の手元にいた。
「ちょっと!何でこんな姿になっているの?!」
「そんなことより姫様!あれを読み取ってください!」
「読み取る?」
「僕のお腹をタッチしてください!」
「え?あ、はい」
言われた通りに触ると、今度は草花みたいなのが現れた。不思議なことに動かすと景色が変わる。これに似た--ん? ちょっと待って。
私はお腹にある景色と外の景色を見比べてみる。なんということだ。これって、今自分が見える景色を写し出しているのだ。しかもリアルタイムで。
「おぉ〜!すご〜!」
あっちこっち動かして楽しんでいると、ドモラが「あの、早く読み取っていただけないですかね?」と催促してきた。
なので、仕方なくそのブロックの方に向けると、いきなり『100ポイン獲得しました!』という文字が景色の中に現れた。もしかしてと思い、外の方も見たが文字がなかったので、この長方形の中しか表れないことが分かった。
「読み取ったけど、100ポインって何?」
「それが通貨です。それさえあれば、色々買えますよ」
手帳の姿のまま普通に会話できるドラゴンも驚きだが、金貨とか銀貨なしで物の売り買いができるのもびっくりだった。
でも、どうやって使うのだろう。
それを聞いてみると、ドモラはピョンと私の手元から離れ、元の姿に戻った。
「この先、美味しいカフェがあるのでそこに行きましょう!」
そう言って歩き出した。
(もしかして、カフェの勧誘をするためにやってきたのか?)
それも過ぎったが、空を飛んでいたせいか喉がありえないくらい乾いていたので、真相を確かめるべく、付いていくことにした。
が、彼が急に立ち止まった。
「どうしたの?」
聞いてみると、ドモラは正面を指をさしていた。
見てみると、そこにはフルーツのライムから手脚が生えたかのようま魔物がこっちに歩いていた。
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