第2話 お姫様、旅に出るよ。たぶん、長くなると思う。だって、そういうもんでしょ?
翌日、私のパパンとママンに呼び出された。きっと、間違いなくあの事だろう。
落ち着かないぐらい広い玉座の間に入る。そこには、無駄にでかくて豪華な玉座に座る国王パパンと王妃ママンがジッと私を見ていた。
「バーシー、ついさっき王国宛てにこんな手紙が来た」
パパンはそう言うと隣にいた衛兵から羊皮紙を受け取り、それを広げて声に出して読み始めた。
「『拝啓、スカイ王国へ。我、バラミはこの王子と婚姻する事にした。一週間後に挙式をあげる。来たいなら来い。豪華なご馳走様を用意して待っている。バラミより』」
私はこの内容に、はらわたが煮えくり返った。
挙式をあげるだぁ? ふざけるな! 人の夫を奪っておいて勝手に結婚して、しかも招待してあげるなど、どうかしている。
「パパン、ママン、私、助けにいきます」
私の決断に国王と王妃は顔を見合わせると、ウンと頷いた。
「気をつけるのよ」
王妃が両眼を拭う。これから過酷な旅に出る娘を送り出す両親の気持ちを考えると、一瞬やめようかなと思ってしまう。
だが、あいつの悪事をこのまま見過ごすわけにはいかない。私はハイヒールの踵をトントン鳴らした。
すると、踵が引っ込み、靴の裏面がジェット機のエンジンのように噴射される。
勢いそのまま天井を突き破り、空へと飛んだ。
実はこの靴、私の手作り。踵を鳴らすとこんな感じで空を飛ぶことができる。
これで行けば、帝国まで片道1分で着く。チェーン店の牛丼よりも早く王子様を助けられる。
そう期待を胸に大空を爆速で進む私だったが、さっきまでゴォーという火炎の音が段々弱まっていることに気づいた。
(あ、これ、まずいかも)
そう直感したのも束の間、音はピタリと止み、それと同時に私の身体が重くなり重力に引っ張られるような感覚がした。
落ちる。どんどん地面へと引き寄せられる。私は叫びながら昨日自分は試し運転をし過ぎて燃料を補充していない事を思い出し、昨日の自分を呪いまくった。
早くも私の旅は終わりを--迎える訳ないじゃない。
私の胸元に付いているリボンを押す。すると、ドレスの裾がパラシュートみたいに膨らんで、体勢を立て直し、まるで天から降りる女神のように優雅に落下していた。
ふふん、こんなこともあろうかと予め私のドレスに細工をしておいたのよ。さすが、私。天才ね。
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