助けてぇえええええ!!!お姫様ぁああああああああ!!!
三玉亞実
第1話 あぁ、なんて幸せなの……と、思いきや。なんじゃこりゃ。
目の前に世界で一番愛している人が目をつぶっている。
キス待ちだ。
ただのキスではない。誓いのキスだ。
私は今日、彼と結婚をするのだ。
あぁ、彼との出会いは確か両親からの紹介だったっけ。初めて顔を合わせた時、彼のハンサムな顔立ちと風になびく赤髪、瑠璃色の瞳が私の心にズキュンと刺さって--恋に落ちたの。
そこからの進展は思ったよりも早かった。国王夫妻のお誕生日会で一緒にダンスを踊ったり、森で散歩した時にギュッと抱きしめられたり--あははは、思い返すとたまんねぇな、おい。
プロポーズされた時は嬉しかったな。もう主人の帰りを待っていた犬のように舐め回したっけ。おでこに。
さてさて、振り返りはここまでにして。キッスタイムといきましょう。
この日のために一週間ぐらい私の大好きな家系ラーメン(麺バリバリ、ニンニクマシマシ、野菜モリモリ)を我慢して、ミント味のお菓子しか食べていない。
さぁ、彼の誓いに応えよう--と、私の唇を突き出そうとしたが、突如地面が揺れた。
騒ぎ出す来賓者。牧師も王子も戸惑っている。私はキスを邪魔してきた自然災害にありったけの舌打ちを投げた。
だが、それは神によるものではなかった。今度は天井がジャム瓶の蓋を開けるような感覚でパカっと開いたかと思えば、巨大な手が教会の屋根を持ち上げていたのだ。
身体は塔だった。石造りの塔が宙に浮かんでいる。私はこの非現実的な光景に夢だと思った。
でも、夢じゃなかった。だって、ありったけの力で頬をつねったら死ぬほど痛くてたまらないもの。
真っ赤になった頬を撫でていると、塔の窓らしき穴から誰かが出てきた。それは教会の床をぶち抜くほどの衝撃で、一瞬大砲でも撃ってきたのかと思い込んだが、全然爆風が来ないから違うと思った。
むしろもっとヤバイ奴だった。煙から現れたのは、身長三メートルは超えるほどの巨人。ビキニを着た筋肉ムキムキの乙女だった。
私はこいつが誰か知っていた。王国と敵対しているヲトメ帝国の皇帝、バラミだ。
奴は王子を見るや、「迎えにきた」と凛々しい声で王子の身体を抱きかかえた。
「ちょ、ちょっと待って!」
私はすぐに王子を取り返そうとした--が、皇帝の目の気迫に押されて動けなかった。
奴は気安く王子の顔にブチュウとキスをした後、ジャンプで塔へと帰り、それごと飛び去っていった。
あっという間の出来事だった。私が吹き抜けになった教会の空を見上げていると、ドタドタと王国の衛兵達がやってきた。
彼らは自分達の到着が遅すぎる事を悟ると、私と同様、どんどん曇っていく空を眺めていた。
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