第3話

俺は係長とバーに足を運び、カウンター席にお互い座った。


「お酒は飲めるっけ?」


「はい、多少は、ただ好きなのはないですね」


「そっか、じゃあ僕のおすすめ飲んでみる?」


「はい!」


「マスターいつものカクテル二つお願いね」


「分かりました、少々お待ちください」


バーテンダーさんが実際にシェイクをしている、棚にはいくつものワインが飾っており、西洋の雰囲気が自分には新鮮でどこか気持ちがざわつく。


「こういうところは初めて?」


「はい、自分は居酒屋とかなので」


この人はいつも落ち着いている。自分よりタバコが似合う人だ。


「落ち着いたい時とか、一息つきたい時とかはよくここに来るんだよね」


「なるほど、似合ってます、すごく」


「お待たせいたしました」


グラスが二つ、俺と係長のまえに差し出された


「ありがとう」

「ありがとうございます!」


「ゆっくりとお楽しみください」


「元気があるっていいよね」


「ええ、そうですか?」


「うん、」


「いやあ、どうかな」


飲みながら俺にそう呟く姿はどこか儚い雰囲気を纏っていた


「改めて君には色々ご迷惑をお掛けして申し訳なかった、すまない」

係長は俺に頭を下げた


「いえ、そんな顔を上げてください」


俺がそう言うと係長は顔を戻した


「すまないな、実は友達が会社を立ち上げるんだ」


「そうなんですか、それで転職を?」


「そう、これなんだけどね」

そう言うと俺にスマホでサイトを見せてくれた


「RESTARTっていう社名なんですね」


「そうこのようにプログラミングの人材育成をメインとしているんだ、まさにプログラミングの塾だね」


そこにはイメージ画像としてプログラミングを学んでいる生徒、指導してる講師が映し出されていた


「それで人手が足りないってことで電話が来たんだよ、来月ごろに店をオープンするんだけどね」


ここまで楽しそうな姿を見るのは初めてだ、いつも凛々しい姿だから新鮮さが増す。


「凄い、まるでドラマみたいです、」


「自分もびっくりしたよ、同じ学部の大学生で寝泊まりするくらいには仲良かったんだけど、しばらく疎遠になっててさ」


「それで急に連絡が?」


「うん急に会いたいってきてさ」


「怖くはなかったんですか?」


「え?」


「あいや、すみません」

俺はつい、よそよそしく答えてしまった


「いやまあ、マルチにはまってたらどうしようかとかそんなことは考えてはいたけど、だけど胸が躍るじゃない、久しぶりにあいつに会うんだって思うと」


そっか、この人は本気で信頼できる友達が居たんだな、俺には上辺の関係しか築けなかった、何もかも、利用することしか俺には


「それで、行きつけのカフェで集まったんだけど」




僕は久しぶりにあった親友と駅で集合し、カフェで友人と座席に座った


「びっくしたよ、急に会いたいなんて、ついに結婚?」


少し口ごもってから口を開いた


「実はな、俺起業しようと思っててな」


「起業!?」


「だよな、びっくりするよな」


「ああ、いやうんびっくりするよ」


僕は目をパチクリして驚いた、まさか旧年の友達がこんなことを言うとは


「覚悟はできてるの?」


「ああ、野垂れ死ぬ覚悟だ」


親友の目は本気だった


「そ、そうか、凄いな」


僕は冷静を装っていたが内心戸惑いを隠せていなかった


「いやまあ無理もないよな、うんごめん悪かったこの話は

「待って」

 

僕は彼の話を遮った、何故自分でもこうしたかは分からない、ただ過去の思い出が蘇っていくうちに、僕は面白そうだと思っていた。


「どうした?」


「ああ、いやごめんつい」


「最近青春してるか?」


真面目な顔で親友が呟く


「え?、青春って、そんな学生みたいなこと言うなよ~」


「なら俺と青春しないか?人生を賭けて」


僕は考えた、今の人生に不満があるかと言えばそうではない、ただつまらないと思うよりかは頑張って後悔しても何もしないよりは良いんじゃないかって


「うん、賭け事は好きじゃないけど今回は賭けてみたくなった、君の人生と共に歩む方が幸せなんじゃないかって、一緒にやろう!」


「ああ!待ってたぜその返事!」


僕は気づいたら自分でも思ってないことを言って、親友と握手まで交わしていた。

ただこれで良かったって今は思う







「それですぐに頼むってなってさ、君が居てくれて良かったよ」


俺は係長の話を聞いても理解が追いつかなかった、どうしてそこまで


「誰かの為にどうしてそこまで頑張れるんですか?、自分がどうなるか分からない中でどうして」


係長は少し考えてこう言った


「どうしてだろうね、けどあいつと一緒なら死んでもいいって心の底から思えたんだ、馬鹿だよね、僕」


「馬鹿ではないと思います、ただ自分には分かりません、自分が一番大事なので、自分に精一杯で、」


俺は軽く落ち込んでいた、明らかに自分とは何かが違った


「君も大事な人が見つかれば分かると思う、その時までは今のままでいいさ、自分を守れなきゃその人を守れないと思うから」




俺と係長はその後会計を済ませ、外に出た

「じゃ、僕はこれで帰るよ、今日はありがとうね」

「いえ、こちらこそ、話し聞けて良かったです」

「そんな大した話しじゃないけどね、ありがとう」

微笑みながら言っているが、相当大したことだと思う、俺は羨ましい、そうやって自分の道を決められる人が



あの夜から数日が経ったオフィス内にてお別れ会をしている


「僕は今日で居なくなりますが、皆さんならきっと大丈夫です、ご活躍祈ってます、あとは彼が」


「はい、明日から係長になります、未熟者ですがよろしくお願いいたします」


パチパチパチパチ


拍手がなり響いた


「ありがとうございました!よしそれじゃ今日も頑張って行きましょう!」

課長が気合の一言を入れる


「アイアイサー」


そして俺の同僚が変な相槌を入れる、全くこいつって奴は…

一気に塩らしい雰囲気から場が明るくなった

今日は働いてきた人生の中で一番騒がしい日だった、とても賑やかで心地良い日だった






チャイム音が鳴り響く


「お久しぶりです、今日は居るかなって思って」


「もう来ないかと思いましたよジ~」


そう彼が来た、一週間半くらい来てなかった彼が、私は彼に感謝の意味も込めて睨みつけた


「いやぁ、色々と立て込んでいて、やっと今日落ち着いたんですよ〜」


「そうだったんですか、」


「はい、Kチキ一つ」


「はい〜、」


「俺何と係長になったんですよ、」


「ええ、係長エリートじゃん!」


「いやいや、偶々っていうか成り行きで、」


「それでも凄い、私なんて~」

私は自分を卑下した

「いやそんなことないですよ、少なくともあなたがここに居るだけで俺は助かってますから」


この人はサラッと平気でこんなことを言う、彼女とか居たことないのだろうか自分が言っている意味が分かっているのか、嬉しすぎて湯気が立ちそうだ


「お会計220円です」

「はい、」


チャラリン

決まって彼は現金払いだ、現金で払ってる姿しか見たことがない


「丁度お預かりします!」


「名前松家さんって言うんですか?」


「え?、はい」


「ああ、ごめんなさい、名札が見えて」


「はい、そうです!良かったら名前で呼んでも良いですよ」


うん、今自分なんて言った?自分でも意識してないうちにとんでもないことを、、引かれてないかな


「それじゃ松家さんいつもありがとうございます、また来ます!楽しみしてますね」


「はい、待ってます!」


彼は颯爽とコンビニを去って行った、

心のざわつきが収まらない



ベランダにて夜空を眺める


「ふう」


夜景を見ながら一服する、この一時の時間が昔までは生きてるって感じてた、だけど最近はコンビニに行くこと自体が生き甲斐になってる気もする


煙は天高く登っていく、朝日を連れて、

俺も誰かの為に頑張ろうと思える日が来るのだろうか







ベットの中で私は過去のこと、今のことをずっと考える、忘れたくても忘れられない忌々しい記憶、もし私があの人と付き合えたのなら、

「繰り返さないよね、男の人みんながそうだって訳じゃないよね」

自分の身体を擦る、あの感触が蘇る、幸せな気分ともて遊ばれてた屈辱の気分が交わって気持ち悪い

「う、」

仕事帰りに来る、あの人はどいう人なのだろう、私は知ってるようで何も知らない、チキンが好きなこととタバコが好きなことしか

「知りたいな、もっと」

私は眠りについた、幸せを求めて









朝日が眩しい、窓の日差しが顔に当たる

「はあ、目が覚めちゃったか、今日から係長か」

松家さんが俺のことエリートだと言っていた、だけど松家さんが夜遅くまで頑張れているから、コンビニだって行けるんだ。

「たまにはチキン以外もありだな」


「行ってきます!」

ガチャ

俺は笑顔で家を飛び出した

あの人に会うために


第4話につづく

























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