第2話


会議室の中にて我が社員がそれぞれのテーブル席に各課ごとの代表が座っている。今回は我が課の指針がこのプレゼンで決まると言っても過言ではない。

今こうして汗ダラダラな課長が必死にプレゼンしている


「で、ではこれにて我がプレゼンを、終わります」


俺は今課長の連れとして発表を手伝っていた、一同揃って礼をしたあとテーブルに座った


拍手が座るまで鳴り止まなかった

「やったな!!、これで私は安泰だハッハ」

「ええ、良かったです、」

俺がずっと残業したおかげやけどな天狗




「会議も終わったし、昼一緒に食べて帰るか」


「課長、俺らまだ仕事ありますよ」


「そうだったかハッハ」

会議室を出て、廊下辺りで課長の上機嫌な笑いが響く、これだから気分屋は困るなぁ


「いやぁあ良かったよ、素晴らしかった」


「「部長!!」」


満面の笑みを浮かべ、優しくも貫禄のある部長が俺たちに声を掛けてくれている


「「お疲れ様です!」」


「いい、何も疲れてなんかない、それにしてもよく頑張ったね」


幾つになっても誰かに認められるのは凄く嬉しいものだ、頑張った甲斐があったなと思う

「これからもよろしく頼むよ、エースとしてね」


「「はい!」」


部長は踵を返して戻っていった、専務と話があるのだろう。余裕に満ち溢れている


「いやぁあやったな!」バンバン

課長が俺の背中に手を叩く


「いや課長痛いです。」


「ハッハハッハ」 

この人も少しは部長を見習ってくれ



牛丼チェーン店で課長と二人、牛な課長によく似合う


「旨いな、だろ」


「そりゃあ旨いですけど」


端っこにあるテーブル席で俺と課長が対面でお昼を取っている

なぜ休憩時間までこんな子ども染みた上司と一緒に居ないと行けないんだ


「プへぇ、旨い」


腹を膨れた課長がそう呟く、黙って食えんのだろうかこの人は…


「実はな、お前と昼を共にしたのには大事な話があるからだ」


やっと本題に入ったかと、課長から食べる手が止まり、熱い眼差しを俺に向けた。

正直ありえないとは思いたいが嫌な予感が頭の中で鳴り響いてる。


「大事な話とは?」


「もうすぐ秋になって一種の節目の時期だ」


「はい?」

「今居る係長とは仲良いか?」


そう、今係長は会社のオフィスで課長の代わりに今代理課長として皆を率いてるはずだ。係長はあくまで係長の仕事があるからと課長が係長には何故か気を遣っていて課長の仕事を全部俺が引き受けることになったわけだ、元々課長の腰巾着みたいなところが自分にはあったのかもしれないが…


「まあ、職場で挨拶するくらいにはですけど…」


「そうか、実はな今度別のベンチャー企業に転職するらしくてな、無事に決まったんだよ」


「本当ですか?我が社はそれなりのネームバリューありますし、福利厚生とかも安定してると思うんですけど。」


いやまあ、係長の話が来るとは分かっては居た、みんなやる気がないから仕事ができない俺でも声が掛かってもおかしくはないと、ある意味恵まれてはいるのだがな、それくらい俺以外にとってはいい会社なんだと、俺にはその安定してる場所を捨ててまで次のステップに上がろうとすることが俺には理解ができなかった。

俺の求めてる場所を手に入れていると、いやまあ責任がのしかかる時点でそうではないのだが


「おい、聞いてるか?」


課長の顔が間近に迫ったので一気に我に戻された


「すみません、ボーっとしてました」


俺がそう言うと課長は顔を戻した、正直下手なホラー映画より怖い


「頼むぞ、数日後には係長だからよろしく!!」


「ああ、はい分かりました、、え?」


「え?」


「いやそういうのって提案してくるとか、選択権とか俺にあると思ったんですけど」


「いやまあ部長がうるさいんだわ、よろしく」


「ええ、いや納得が」


「よし会計行くぞ!」


課長は席を飛び出し会計に向かった。


「おいおいマジかよ…」


あまりの衝撃さに言葉を発してしまった。啞然とすることしか俺にはできなかった




「お帰りなさい、課長、そして次期係長」

「おかえりなさい」

俺の仲のいい同僚が出迎えてくれたあと、皆からお帰りなさいと返ってきた。

「おうおう、ただいま!」

「ただいま、戻りました。」

課長は陽気だが、俺は内心陰気まみれだ。



「じゃ俺は定時だから上がるわ~、息子とスマブラがあるんでね~それじゃ」

「「お疲れ様でした!」」


「ふぅ」

とりあえず色々無事に終わって胸を撫でおろした、座椅子に座っている感触が心地いい


「お疲れ様、色々ありがとうね」


優しい笑みを浮かべて彼はそう僕に呟いた

「係長、お疲れ様です!!」

俺は立ち上がって係長に挨拶した。


「やめてくれ、僕はもう係長じゃなくなるから」


「そんな係長は係長ですよ」


「そっか君らしいね」


爽やかという言葉がこの人のために作られたのではないかなと思うくらい、係長は俺より全然大人だった。


「今日最後に一杯どうかな?君には頼んでばかりで申し訳ないが」


「いえ、俺も係長には聞きたいことがありましたので」


そう俺は気になってた、どうしてそこまで気丈に振る舞えるのか、この人と別れる前に一回腹を割って話してみたかった。


「そうか、君からそんなことを言って貰えるなんて嬉しいよ」


「いえいえ、ありがとうございます」










私がいつも働いてる職場の中で女性二人の話声が聞こえる


「私さ、彼氏が女性のお店で遊びまくってたのマジやばない?」


「うわ、猿やん」

私に近い年代の女性だろうか、何だか羨ましい


「…彼氏か」



公園噴水広場で落ちあい噴水の前であの人と


「ねえ、私ってあなたの何なの?」





「松家さん、松家さん」


「は、店長!!」


店長に声を掛けて我を戻した。


「あ、あの?」


お客様二人組が菓子パン2点を持ってレジ前に置いていた。


「すみません、お会計484円です」


「ペイペイで」


「はい」


「ありがとうございましたー!」


私はありがとうございましたとお辞儀してお客様が、店から出てくるのを見ていた


「松家さん、大丈夫?」


「はい、大丈夫です」


「無理しないでね」



「はい」


何気ない会話があるだけでも嬉しい。


「けど最近元気になってきたよね、今みたいに立派じゃなかったし」


「そうですか?」


「うんうん」


だとしたらきっといつも仕事帰りに来るあの人のおかげかな、今週はそんなに来てないけど…


いつもありがとうとその言葉でどれだけ励まされてここにいるのだろう。


「じゃ、頑張ってね!」


「はい!」


待ってるからね


「ありがとう」


そう私は呟いた、まだまだ夜はこれから


第3話に続く













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