第120話キメラ




日本前線基地内では、情報を整理しつつ作戦を練っていた。


「するとEU部隊は、最初の戦いでコウモリの怪物らによって通信機器を全て破壊されて撤退。アメリカとカナダの連合軍と合流して戦ってるのか」


「それだけではありません。小型偵察重力機が基地内に潜入して撮影した動画では、戦いを勝ち続けてるように編集したフェイクニュースを本国に送っている映像がハッキリ映し出されてます」


怪物に剣を突き刺したポーズをアップで撮った風景で、そして互いに戦いの自慢をする会話など・・・

顔ばれしないようにフェイスマスクにゴーグルで隠すありさまだ。

よくよく見ると後ろの見えない地面には、死体が散乱している。

戦いは惨敗に終わっているのに。


中には合成でエミューの首を次々にねるシーンは有名で、その素材を本国に送って合成された。

もうプロも誤魔化す出来栄えだ。

送った素材もばっちり証拠として撮られていて、合成と比較して判明するレベル。


その動画は、アメリカ本国でも賑わすニュースで更なる軍を送りだす事が決まったらしい。


オーストラリアの現場では、犯人探しにやっきになっている。

よくよく調べると一部の共和党支持者達によって行なわれた。



「なんて奴らだ!アメリカのメディアに情報をリークしてやる」


政府高官「今はやめた方がいいぞ。そのリークをフェイクニュースと言われるに決まってるぞ。この戦いが終わってから冷静になった時期に出せばいい」


「それって政治的判断か・・・」


政府高官「そう判断してもいい」



「それで作戦はA案からC案まであったが何に決まったんだ」


政府高官「作戦はC案だ。西オーストラリア州のAポイントを集中的に攻める。これは陽動で覚醒者トップの神須がキメラを強襲する。強襲が成功するまで戦いは続くと思ってくれ」


「キメラの居場所が特定されたのか・・・」


神須「確証は90%だよ。強襲して居ない場合は、すみやかに作戦を中止してくれていいよ」


「何だか人事ひとごとのようだな・・・それでいいのか・・・」




Aポイントが攻撃されると怪しい地点の怪物が動き出した。

5キロも離れたAポイントだが、爆音やモクモクと白煙が立ち昇れば怪物の本能が騒ぎだすのだろう。


あんなに怪物であふれ返っていたのに、100まで数を減らしてるぞ。

すでにAポイントでは、激しい戦いが始まってる。



雷魔法の最大級の魔法を発動。

空に暗雲が立ち込める。「ゴロゴロ、ドン」と雷鳴が響きカミナリが無数に落ちる。


全ての怪物が死に絶えた。

無数に焼きただれた死骸を乗越えながら、俺は隠蔽いんぺいをしたまま突っ込む。



「あったぞ!」


ダンジョンの穴がポッカリと開いているぞ。

その穴から這い出すものが・・・何とみにくい姿だ。

もうムカデのように様々な手足が生えて、無数の動物の顔が張り付いてた得体の知れない物が出たのだ。

これがキメラの正体なのか・・・

なんと人間の顔もあった。目は焦点がなく口からだらしなくヨダレを垂らし続けている。


「なんて事をしたんだ・・・」


微かに聞こえてくる。


「た・たすけ・・・て・・・」


意識はあるのか・・・


その人間の顔が「ブチャッ」と吐き出される。

わずかな1メートルの肉魂にくこんうごめき大きく成長。

その肉魂にくこんが6メートルをこす巨人となった。

背中には翼が生えていた。


まだ姿は血管がむき出し状態で肌の形成はまだだ。


それなのに「殺してくれ」としぼり出す声が・・・


あ!向こうには、巨大な海ガメが・・・背中の甲羅から無数のとげが生えているぞ。

こっちには、3つの頭のエミューと退化した翼が大きく広げて暴れ狂っている。


魔石での魔力回復が終わったので、再度・・・雷魔法の最大級の魔法を発動。

空に暗雲が立ち込めと無数のカミナリが怪物らとキメラに落ちる。



凄い閃光が辺りを照らして怪物とキメラの肉片が飛び散る。

終わったのか・・・あ!まだ気配がするぞ。


キメラがいた場所へ駆け出す。

肉片から50センチのヒルが這い出す。


コイツがキメラの正体か・・・


暗黒吸刀を取り出すと突き刺す。


「クューゥーー」と鳴き死んだ。



ヒルが消えると1つの魔石があった。


ダンジョンを見ると通常のダンジョンに戻っていた。

やっと終わったようだ。



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