第114話切裂き男




消防重力機のアメリカとEUの受注数をなんとか作り終えたぞ。


工場の広場に待機する消防重力機。

まさに今、目の前の1台の先導重力機が浮かび上がり、アメリカ方面へ飛び立った。

その後ろに消防重力機が列をなして続く光景は、カルガモに続くひな鳥のようだ。


あ!今度は、EU方面へ飛び立つぞ。

この決められたルートと日時は、日本政府が決めたもので・・・まだまだ自由に空を飛べないのがネックだ。


消防庁の受注した消防重力機なんか、特別なけん引車で引張られて輸送されている始末だ。

ああ、なんて無駄な事をさせる政府だ。



これで当分は、受注は終わった。

もう作れないのが本音だ。


消防重力機や救助艇の重力魔法陣には、オリハルコンを使ってる。

そのオリハルコンが残り少ない。


そもそもけん引ビームを発射可能にするには、オリハルコンが必要。

ただ浮かんで飛ぶだけなら必要ない。そこがポイントだ。


重力魔法陣は、特殊な加工が必要でルーン文字の金属に少量のオリハルコンを混ぜる。

その混ぜ方も重要で無重力状態にして均一に混ぜ込む事が鍵だ。


そんな特殊なルーン文字だから、けん引ビームを発射可能にしている。

それなのに、受注数が多過ぎてオリハルコンも残り少ない。


また異世界に行く必要がでてきたぞ。



会社の倉庫のドアを開けて入る。

異世界に持って行く品々が山積みで手当たりしだいに回収。

最後の醤油の一斗缶いっとうかんを回収すれば終わりだ。





「さあ!異世界に行くか・・・」


そう願った瞬間に目の前に、あの鏡が現れる。

もう慣れたもので指が触れた瞬間に、異世界へ来てた。


ここは俺の屋敷の執務室。

机の上の呼び鈴を鳴らす。


ドア外では、あわただしく足音が遠ざかる。

そして新たな足音が向かって来た。


「お呼びでしょうか・・・」


「入れ・・・」


「領主さま、急ぎの用件があります」


「何があった・・・悪い事か・・・」


「王都から呼び出しがありました。もう3日も経っています」


「用件は分かるか」


「なんでも、連続殺人が起きて王都ではパニックになっていると・・・これが召喚状です」


最初、吸血鬼の生き残りとして探したようだが・・・都民や貴族まで日中に儀式を行なった。

その儀式の最中に黄金の仮面をかぶった男が現れて、兵士や民を殺しまくったようだ。

56人斬りをして逃げおおせた。

夜は民家や屋敷に忍び込んで、1人だけ首の頚動脈けいどうみゃくを切って姿をくらます。


もう恐怖の王都らしい。

都民は、怖い夜を肩を寄せ合って眠るしかない。

王も夜の寝不足で悩むほどで・・・俺に助けを求めたらしい。


鏡を使って王都へ行く。




正門で俺が来た事を伝えると、急ぎ王への挨拶に・・・


「よくぞ来てくれた・・・どうか切裂き男を殺してくれ」


え!殺すのか・・・それ程に憎いにのか・・・


「努力します・・・国王は夜も眠れないと聞いてます。こいつは、いにしえのゴーレムを模したゴーレム01です。私が滞在中、貸し出しますので安心して眠って下さい」


「ゴーレムとな・・・ほう、不思議な物を・・・」


「国王、王を守るのは、我ら護衛官の勤めです。そんな人形に王を守れるとは思いません」


「そなたの言いたいことも分かる。それでは試合をして試そうではないか・・・」


屈強くっきょうな男を相手に勝てますかな・・・」



訓練場で試合が始まったよ。


屈強な男は、大きい男であった。身長は、2メートル以上もあるだろう。


「試合はじめ!」


男は、大きい体なのに速い走りで向かって来た。

どでかい剣を振り上げて、一気に振り下げてきた。

ゴーレム01は、盾で防ぐ。

何度も振り下げるが全て防ぐゴーレム01。

ゴーレム01の後ろに回り込もうとするが、素早い動きでゴーレム01は、男の後方に回り込み肩を軽く叩く。


それでも諦めない男は、剣を捨てて取っ組み合いを試みる。

盾に邪魔されて思うように掴めない。

とうとうゴーレム01に片手を捻りあげてボキッと折られた。


「サントス!もう戦うな・・・それ以上戦えば死ぬぞ」


「しかし、このままでは・・・」悔しがるサントス。


そんな戦いを嬉しそうに見てたのは、王であった。



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