第98話パーランド領
それ程の難所でない山が見えている。
「この山をくり抜けばパーランド領の鉱山に行き着くのか」
「はい、そのようになってます」
「ならばやって見せてくれ」
土魔法士のイライが片手を突き出して、一生懸命に土魔法を発動。
山に切れ目が入りググッと手前に引き出される。
もう片方の手に握った袋をだす。
すると1メートル前で大量の残土が消えている。
「初めてなのに上手いな」
「はい、何度も見ましたので・・・わたしなりに工夫もしてます」
そして同時に周囲もカチカチに固くしている。
俺らがパーランド領に入った。
すると同行していた【なんでも屋商会】の連中が商売を始める。
ワンタッチ式テントを次々に張って、亜空間袋から品々をだして並べだす。
「さあ、売り尽くすぞ」
元気な店員が大通りに飛びだして呼び込みを始める。
「よってらしゃい、みてたしゃい。王都でも人気な商品だよ。1番人気なのはLDE照明。ほら見てご覧、こんなに明るいよ」
物珍しいのか客がよってきて賑わってる。
そして飛ぶように品が売れ出す。王都より売り上げがいい。
なぜって、ここパーランド領では、金貨から銀貨や銅貨を一手に製造してる領土で、金を持っている住民が多いのだ。
俺は、領主の屋敷で領主と話中だ。
「これは、これは、私がアニア・パーランド。こんな奥地までご足労願って悪いと思っている」
「道路建設も請け負ってる身だから、お気遣いは無用です。これがプレス機で作った見本の金貨です」
「なんと
「領地代行官のロロです。プレス機を使えば1秒足らずで金貨が作れますよ」
「そんなに簡単に・・・」
「そして、これ程に精巧に作れば偽造もし難いでしょう」
「しかし・・・あなたが偽造するかもしれない」
「そんな事はしません。するならプレス機を売らないで密かに製造してますよ」
「成る程、もっともな話ですな。しかし、この領内の硬貨製造職人が不要になってしまう」
「それなら貴金属を作らせばいいでしょう。王都に負けないぐらいのデザインに優れた物を・・・これも見本のネックレスと指輪です」
日本の貴金属店から買ってきた物を見せた。
アニアは、手に取って食い入るように見てるぞ。
「これは素晴らしい物だ。このデザインを勝手に使ってもいいのかね」
「ええ、好きなだけ使って下さい」
「ここまで親切にしてくれるには、何かありますね。それで何が望みですか」
俺は、オリハルコンとオリハルコンクズの金属を見せた。
「この金属が欲しい。あるだけ買いたいと思ってます」
「このようなクズ金属が欲しいのかね・・・いいだろう。道を作ってくれた恩人に無下に断れない」
その貴金属は、国中に売れまくった。
とんぼを模したブローチがよく売れた。
これは昔のアール・ヌーヴォーが得意なデザインだ。
花や葉などの植物、トンボや蝶などの昆虫、トカゲや蛇などの爬虫類、孔雀などの鳥類といった自然界から着想を得たもの。女性の姿や顔、髪などをモチーフにしたものが主流。
ねるようなラインで描かれ、左右非対称で柔らかな雰囲気に仕上げられているのが特徴で印象的だ。
まあ、ここではマネたと言われないから大丈夫だ。
それに、ここでは確立してない技法のエナメル技術を伝授。
プリカジュール
下地がない薄い鉄板の間にエナメルを流し込み、ステンドグラスのように光が透けるように仕上げる技法。
日本の七宝焼きと同じ技法。
クロワゾネ
クロワゾネとは「仕切り壁」のことです。
金属で作られた表面に同じ金属による細い線で枠をして、その中にエナメルを流し込んでいく技法。
日本では有線七宝と呼ばれている技法。
3連リングの指輪は、奇抜なデザインが受けて国中でブームにもなっている。
そして、結婚時に指輪をする行為も密かに広めてやった。
相乗効果で売れて職人が徹夜したらしい。
パーランド領では、国王の命を受けて特許法を成立させる。
金とコネを使ったようだ。
無断で類似する物を作ったり販売すれば犯罪になる法律だ。
それに乗って俺も石鹸、花札、オカリナ、バイオリンも申請したよ。
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