第97話なんでも屋商会




国王がデスクに向かって書類にサインをしている最中に、「コンコン」とノックの音が響いた。

見せたく無い書類があったのだろう。

サッサッと別の書類に下に隠して「入れ」と言った。


おずおずと入ったのは、宰相である。


「国王、見て参りました」


「地下鉄とは、どのような乗り物であった」


「まことに不思議な乗り物でした。土の中を走るのに外を見えるようにガラス窓がありました。その透明度は、ガラスがないほどに透き通っています。それだけではありません。車内の明るさは、太陽の下と同じ程に明るいのです。それに聞いた話ですと時速40キロで走っているのです」


「その時速40キロとは・・・なんだね」


「1554ピズの距離を1時間で走る距離です。マズア領地からアスア領地までの所要時間が34分程なのには驚きです」


「なんとそれ程に速いのか・・・」


「それだけではありません。駅に着くと階段が上下に動くものがあり乗るタイミングに苦労しました」


「階段が動くとな・・・奇怪きっかいな・・・」


「それでいて乗車運賃は、どこまで乗っても銀貨1枚で乗り放題なのですよ」


「それで収益がでるのか・・・」


「もう客は大勢乗っていたので大丈夫でしょう。それに荷物の運送もやってました。荷物があれよあれよと3輪バギーの荷台に載せられて、何台も走り去るのを見ました。それは凄い光景です」


「あの3輪バギーか・・・」


「それだけではありません。イサムの街では、3輪バギーが走り回っています。大きな交差点では信号機という物があります。青でないと進めませんが途中で黄色に変わって注意喚起かんきをして赤に変わります。赤は進むなという意味です」


「イサムとは、只者ではないな。それで正体がわかったのか・・・」


皆目かいもく分かりません。突然に旧アルポスの街に現れて魔法を習得すると活躍するようになったとか・・・」


「すると、以前は魔法を習得していなかったのか、あの歳で魔法習得はあり得ないではないか・・・魔法士に長い間弟子入りして魔法を習得するのが一般的なのに」


「魔法省にも相談したのですが、これっといっていい情報はありません」


国王はうなった。


「時間をかけても調べるのだ。絶対に正体を掴むのだ・・・」


「かしこまりました」





ここ王都からちょっと離れた場所に【なんでも屋商会】がオープン。

駅前の一等地で地下鉄でつながっていて、地下1階への食料品売り場へ入ることができるのだ。


胡椒、醤油、ソース、ケチャップ、マヨネーズ、ごま油、サラダ油のビン詰め売りが販売されて長い列が出来ている。


「押さないで下さい。十分に品を確保してます。売り切れの心配はありません」


「それは本当だろうな。朝の6時からオープンするのを待ってたんだぞ」


あ、は~ん。コイツは転売屋だな。


「なんでも屋が仕入れた品です。ドンドン売りまくるのでご心配無用です」


野菜コーナーは充実していて、大根が飛ぶように売れている。




店内に香ばしい匂いがただよう。

その先では、焼きとうもろこしの実演販売が行なわれている。


「寄ってらっしゃい見てらっしゃい。このとうもろこしに特製に醤油だれを塗って焼くと美味しくなるよ。たれの材料は、なんでも屋で手に入るよ」


【焼きとうもろこしのたれ】


とうもろこし(2本)


みりん (大さじ1と1/2)

中ザラ糖(大さじ1と1/2) 

醤油  (大さじ1と1/2)

塩   (少々) 

バター (10g)



焼き上がったとうもろこしは、並んだ客に無料で配られている。


「旨いぞ。こんなの初めてだ!」


そんな騒ぐ客は、ほったらかされて黙々と食べる客が大半だった。





更に奥では、ラーメン屋があった。


客は店先の写真を見て、店の入口で番号を言って金を払う。


「6番のみそラーメン1杯!!」


そして10番の札を手渡される。


「出来上がったら番号を呼ぶので取りに下さいね。席には自由に座って待って下さい。水が飲みたければあちらに用意してます。食べ終わりましたら奥に返却をお願いします」


初めて客は、言われるまま椅子に座った。


「はい、5番のお客様、5番はいませんか」


「あ!俺だ」


札を手渡して、盆をもらっている。

盆の上には醤油らーめんとはしがのっている。


男は元いたテーブルに戻って食べだしていた。


「これがラーメンか・・・この棒でどうやって食べるのだ」


周りを見て納得したように不器用に食べだした。


「これはいい味だ。この薄い肉はなんだ・・・おお、これは旨いではないか」


厨房では鍋に500ccの水を入れて、魔道コンロが熱しはじめる。

沸騰ふっとうすると袋麺の麺を入れだした。


女は砂時計をひっくり返している。


その間に器を用意。

スープ袋をハサミで切って、器に中身を入れて準備が整った。

麺をほぐしながら3分たったので器に注ぎ込む。後は混ぜてきざみネギとチャーシュー4枚をのせた。


「とんこつラーメン、チャーシュー多めができたよ」


「はい、7番のお客様、7番はいませんか」



1階は、武器と防具の販売。ルーンブレイド、反射盾、雷撃の杖

2階は、魔道具の販売。魔道コンロ、LDE照明、魔道冷蔵庫

3階は、服の販売とオーダーメイドの仕立ても行なっている

4階は、高級化粧品や宝飾品が販売されている。

5階は、なんでも販売。石鹸、花札、オカリナ、バイオリン



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