第94話道路




自分の領地に戻った俺は、麦焼酎の工場とウイスキー工場も建設した。

規模や形もドワーフの所と変わらない。


ビール工場から何人か回してもらい、新しい人員も面接して雇い入れてる。

そして、蒸留方法を1から教えるのが大変だったよ。

ドワーフみたいに酒に貪欲でないので、1つ1つの理由を何故そうなるかを説明する羽目に・・・

ドワーフなら一言で「わかった」と行動を起こすのに・・・早く飲みたいのがドワーフの行動原理だったらしい。

酒を飲んで快楽にひたるが堪らなく好きなのだ。



アルコールの蒸留方法から貯蔵まで、ドワーフ工場と丸っきり一緒だ。

だからその部分をスマホのデータを見ながら、マニュアルも作って手渡した。


「わからなかったら、とりあえず見てから考えてくれ。それでもダメなら聞きにきてくれ」


ビール工場で働いた者がリーダになって、ようやく蒸留が動き出したぞ。

やっぱり漫画タッチのマニュアルが良かったのか・・・


蒸留された麦焼酎を小さなコップで、皆で飲んでみた。


「え!ビールよりアルコール数が高いが、ちょっと・・・」


そう熟成が足らない。


麦焼酎は、必要最低限な熟成で1~3ヶ月。

ウイスキーは、年で熟成させる為に一般的なもので3~10数年。



しかし、結果を早く見せてやらないと、後々心配だから魔法を使ってどうにかしようと考えたよ。


皆が見てる中で麦焼酎に光魔法を使って熟成を早めてやった。

光りが当たり熟成速度があれよあれよと速まったのだ。

そして熟成し終わったぞ。


何が起きたのだと、皆は驚いた。


「魔法を使って美味しくしたから飲んでみてくれ」


熟成したての麦焼酎を再度、皆に振舞った。


「え!これがさっきの麦焼酎・・・フルーティで飲みやすいし、酒好きでない私でも美味しく飲めますよ」


「アルコール数も変化したような・・・これはこれでいけますぞ」


「こんな酒があったとは・・・」


安っぽい味で無く、よりいっそう美味しくなったぞ。


異世界のビール以外の酒も貯蔵状態があまり良いものがなく、1癖2癖あるのが普通。

高級な旨い酒は、貴族か金持ちしか飲めないのだ。


なので評判は、大変良かったぞ。


だから領地での新たな目玉商品となった。

もう売れて売れて、困る程だよ。


そして、知らない間にサツマイモで芋焼酎も製造しやがった。



こうなったら早い段階で、麦焼酎とウイスキーを独占的に王都での販売も考えよう。

商人に売って金を儲けるより、売れる商品を売れる所で売れば、利益率は一気に跳ね上がるってものだ。

それにドワーフの新商品がドンドン出ているからな。


それを予期してか・・・道の拡張と整備が俺の知らない間に、工事が行なわれていたのだ。


その事業を進めたのは、信頼している領地代行官のロロだった。

領地と王都を結ぶ道を土魔法士のダンに任せたらしい。

その道路工事は、はやく進んでいる。

今では王都近くの道を整備中らしいと聞いている。




そもそものきっかけは、3輪バギーを使った【バギー運送会社(株)】の設立だ。

筆頭株主は俺だ。このまま1人であれこれ出来ない。

ならば誰かに任せるしかない。株を俺から借金させて買わせて株主であって役員として雇用。

儲けたかったらしっかり働けってことだ。

手を上げて賛成したのがドワーフのロベットだ。だから副社長にして会社は丸投げしたよ。


そんなロベットは、あっちこっちで小さな運送業を傘下に治めて、会社の規模を拡大。



悪徳なライバル業者は、盗賊を雇い運搬途中の3輪バギーを襲うように指示。


待ち伏せ場所に現れた3輪バギーに、魔法攻撃や矢を射りはじめる。

しかし、ドワーフが作った防具がバリアを発生。矢や魔法を呆気なく跳ね返した。


3輪バギーから飛び降りた運転者は、魔剣まで進化した剣で立ち向かいバッタバッタと盗賊を倒した。

その盗賊には、賞金が掛けられていて一気にバギー運送会社を有名にしてしまう。


「安くて、安全、早い」をキャッチコピーに拡大するのも簡単だったようだ。



ロベットは、王都を中心に手広く進める商魂をみせたのだ。

それに伴ない道の悪さに気付き、領地代行官ロロに直談判。


「このままの道ではダメです。将来を見据えて道の拡張と整備が必要です。無駄に曲がりくねった道より真直ぐな道が良いですね。急ぐのは王都までの道です。それが済めば各地の領主も道は金をうむものだと気付くでしょう。そして金で道路工事を請けガッポガッポと儲けましょう」


「それは領主様の為になるのだな」


「なります・・・会社が大きくなれば領主様は喜ぶことでしょう。それに私は副社長ですよ」


「それは本当に、本当なんだな!」


「疑り深いですね・・・念書でも何でも書きますよ」


「わかった・・・信じてみよう。土魔法士のダンを呼んでまいれ」





ダンは、道路工事が終わって道路の脇に座って眺めていた。


この道路は、王都正門まで続く道路。

自分自身が作った道路だ。出来たての道を人が往来する姿が楽しくてしかたがなかった。


「ダン様、往来する人を見て楽しいですか・・・」


「楽しいぞ。わたしが精魂込めて作った道路だ。その道路を気持ちよく歩く人を見てると充実感が感じられる。なんだ・・・君には、まだわからないようだね」


「ねえダン様、1つ質問です。どうして道をギシギシに固めないのですか・・・堅い方が道の耐久にいいと思いますが」


「これは領主様の考えだよ。領主様の住んでた所では、アスファルトで出来た道路があるらしい」


「アスファルト・・・何ですかそれは」


「わたしにもようわからん・・・わたしなりの解釈をして作り上げたのがこの道路だ。ほどほどの固さにして水が吸い込まれるように小さな穴を開けた。アスファルトモドキは、ほどほどの弾力があって頑丈な城壁にも負けない強度も兼ね備えた画期的な発明なんだよ」


「ダン様が考えたのですか」


「そうだ・・・わたしが考えた物だ」


「しかしダン様、道路脇の排水溝も同時に作ってますが、水を吸わす必要がありますか」


「中央を高くして排水溝に水が行くようにしているが、凹みが発生しても水が吸い込まれば水溜りも出来にくいはずだ。それに雨水は大地に返すべきなんだよ」


「そんなものですかね」




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