第92話橋




ドアーフの連中にお願いせるている。

男も女も土下座どげざして頭を下げてたぞ。


「どうかここでもビールちゅうモノが飲めるようにして下さい」


「イサム様が人間の街に行った連中からもらってきた手紙には、めちゃくちゃ美味いビールがあると言うのにここで飲めないとは・・・」


「だけど、ここって山奥だよね。麦畑の土地ってあるの・・・あっても育ち難いぞ」


「確か・・・オーガの所にも大麦はあるちゅう話を聞いてます。お願いです大麦を買ってきて下さい。うちの金でダメなら大剣の物々交換でお願いします」


「それならドワーフ自身で買いに行けばいいのでは・・・」


「行きたいのはやまやまです。山あり谷ありで日数と危険がともないます。それに運ぶにしても背負子しょいこで運ぶ量もたかが知れてます」


成る程、主張するだけの理由も納得する話だな。



「わかった。ドワーフとオーガの間に往来し易いように道を作ってやる。3輪バギーを使えば大量に運べるだろう。それでどうだ」


「そんな途方もない。そんなことが出来るのでしょうか・・・」


「出来るよ任せておけ・・・」





森の木もバッサバッサと切り倒した。

根っこも「アトラクト」と唱えて引っこ抜いてやって、そのまま焚き火の薪にするのにバラバラに切ってやった。

根っこを放置するのも勿体無もったいないのが俺の性分だ。

後々邪魔だ。それを集めるのはゴーレムモドキで健気に働いてる。


集まった薪をゴーレムモドキが荷台に放り込む。


「痛た!!た、た、たー。こっちまで放るな!」


怒ってるのは、3輪バギーに乗っているドワーフだ。


一杯になるとドワーフが3輪バギーでぶっ飛ばす。

ぶっ飛ばしても上下に揺れないよう、道は凸凹を整地して水はけもバツグンにしてるぞ。

勿論、切った木も持ち帰ってる。



「この山が難所で、転げ落ちて大怪我をした者が大勢います」


「そうなんですじゃ。ワシの左腕が肩から上がらないのも、それが原因ですじゃ」


「え!肩が悪いのか・・・治してやるよ・・・光よ、この者を治したまえ」


ドワーフの肩が光りだした・・・「あ!痛くない。そんな嘘のよういに治って・・・」


「イサム様は、そんなことが出来るのですか・・・奇跡だ」


「オーガの連中は、みな知ってるぞ」


「え!そうなんですか・・・・」


「そうだよ。毒に犯された者も治したな」


「それではドワーフの集落に帰りましょう」


「イサム様には話してませんが、病気や働けない者は別の集落でひっそりと暮らしています。昔からのおきてで災いを避ける為に仕方なかったのです」


「なに!その迷信は・・・・・・急いで帰るぞ」





20人が暮らす集落。

雨風はしのげるがみすぼらしい建物だ。入った途端に臭いも最悪だ。

世話する者が症状の軽い病人だ。だから最低限のことしか出来なかったようだな。

迷信って怖いと思うのは、俺だけかな・・・

話では少ない食料の差し入れはあるみたいだ。


「治せそうですか」


「これなら大丈夫だな」


毒蛇に噛まれて右足切断のドワーフのおっさんの足に、癒しの光をかざした。

切断面がモリモリと盛り上がり、あれよあれよと再生して足が生えた。


おっさんは何度も何度も足を触り涙がぽつりぽつりと落としている。


「この者の切断は、いつ頃なんだ」


「イサム様が居ない3日前です」


「それなら立って歩けるな」


「え!ワシが歩けると・・・」


「怖いかも知れないが、勇気をだして歩くんだ。一生そのままで良いのか・・・」


おっさんは、ふら付きながら立上がった。

信じられない気持ちで1歩を踏みだした。


「歩けた・・・足が勝手に歩いたぞ」


長い期間だと足も切断に慣れてしまい、歩くにはリハビリも必要だった。

しかし3日前なら大丈夫のようだ。足があると脳も思っているからだ。




動けないおばさんも治した。

誤って毒キノコを料理して味見して、寝たきり状態だった。



元鍛冶職人のおっさんは、鍛冶場で誤ってこけて両手を燃える火に突っ込んでしまい、治療の仕方が悪かったようだ。

指がくっ付いて広げられない状態だよ。火傷痕が生々しい。


その手にも癒しの光を当てて治したよ。

治った手で何度も何度も手を握られて「ありがとう御座います。又、鍛冶の仕事が出来ます」


それを見ていた患者達に、笑顔が見え出したぞ。


そして全員治した。


「本当にイサム様には、感謝しかありません」





難所の山を眺めていた。

ああだこうだと構想を練っていた。


「それじゃーー始めるか・・・」


俺は両手を突き出して、呪文を唱えた。


「山よ、くり抜け」


山を土魔法で「グルグルグルッ」と穴をくり抜いたぞ。

くり抜いた残土は、収納だ。


「固まれ」


落盤しないように、ガチガチにまわりを固めてやった。


穴から向こうに光りが小さく見えてるぞ。

見事に山をぶち抜いたようだ。


出来立てのトンネルの中を走り抜けた。

前に広がるのは谷の光景だ。「チェッ」とちょっと舌打ちしてしまったぞ。


「フライ」


ふわりと浮かび上がって眺めた。目測だと山と山の間は230メートル程だ。

空中に残土をフライで浮かせて、土魔法で橋のイメージして固めてゆく。

おおお、良い調子だぞ。


完成した橋をゆっくりと下ろせば、山と山を結ぶ橋の完成だ。



そして鑑定して確かめたぞ。


【橋】


強度のある橋


まあ、こんなもんだろう。



そんなこんなで長い道が完成したぞ。

ドワーフと俺が喜んでるのに、オーガは呆気にとられて見てたぞ。



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