第91話鉱山




クリーンルーム内ではアルが怒り心頭だ。


「もう無いものは出せないって何度言ったらわかるんだよ」


『それでは注文に間に合わないではないか。約束は守るべきだ』


材料の不純物入りオリハルコンが無くなったのだ。


「しかしだな・・・ドワーフの鉱山に行ってもあるとは限らないぞ。あるとしたら危険区域だ。ドワーフに掘って来いって言えないぞ。それでなくとも落盤事故で大勢死んだ過去があるのだから・・・」


『それならドワーフにかわる者に掘らせよう』


「え!人間を雇うのか・・・どうかな・・・キツイ仕事だぞ」


『ゴーレムにやらせれば良い。向こうのゴーレムの石が必要だ。さあ行ってゴーレム討伐だ』


なになにゴーレムの石を使って、ゴーレムモドキを作るのか・・・それはありかも・・・





「こなくそ!スラッシュ」


ルーンブレイドでゴーレムの首を切り落とした。

ルーンブレイド、中々切れる剣だ。


『早くパーツごとに切れ』


「はい、はい、切りますよ」


両腕を切って両足を切って胴体も腰上を切った。


「このレムの死体は捨てるのか」


『何を勿体無もったいない事を言うのだ。ゴーレムモドキを動かす神経材料に使うから捨てるな』


「はい、はい、わかりましたよ」


そして小型魔法陣を展開して腕のパーツをアレヨアレヨと2本を8本に増やしたのだ。

増やした分、小さな腕なったぞ。


「成る程、増やす目的でやってるのだな」


『何をバカな事を・・・ドワーフは、身長1.4ぐらいだ。坑道の穴も大きくないだろう』


成る程、そこまで考えているようだ。



様々に増やしたパーツを合体させるのも魔法陣だ。

最後に頭部が合体。身長1.4のゴーレムモドキの完成だ

体全体にレムの繊維が行き渡っている。

指先1本の先までも巡らされている。それで魔力が伝わりゴーレム石が動くのだ。

間接1つ1つが稼動するのだ。なんてシンプルな作りだ。



目のかわりに小型赤外線カメラが顔の真ん中に埋め込まれてるぞ。

その周りには、赤いランプが光っている。


まるで赤い目の一つ目小僧に似てるぞ。


脳のかわりは、オリハルコンチップで腹部には魔石交換のフタ付だ。



「右向け右!」


赤い目が点滅して4体が一斉に右を向いたぞ。


「歩け」


ちょこまかと歩き出したぞ。以前のゴーレムと全然違う動きだ。


『複雑過ぎる命令は無理だが、鉱山掘りなら簡単にこなせるだろう』



結局30体のゴーレムを討伐して、120体のゴーレムモドキを作り上げたぞ。


120体も並んで歩く姿は、可愛らしくて笑いが止まらない。


『なにが可笑しい』とアルは不思議がるのだ。





ゴーレムモドキが掘ってるぞ。

目を赤く光らせて掘る姿は不気味だった。


「真っ暗なまま掘らすのか・・・」


『当たり前だ。何か疑問があるのか』


「いやいやないよ」



落盤を防止する意味で、掘っては鉄筋コンクリートの壁で補強するのが大事だ。

2体が運び込み「ドン」と設置して「ギュギュ」と外に向かって押出す。


「力一杯押せ!」と活を入れてやった。


そして左右の壁は完成だ。今度はアーチ型天井を持ち込んで、油圧式天井上げにセットしてボタンを押せばいい。


「グググ」と持ち上がったら、ツナギ部分をボルトとナットで固定だ。

2体で作業台に乗って、一方はガツンと掴んでもう一方はトルクレンチで締め付けだ。


「カチ、カチと鳴るまで締めるんだぞ」


こっちを見て赤ランプを点滅させて「わっかってます」と合図をしたぞ。

それにしても、なんて立派な坑道だ。



坑道入口でちょこまか動くゴーレムモドキを眺める。

なんて甲斐甲斐しく働く連中だ。涙が出てきそうだぞ。


え!足が引張られた。

ああ、ドワーフの連中だ。


「イサム様、あれが鉱石を掘ってくれるのですか」


「掘ってくれるぞ。落盤の危険にあうこともない。好きなだけ鍛冶の仕事をしてくれて大丈夫だから」


「ありがとう御座います。イサム様には世話の掛けっぱなしで申し訳ありません」


「俺も必要に迫られてやってるだけだから、そんなに大層なことじゃーないよ」



鉱山穴からゴーレムモドキが出て来たぞ。

背負子しょいこには鉱石で一杯だ。地面に置いて「ゴロゴロ」とぶちまけた。


「これは良い鉱石じゃ、こっちも良いぞ」


鍛冶屋のおっさん連中が騒ぎ出したぞ。

それ程、良い鉱石のようだ。


「これは金鉱だぞ。金が80%も含まれてるぞ。ワシの目に間違いないぞ」


「本当だ。ワシの目利きも同じ答えだぞ」


嘘・・・金が出たのか・・・


回数を増やして山積みの金鉱と鉱石。


オリハルコンのコンも無いのか・・・イライラしてきたぞ。


125回目で「あったぞ!!」と俺は叫んだ。


『あるのは知っていた』


「何!・・・なぜ早く言わない」


純度の高いオリハルコンが出た後は、出る出る不純物のオリハルコンが山積みだ。



ドワーフ達にゴーレムモドキの使用方法を説明だ。


「右を向け!」とドワーフが命令。


機敏な動きで全員が右を向いた。


「おお!右を向いたぞ。たいしたものだな」


「今度はワシにさせてくれ・・・左を向け!」


「凄いぞ全員が言うことを聞くぞ」


「いいか!作業分担させて働かせるのがコツだな。あいつは背負子を背負って鉱物運搬。あいつは穴掘り専用って、どうだわかったか」


「おう!わかってるぜ。なあ、野郎ども!!」


「おう!!」


気合だけは良いみたいだな。



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