第81話鍛冶場撮影
神須鍛冶工房は、いつもより騒がしいく大勢の撮影スタッフでひしめいている。
何故こんな事になったのだ・・・そうだ・・・サヤが新たに付与魔法士になったからだ。
これは佐々木のゴリ押しの提案で、ルーンナイフを広める宣伝だと言っている。
その内容は【ルーンナイフが出来るまで】の製作作業を撮影して放映する計画。
政府もルーン武器輸出で世界規模で有利な立場に踊り出る積もりらしい。
要求される立場から要求する立場になるのだ。
俺は恥ずかしいから嫌だと断った。
するとハルが「師匠、サヤが付与魔法を習得しました」と連れて来たのだ。
撮影責任者は「これはいいアイデアが浮かびました。この彼女をメインに撮影しましょう。習得間もない彼女なら視聴者受けがします」
ハル「それならサヤの苦労話を3つも知ってますよ。ね、サヤちゃん」
サヤはうつむいて顔を真っ赤にしている。
「それはどのような話でしょうか?」
ハル「16で親の居る北海道から単身で出てきた事。16ですよ・・・寂しくて泣いたかも知れませんね。朝1番に鍛冶場に出てハンマーを振り続けた事。雑用も嫌がらずに率先してやる子です。そして、かいがいしく私の世話をしてくれた事ですかね」
なんだと・・・世話をさせてたのか・・・俺の世話などした事が無いのに・・・なんて奴だ。
そんなこんなでとんとん拍子に決まってしまったよ。
俺の撮影は一切無しの条件で。
「サヤさんは、どんな人物ですか?」
ミちゃん「気が利く子ですよ。鍛冶場の掃除も率先してやってましたね」
「そうですか・・・ありがとうございます」
シズ「私も話すの・・・そうね顔は見て通りに美少女で優しい子よ。寮生活でも私の肩を
「稀に見る気が利いて優しいサヤさんでした」
「はい、OK!・・・次はハンマーを打つシーンだ。準備はいいか・・・」
「監督、準備が整いました。いつでもOKです」
「サヤさん、緊張しないで・・・もっとリラックスしてくれないとダメですよ・・・そうそう、その表情でキープして、撮影開始!」
サヤがハンマーで打つようになると撮影も忘れて打ち続ける。
暑くなる鍛冶場では、どうしてもTシャツ姿で打つしかない。
次第に汗が顔や体からにじみ出てきて、Tシャツにまとわりだしている。
撮影スタッフからも「エロいなーー」と声が漏れだしている。
「監督、あのままでいいのですか」
「鍛冶場に汗はつきものだ。何がおかしいか・・・」
火のルーンナイフが出来上がった頃にはビッショリなTシャツ姿をさらけ出してる。
「ご覧下さい。今からサヤさんの師匠による試し切りが行なわれようとしています」
鍛冶場外には、10本の丸太がランダムに立てられていて、静かにハルが睨んでいる。
ハルの考えは丸分りだ。
どの位置で斬ってどのルートで移動すれば良いかイメージしている。
動いた途端に1本が斬れて2本が斬れて、全てが一瞬で斬れていた。
余りにも速い斬り方の為に、丸太が燃える間もなく斬れていたのだ。
普通なら切り口が燃えるの当たり前であった。
今日は珍しくハルが料理してくれるらしい。
「師匠、わたしの試し切りが映る前に教えて下さいよ」
「1度、監督に見せられたはずだよな・・・それに録画もしてるぞ」
「師匠は分ってませんね。テレビでリアルに見るから良いのであって、録画とは違うのが分りませんか」
「さっぱり分らんな」
「ピンポン、ピンポン」
「師匠!出て下さいよ。わたしは料理中で出られませんよ」
「分ってるよ」
玄関を開けるとサヤだった。
「お邪魔します。ハル師匠に呼ばれてきました」
「ハル!サヤちゃんが来たぞ」
手を拭きながら「待ってたわ。汚い所だけど遠慮せずに入って」
なんだよ、その言い方は・・・
真剣な顔でサヤを見ながら「はい、おめでとう。もう、あなたは鍛冶の独立を認めます。これが独立認定書です」
ハルの達筆な字で書かれている独立認定書を受け取りながら、シクシクと泣きだすサヤだった。
「あなたの今までの頑張りを鍛冶の仕事に向けて頑張ってちょうだい」
「はい・・・師匠」
なになに抱き合って、ハルも泣いてるぞ。
なんだか俺だけが置いてきぼり感が半端ないぞ。
気が付いた時には番組は終盤で、ルーンナイフのラインナップ紹介だぞ。
雷ナイフ
火ナイフ
風ナイフ
水ナイフ
番組が終わってCMに入ったぞ。
「ハル、番組が終わったぞ」
「師匠のバカ」
なんで怒られなきゃならない。
番組の反響は凄かったらしい。
魔法属性付きのナイフのラインナップが紹介されると、世界中のスキル覚醒者は歓喜のあらしに喜んだ。
魔法士に頼り切った討伐が魔法士抜きでも討伐が可能になったからだ。
特に雷ナイフは凄かった。
各国は、雷ナイフ獲得の本気モードに突入。
手にしたい青い魔石が手に入るのだ。
それに、魔法士も接近戦用武器が手に入る事になる。
威力大になり魔力消費も少なくて済む。
それにサヤのファンクラブが結成されたらしい。
発起人は、あの監督だ。
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