第70話オークション




「師匠、師匠、もうすぐ始まりますよ」


「え!ハル、いつ来たんだ。ベルを押して「お邪魔します」ぐらい言えよ」


スナック菓子を摘んだまま、ニコッと笑って話し掛けてきたぞ。

足を放り投げた状態で床に座って、ソファにもたれ掛かってだるそうにすぐテレビを見たぞ。


「いいじゃーないですか・・・師弟の間柄で堅苦しい事はなしですよ」


いやいや、それは俺が言う言葉だぞ。

それに今度は、テレビを見た状態で話してるぞ。


仕方ない。俺もソファにもたれ掛けた。


「今日の最後の品です。203番【ルーンナイフ】です。それでは1000万円から開始です」


あれ!シーンと静まり返ってるぞ。


「はい、1000万入りました」


ようやく入札されか・・・一時はどうなるかと思ったぞ。


「え!5億です。海外の方が5億が入りました」


「師匠!次々に入札が入って上がってますよ・・・今度、豪華なレストランでおごって下さい」


俺は知ってるぞ。レストランより焼肉店か居酒屋が好きな事を・・・


「もういませんか、いませんか、14億円で落札されました」


「やったー!おごり確定!」


俺って、そんな約束したかよ。




結局、アメリカ人に落札されたようだ。


佐々木部長からのメールの内容に書かれてた。

ギルドを通して振込み確認がされたそうだ。明日には俺のギルド口座に振り込まれるらしい。


それにしても佐々木部長は、 大した人物だよな。

国内の主立った覚醒者に、しばらくすれば同じ武器が定期的に出るって噂を流したらしい。


だから国内の大口連中は、入札をひかたらしいぞ。



ー   ー   ー   ー   ー   ー   ー   




アメリカのギルド本部では、数名が集まり密かに話し合が持たれていた。


マスター「それでルーンナイフの研究成果は、どうなっているの」


「日本側が動画で発表した内容は事実である事が確認されました。スキル覚醒者より魔法覚醒者の方が威力やブレイドの伸びが率が良いので驚きを隠せません。そしてナイフ内には、高密度な魔力が感じられます。特に文字部分に強い反応があります。覚醒者の魔力を使って一時的に魔法もどきのブレイドを発していると結論づけました」


マスター「わたしが気にしてるのは、わが国で作れるかどうかだ。作れるはずよね」


「今のスタッフや科学では無理です」


マスター「スタッフと言ったな、何か見つけたのかしら・・・」


「あのナイフのグリップには、【神】と漢字で彫られてました。ならば日本人の誰かが製作したもので間違いありません。それを証明するわずかな血を検出しました。血液はO型、DNA鑑定でもアジア人の日本に間違いないでしょう。DNAデーダベースで調べた結果、日系アメリカ人のジュン・神永かみながが最も近い親族です。そのルーツを神須村でした」


マスター「あそこか・・・なんとしてでも調べ上げるべきね。CIAにも協力をあおげばいいわ」


「マスター、よいでしょうか」


マスター「なに、大事な話でしょうね」


「はい、これは私の友人から聞いた話ですが、ルーンナイフが定期的に出ると日本では噂になってます」


マスター「それは本当・・・」


「それなら研究にもう1本、欲しいですね。私はナイフを切断してトコトン調べる必要があると考えます」



「ビービービー」と急に部屋中に警戒音が鳴り響いた。


「緊急連絡!ニューヨーク地下鉄から魔物が出現。住民被害多数報告されました」


マスター「すぐ近くだわ・・・あの黒煙が出現場所のようね」


窓の防護シャッターが一気に開いた瞬間に、黒煙が目に入ってきた。


マスター「ダンジョン捜査局は、分からなかったで済ませない。・・・ルーンナイフは、ここにあるのね。ならば適任者に持たせて行かせなさい。全責任は私が持つから」


「分かりました」


男性はiPhoneで連絡しながら出て行った。






「こんなナイフで戦えって、冗談じゃない」


「信じて下さい。斬る時に「斬る」と念じてから斬って下さい。それとナイフに魔力を流してくれれば凄い威力のブレイドが伸びるはずです」


仕方ないギルドマスターの命令らしいから、やってやるぜ。



なんだよ・・・この手応えのなさは・・・


一振りでリザードマン数体を切断している状況が理解できなかった。


「ハロルド!何をボケッとしてるんだ。その武器は1本しかないんだぞ。しっかりと倒して来い」


1秒2秒も無駄に出来ない時に・・・


「ナメるなよ!全てのリザードマンは、俺がやってやる」


リザードマンが群れる中に飛び込んだ。


「水球を打たせてたまるか!」


魔法詠唱中えいしょうちゅうのリザードマンがあえなく切断。

近くに居たリザードマン10体も巻きえをくらっている。


「どうだ殺される痛みは痛いだろ・・・それを、それを・・・俺様が狩り尽くしてくる」


男がナイフを振る度に、リザードマンのしかばねが増えていった。

もう男は取り付かれたように、戦い続けいる姿は復讐の修羅しゅらだった。


もう倒した数は、1万も超えているはずなのに、疲れを知らない。



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