第62話幼馴染




「おはよう。イサム、居るか・・・昔、住んでいた三郎だ。京子も一緒に来たんだ」


声を聞いた俺は、懐かしく子供の頃を思い出した。

玄関ドアをガラガラと開けると、すっかり変わって成長した2人がそこに居た。


「懐かしいな・・・どうしてた」


「俺らは結婚したんだよ」


「いつだよ」


「1年前に・・・東京で偶然会ってさ、色々あったんだ」


長話をして、覚醒判定がダメだったらしい。その事で2は、凹んでるらしい。

ならば力になれると2人をギルド支部へ連れてやって来たのだ。




「探索者登録しないとダメか・・・」


「ダメだな・・・捕まって刑務所行になるぞ。鑑定時はあくまでも臨時措置だから許されただけだからな」


緊張気味の2人は、牧田のおばさんに「あごを少し引いて、笑わなくていいから」

カメラで顔写真を何枚も撮られた。今度は全身写真も撮られた。


「今度は、狭いけどこの個室に入って、画面を見て適切に装置を装着するのよ」


「これって、ここでいい」


「なんだね、画面とは反対だよ。世話の焼けるこだね」


ボックスタイプの個室で、外からは丸見えだ。


PCの質問300に「これって何の意味があるんだよ」とぼやき声が、スピーカーで漏れ漏れだ。

本人は知らない。


手には脈拍測定と汗チェックのバンドが、頭には脳波測定のヘルメットが装着。


俺とおばさんは、ノータッチだ。

答えてしまうと質問の意味がなさないからだ。


「当日発行だから1人1万円だよ」


会計を済ませた2人は、ようやくギルドカードもらった。


「やっぱり顔写りが悪いわね。わたしなんか美人に写ってるのに」


「そんな顔にれたくせに・・・」


「つべこべ言わずにダンジョンへ行くぞ」





「本当に大丈夫なんだろうな」


「大丈夫だ。俺の評判を聞いて帰って来たんだろ。成功するか分からないが、試す価値はあると思うぜ」


「あんた、わたしが付いてるから心配しないで」


「お前も普通の一般人なんだぞ。なぜそんなに平気でいられるんだよ」


「だって・・・覚醒者になれるチャンスなのよ。鑑定認定でダメだし喰らって泣いてたのよ。あんたは悔しくないの」


「そりゃー悔しいよ」


もう幼馴染2人は、ほっといて警戒しながら先に進んだ。


やはり進んだ先は、狩り尽くされているようだぞ。

ゴブリンのゴも見かけない。

それでも2人の為に、警戒はおこたらないぞ。



こうなるのも村にやって来て、鑑定してスキル覚醒者と認定されたら者達の仕業だ。


最初にやるのがダンジョンに入って、ゴブリンを狩りまくる事だ。

それようの武器や防具もギルド支部で、貸し出しOKにしてるのも原因である。


狩って狩りまくって、スキルでの強さを実感する狩り場が神須ダンジョン。

そんな奴らは、2階層はスルーして3階層でも狩ってるだろう。



「この階段下がスライムだから気をつけろよ」


「分かってるよ」


スライムが居たぞ。「バチッ」と放電して始末を急いだ。


「本当にスライムを倒したの」


「ああ、だから心配しなくていいぞ。もうちょっと先の広い空間で2人に試すから、心の準備をしてくれ」


「・・・・・・」



「バチ、バチ、バチ、バチ、バチ、」と全てスライムを討伐し終えたぞ。


キラキラ光る魔石を珍しそうに見る京子は、「これって最近評判の青い魔石よね」


「ああ、そうだよ。ギルドからも秘密扱いだから誰にも言うなよ」


「これが青い魔石なのか・・・」


手伝ってもらって回収を済ませた。



「さあ、どっちが先だ」


「レディーファーストだ。京子が先にやれよ」


「あんた、もしかしてビビってるの・・・わたしがやるわ」


「じゃー、背中を触って魔力を流し込むから、気分が悪くなったらストップと言ってくれ。三郎は京子が倒れそうになったら抱き止めてくれ」


「おお、分かったぞ」


「ちゃんと抱き止めてよ」


「分かったって言ったろう」


「いくぞ」


素早さアップの覚醒者に何度も接触してるから、どのような感じか丸分かりだから、同じような感じで魔力を流し込んで循環させた。

最初だから無理をせずに最小限の魔力だ。


「なにかが入っってきた・・・体中がむずがゆくてどうしよう」


「ストップするか・・・」


「大丈夫よ・・・これぐらい我慢できるから」


10分も循環を続けたら、素早さアップと表示されたぞ。


「成功したぞ。素早さアップだ」


「そうなの・・・わたしもそんな感じがしたわ」


「はやく動きたい時だけ「速く動け!」って感じで発動するらしいな」


即、速い動きで走り回ってるぞ。


「嘘だろーー、そんなに速く走れるなんて・・・」


ようやく動きを止めて自慢顔の京子だ。



俺は覚醒者になった人物の、暮らしや性格などを統計的に調べた。


100%の確立で、ダンジョン近くの住人か探索者だ。

マナが少ない地球で、マナに触れ合う人間が覚醒しやすい。


だから、ダンジョン近くに住んでいた幼馴染も、未知数だが可能性があると考えた。

案の定、証明された事になる。




「今度は、俺の番だな・・・はやくやってくれ」


三郎には、力アップが良さそうだな・・・鑑定でも力アップが良い感じの体のようだ。


もう真剣な三郎は、触っての注入にも微動だにしないで、目をつぶったままだ。

最初は中々な硬さを感じて、魔力が入らないから失敗かと一瞬思った。

失敗して悲しむ顔なんか見たくないぜ。

時間を掛けても成功させてみせる。あ!急にストッンと入った。

あとはいい感じで魔力が回りだしたぞ。


いい頃合になったな。


急に三郎が「よっしゃーー取ったぞ!」と右コブシを高々と上げてる。


そして、何してんだ。

ボディビルダーがするポージングを「ハ、ウ~ン」として見せ付けてるぞ。


俺は笑いを堪えるのが大変だったぞ。


なに・・・京子はウットリ顔だぞ。

お前ら、可笑しいぞ。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る