第60話動画放映




日本中が1つの動画を見ている。


我が家でも大型ディスプレイ・モニター86インチの最新5Kが占領した部屋では、ふすまを外して見る羽目に・・・


「ハル、前に行き過ぎだぞ。こっちまで来ないか・・・ふわふわソファーに座るといいぞ」


ソファーに座らずに、ソファー前にチョコント座りだした。

遠慮してるのか・・・体育座りでまだかまだかと待ってる。


「ハル、その座り方は悪い座り方だぞ。別名【囚人しゅじん座り】と言って体や精神に悪いぞ」


「え!本当ですか」


「ソファーにもたれ掛かって、足を放り投げて見るといいぞ」


「はい、そうします」




「ご覧下さい。30階層へ人類が初めて足を踏み入ろうとしています」


生配信のように動画に対して説明するアナウンサーが、半端なく力説まくってるぞ。


「良かったなハル、皆が注目してるぞ」


「師匠、恥ずかしいから突っ込まないで下さい」と言ってから、足を平手打ちだ。


思わず「痛いぞ!!」


「すいません、すいません、師匠」



ハルの顔がアップに映しだされて、今度は全身を下からなめるように映された。


「見て下さい。緊張した顔で30階層へ踏み出しました」


30階層は、横が9メートル、高さは10メートルもあった。


「ズシ、ズシ、ズシ」とゴーレムが現れた。


俺は前もってゴーレムの弱点を知らせている。

ゴーレムの首辺りがレムの頭位置だ。

そこへピンポイントで撃ち抜けば、ゴーレムはひとたまりも無いはずだ。


ハルは、火球の回転力を上げてラグビーボール状まで変形させて、撃ちだした。

ゴーレムの首が吹っ飛んで、「バラバラバラ」とゴーレムが崩れる。


「あの火球は凄いですね」


「あの回転力が素晴らしいです。見た目も頑丈なゴーレムをあのように倒すなんて、素晴らしい、なんて素晴らしい魔法だ」


同行してるのは、トップランカーのスキル覚醒者の面々で、ハルとも少しは話た事があるらしい。

カメラマン、マイク係り、ディレクターけん照明係り、荷物係り4人がスキル覚醒者。


わざわざ今回の撮影の為に、ギルドが依頼したらしい。

普通の人間に撮影させるには、余りにも危険な場所だ。


日本ギルドは、どうしても撮影して世界にアピールしたいのが本音だ。

それが丸分かりの行動であった。



当初はギルド職員が撮る予定だった。

しかし、法務省から待ったが掛かった。

ダンジョン内で職員が死んだ場合は、「誰が責任をとるんだ」と意見が飛び出した。


もしもの時は、法務大臣の辞任まで発展しかねない。

そう言って法務大臣まで、文句を言い出した。


仕方なく高額依頼でトップランカーの登場となった。




1つの空間に出たようで、地面からゴーレムが突然にせり出して動きだしている。


「ご覧下さい。3体のゴーレムです。この攻撃態勢はトライアングルフォーメイションでしょうか」


「そのようです。水上さんが大ピンチです」


すでに詠唱えいしょうして3つの火球が高速回転を完了。


「撃ち滅ぼせ!!」と同時に放たれた。


「ブシュン、ブシュン、ブシュン」と頭がもげ落ちた。


動いた状態でバラバラと崩れるゴーレム。


「なんと!3体のゴーレムがほうむられました」


「ああ、私は、なんてバカ者でしょう。水上春さんを信じきれてませんでした。ああバカだ」




「師匠!」


「なんだ急に」


「どうして師匠と一緒に潜ったのに、映さないんですか・・・」


「その時は、カメラ班も居なかったからな・・・それにカメラ班が向かう日と、スライム討伐が重なったからな・・・何か不満か」


「なんか、師匠の手柄をとったようで・・・弟子としては恥ずかしいです」


「まあ良いじゃないか・・・俺は気にしてないぞ」


「師匠、ありがとう御座います」




「山田先生、あの飲んでいる紫っぽい液体は何でしょう」


「ああ、あれですか・・・最近開発された魔力を回復するマナポーションです」


「すると、あのマナポーションはダンジョン攻略に欠かせませんね」


「そうですよ、マナポーションで時代は変わるかもしれません」



そのニュースは世界を駆け巡った。

そうなると鑑定依頼が更に跳ね上がって、鑑定料金ま上がってしまったらしい。


需要と供給で神谷弁護士が、ギルドに対して更に掛け合った。

需要供給図を持ち出して、「適切な価格を決定してもらいたい」と言い張った。


喜んだのは神田じいさんで、孫に高い車を買ったらしいぞ。

まだ19の若造に・・・


それと同じようにマナポーションも注目を浴びだしている。



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