第59話儲け話




それは涼しい風が吹き抜けて、ごく普通の景色だった。


中国の北京南駅が夕暮れを過ぎて、暗くなっている。


夜の駅には大勢の人達が、往来している中で複数の人間が突然に苦しみだした。

周りの人達は、驚いて逃げ惑った。


中に勇敢な男が介抱しようと近づいた。


「近づくな!!吸血鬼だ!すぐに逃げろ!」それはスピカーからの声だ。


苦しんでる女性が男に飛びついた。首にかぶり付いて血を吸っている。

美人な女性が手で口をぬぐって恍惚こうこつの表情を見せている。

そして、死んだ男を盾にして隠れるようにして移動。


他の苦しんだ人達は、天井から降り注ぐ光から身を隠した。

荷物をまさぐって何かを取り出している。

そして天井に向かって機関銃をぶっ放した。


「ダダダダダダダ」と銃声が北京南駅内を反響し続けている。


もう隠れながら複数の機関銃が鳴り響いた。



天井から降り注ぐ光は、癒しの光を弱くして照射している。

装置の前には、強力な防弾ガラスが張り巡らされて銃弾が貫通する事はない。


しかし、警備モニター室の操作で、癒しの光りが強められて吸血鬼に注いだ。

その光に照射された吸血鬼は、一瞬で消え去った。


それでも天井からの照射が無理な位置に、逃げ込んだ吸血鬼は逃げられない状態のまま続くかと思われた。


「手持ちの銃は、それ1丁しかないぞ。支援は出来ないが頑張ってくれ」


「任せて下さい」


男は特殊訓練を受けて、昨日から配属された優秀な警察官であった。


周りを警戒して走りだした。そして特殊な銃を持ったまま滑り込んだ。

死んだ男を片手で持ち上げる吸血鬼に、横合いから銃を撃ち放った。

光りが吸血鬼に当たった瞬間に、吸血鬼は朽果くちはてて消滅。


又も移動して撃ち放った。


吸血鬼側も上手く機関銃を当てる事が出来なかった。

銃から淡く光る照射が、視界を奪うからだ。

見た瞬間から目が焼けるように激痛が・・・


男1人で残りの吸血鬼を始末して「やっと終わった」とつぶやいた。



中国の北京週報がトップニュースとして報道している。

北京南駅で吸血鬼との撃ち合いで、青石銃せいせきじゅうが大活躍。


民間人の死傷者も出ていたのに、その事には一切報道されなかった。





夜の闇夜に紛れて、滑空かっくうする吸血鬼がいる。


手に持った銃で、屋上を厳重に警備する狙撃銃と双眼鏡を携帯する特別要員を次々に殺している。

「プシュ、プシュ、プシュ」と鳴る度に死んでいる。


CIA本部『ジョージ・ブッシュ情報センター』の屋上にふわりと降りた。


吸血鬼の名は、マリア・ブッシュ。

マリアが可愛がっていた吸血鬼で、マリアの名が与えられている。


マリアと同等に空を飛べる能力が備わっている。

足音もたてずに、ある配線盤に近づくと手際よく配線を触ってハッキングし出した。

セキュリティ対策も呆気なく破った。この男はハッキングのプロである。


目ぼしい情報をコピー中に、違和感を感じた。

しかし、遅かった。


青石銃の威力をマックスした銃から、光りが照射されて男はちりとなっている。

本人も何が起きたか分からなかっただろう。



アメリカ政府も正式発表した。


「CIA本部に、ハッキングした吸血鬼は排除しました。我々は吸血鬼に負けない力を獲得しました。国民の皆さん、安心して暮らしてください」


記者達の質問が飛び交っている。


「報道官、それはどんな力ですか?」




牧田のおばさんが、ニュースを聴きながら聞いてきた。


「あの照射装置や青石銃は、幾ら位で売ったの誰にも言わないから教えて」


もう、おばさんの情報通は困ったものだ。


「おばさん、あれって俺が作ったように言うが、作ってないよ」


「うそーー、正直に言いなさい」


「聞いた話だと照射装置は、諸々な装置と連動してるから80億らしいよ」


AIも付いて、高感度カメラは人工衛星に載せるぐらいの高品質らしい。


「え!あれが80億・・・」


何処から洩れたのか、新聞紙には大雑把な設計図が載っていた。

まあ概要がいようだから、その設計図で作れる物でもない。

大きさも2メートル四方のボックスだ。


おばさんは、首をかしげながら新聞を広げて見てた。


「こんな物がね・・・日本ってぼったくりでもしてるのかね・・・」


「そうだね・・・俺にも、どれだけもうけてるのか教えてくれなかったよ」



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