第58話魔野菜
急に佐々木部長が、エレベーターの17階ボタンを無言で押したのだ。
「何故、17階で降りるのですか?」
「いいものを見せてあげるわ・・・期待してて」
長い廊下を歩いた先には、広い空間が広がっていた。
規模はドーム球場程の広さだ。高さは3階層を丸ごと使った高さだ。
そこでは草が栽培してるぞ。それも人工栽培って言うやつだ。
それが1階から3階の高さまで、段々に積み重ねられた栽培工場と言っても過言でない。
使われてる照明は、赤っぽいLED照明で目がチカチカしてきた。
床には土1粒も無い無菌状態。
十分に育った草が、自動で動くアームが勝手に運び出したぞ。
「どうかな・・・あの草は、普通の草と全然違う効果を人間にもたらす不思議な草なの」
「え!どっから持って来た草ですか」
「北海道の大雪山を覚えてるかな、あの時に這い出したリザードマンが地上に持ち込んだらしいのよ」
「あの戦いに・・・そして、どんな効果が・・・」
「青い魔石の傷を治すぐらいの効果が確認されているわ。知っての通り青い魔石もダンジョン内では暴走して、異常回復で命を落とすケースもあるほどだから。しかし、あの草の汁なら深い傷でも治してくれる。だから【やく草】と呼んで絞った汁は【ポーション】と呼ぶようにしてるのよ」
俺はその時にピンッとひらめいた!
佐々木部長が引き止めるのを無視して、急いで家に帰った。
畑にやって来た俺は、畑に片手を付いて土魔法を唱えたぞ。
グラグラと揺れだして、ふかふか状態の畑へとさまがわりだ。
そして、オーガの集落から持って来た、毒入り野菜の種を種類別に蒔いて行った。
中央には緑の魔石を埋め込んで、散水機のコックを急いで回した。
畑全体にノズルから水が一定のリズムで散布されたぞ。
そのリズムにのって芽が出てきた。
あっちには黒ぽい
手前の白菜もどきもスクスク育って、紫の葉をドクドクしくひろげている。
そして全ての野菜を収穫だ。
持ち帰った野菜を鑑定し続けた。
お!凄い発見をしたぞ。配合がピピピッと表示。
毒と毒と毒を掛け合わして、こんなものが出来ようとは・・・
もしかして、野菜の魔力がオーガにとって毒だったのか・・・
早速、佐々木部長と相談だ。
「すると・・・あなたは、大雪山であの野菜の種をたまたま見つけて持っていたと言うのね」
「はい、それで間違いありません」
ここは嘘を突き通すぞ。
「まあいいは、本題はこの薬ね。検証して確かめる必要があるはね」
「ハルを使っての検証がいいですよ。俺がやったら誤魔化したと後でやいのやいのと言われますから・・・」
「分かった・・・」
ハルと同行して、ダンジョンへ入った。
「そのマナポーションって、独特の色ですね。不味くはないですか」
「大丈夫だよ。味見してもちょっとレモン味でいい感じだよ」
「そうですか、嘘は御免ですよ」
ハルは、リザードマンを相手に火球を操って腹に大穴を開けて倒した。
横合いから襲うリザードマンには、もう1つの火球が切裂くように肩から腰へ貫通。
もうリザードマンは、ハルの相手ではなかった。
「このマナポーションのおかげで、気兼ねなく魔法が使えて楽勝です」
「それは良かったな。それで魔力は大丈夫か」
「まだまだ大丈夫です。30%の消費ぐらいかな」
同行していたスタッフは、急いで記録を取っている。
もう1人のスタッフは、バッテリーを担いでカメラで撮影中だ。
ここでの検証には、制約があった。
火魔法の火球のみでの討伐だ。火球を何個出して、何時間使ってるか測定係りが詳しくカントしてる。
魔力消費は、鑑定でも数値としては出ない。
もう感覚の世界だ。だから公平をきたす観念から火球のみの使用だ。
「魔力が50%消費した感じかな」
「それでは、100ccのマナポーションを飲んで下さい」
「アーァ!この甘酸っぱさは好きだわ。消費された魔力も回復するのを実感するから」
「どれくらいの回復ですか・・・」
「そうね、40%回復した感じかな・・・」
神谷弁護士が佐々木部長と交渉中で、激しい火花を散らしてた。
「いえいえ、それは低く過ぎる値段ですね」
「それでは、魔野菜を全て引き取って加工までこっち持ちでどうでしょう」
「どうしますか、あのように言ってますが」
「加工するのも大変だから、それでいいですよ」
「吉沢、契約書類作成を急いで」
「はい」と言って、吉沢は部屋から急いで出て行った。
書類には100ccのマナポーションが10万円と書かれてた。
前回は100ccを3262本も制作したはずだ。
「3億2620万円は、今日中に振込みますのでよろしくお願いします」
その言葉を発したのは、黒メガネを掛けた女性だ。
その女性は、佐々木部長に何枚もの書類を手渡して足ばやに去った。
ギルド側は、市場にどれ位の値段で販売するかは未定だった。
神谷弁護士の話だと13万から15万だと・・・
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