第50話王都での吸血鬼

 



夢中で本の鑑定をし続けていたら、誰かが来たようなので振返った。


「あの~もう日が暮れかかってるので閉館をします。失礼ですが退出をお願いします」


「え!もうそんな時間ですか」手に持っていた本を戻した。


館内に響く足音は、俺と彼女しか響かない程に静かすぎいるぞ。



出口付近では男性が待構えている。

一瞬、何事かと考えた。

そして男性によって体のすみずみまでまさぐられる羽目に。


「中には良からぬ者も居るから諦めろ」と言われた。


そうだよな・・・紹介状があっても俺なんか信用できないよなー。


「それでは失礼します」と言って王立図書館を出た。




なんなんだ・・・この違和感は。

あ!思い出した。吸血鬼の独特の気配だ。


俺は画面を注視。

あ、微かに吸血鬼の表示が消えたり現れたりを繰り返した。

もう太陽は沈んで、俺はヤバイ状態だ。


路地裏に入って、奴ら誘う事に・・・

もう暗い路地は、ひと気もなくなっただろう。


前から男女が現れた。


後ろには数名の男が道をふさいでいる。


「あんた、魔人に興味があるみたいだな。もうこれ以上探るのはやめな」


「嫌だと言ったら」


「殺せ」


十字剣をパッと取り出した。


「1人は、必ず生きたまま捕まえろ!」


一瞬で動いた十字剣は、後ろの全ての男の首をねた。

そして空へ飛び跳ねた男の心臓を突き刺した。


男の体は一瞬で消え失せた。


女1人が逃げるタイミングを逃していた。

十字剣の淡い光によって、身動きが出来ない状態にされてるぞ。


「私をどうする積りよ」


「さあ、ヴァンパイアの居場所を言え」


「私は何も知らないのよ、知っていても言えるはずがないでしょ」


鑑定した結果も知らないようだ。

しかし、貴族で吸血鬼にされている人物は分かった。


更に鑑定をし続けた。


十字剣が俺をかばうように、何かを無数に弾いた。

地面には、俺が売ったナイフが無数に落ちていた。


十字剣は、空へ飛んで何かを斬っている。

更に飛び回って斬っていた。


「来るな化け物が・・・やめてくれ!!」


空ではそんな声が響いている。


俺は、思い出したように女を見た。

心臓に突き刺さったナイフを握り絞めて苦しんでいる。


「しまった・・・俺では、なかったのか」


「あ、あ、・・・」と言葉を残して女は崩れ去った。



『戦いは終わったぞ』


終わったのか・・・もうここに居ては狙われるだけだ。


「お前の乗って、ここから逃げ去る事はできるか」


『逃げたいのだな・・・仕方ない・・・乗れ』


俺は、剣にまたがって柄部分を握った。

尻が切れないか心配したが、触っても切れない。


急に浮かび上がった。


「俺を振り落とすなよ」


『心配ならしっかりと掴まれ』と言い放って飛んだ。


王都が遠ざかってゆく。




アルポスの街へ戻ってきた時には、門も閉まって街中も暗く静まり返っていた。

こんな真夜中に、壁を乗越えてギルド前で開けてくれと騒いでもダメみたいだな。


今回は外で野宿だ。


普通なら平気で野宿していただろう。

しかし、今日は無理だ。十字剣にお願いするしかない。


「夜は吸血鬼の世界だ。一晩中、見張り頼む・・・」


『仕方ない・・・ゆっくりと眠れ』


その言葉を聞いて、気が緩んで眠気が襲ってきた。

毛布を取り出して、草むらで包まったらそのまま寝てしまった。





『起きろ!起きろ!』


「誰だよ、こんな朝パッから大きい声で起こすのは」


『せっかく起こしてやったのに、文句をいうのか・・・』


ようやく思い出した。




もう門の前には列が並んでるぞ。


吸血鬼の事は、ここは門番に言ってもらちが明かないだろう。

間違って投獄される恐れもあるし・・・


信用のあるギルドマスターに言うしかない。



ギルドに入っても満員だ。

俺は、はやる気持ちで並ぶ後から「ギルドマスターに至急会いたい」と怒鳴った。


「誰だ誰だ、マナーを守らないのは、あ、あんたは・・・」


俺に気付いた冒険者は、「どうぞどうぞ」と道をあけだした。

もう俺の活躍は有名で、俺の噂話がちらほら聞こえ出している。

そんな俺に受付のおっさんが、笑いながら言い放った。


「なんだ、あんたか・・・勝手に2階に上がりな」


「それじゃごめんよ」




「すると何か!吸血鬼が居たんだな!」


「間違いなく吸血鬼を退治して、逃げ帰っるしか・・・仕方がなかった。図書館で魔人について調べてたら襲われたんだ。誰を信用していいのか分からない状態だから、ギルドマスターだけが頼りだ」


「それ以上言わなくてもいいぞ。吸血鬼か・・・厄介だな」


「俺の事は、表立ってしないでくれ。また襲われるのは御免だ」


困った顔をしながら「分かってるよ。ドランゴンの1件で十分に分かってる」




領主に報告されて、近隣の領主が集められた。


「それは、本当なのか・・・」


「疑いがある貴族でもっと近いのは、ロウレン男爵だ。皆で行って吸血鬼の血の儀式で確認すれば分かる事だ」


「あの儀式をするのか・・・もう100年もされてない儀式だ。それでもやるのか」


「時間が経てば、こっちが不利なるのは分かり切っている事だ」






【吸血鬼の血の儀式】


指先を切って、皿に血を垂らして火を近づけると、生き物のように血が火から逃げる。

それで判定する方法であった。


主に夜に行なう儀式だ。


吸血鬼の疑惑があれば、この呼び方で皆の協力を仰ぐのが昔からの習わしであった。

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