第51話王都決戦




ロウレン男爵の屋敷前で、大勢の兵士たちによって包囲されている。

それに対してロウレン男爵の兵士は、50人程だ。


執事「何事で御座いますか・・・」


「よく聞け!吸血鬼の血の儀式をロウレン男爵にとり行う。ロウレン男爵を出してもらいたい」


「男爵様は・・・日中は部屋からお出になりません」


「なんだと・・・なおの事だ!中に入って捕まえて参れ!言っておくが、抵抗すれば斬って捨てるぞ!」


屋敷に押し入った兵士は、怒鳴り散らす男爵を取り押さえた。


「男爵の我に、そのような儀式をさせるのか!」


「これは誰もこばむ事が出来ない儀式ぞ。拒むなら吸血鬼として討伐するしかない」


押し入った貴族の1人が、窓に打ち付けられた板を外しだした。


「何をする貴様は!」


太陽の光りが差込んで、男爵の手に当たった。


「ギャー!!」と叫び、手がただれ出した。


「やはり吸血鬼だったか・・・殺せ!殺してしまえ」


更に板が外された。

1人の兵士が盾の裏側で反射させて男爵に照らし当てる。


顔がただれて、崩れ落ちた。


「き、き、きさ、まらが・・・」





王都を取り囲むように、各地の領主が旗をなびかせて見守っている中で、正門前では使者が用件をのべている。


「我らは、領主連合!・・・ここ王都に、吸血鬼が好き勝手に振舞ってると聞き、はせ参じた!王の叔父スレンテが吸血鬼に成り下がったのは承知の事実だ。すみやかに引き渡せ!!さもないと王都を攻め入るしかない」


時間が刻々と過ぎようとしている。当初は騒いでいた王都内も一向に返事がない。


「もう昼ぞ、このまま待てぬ・・・」


「はやく戦いを初めて、夕暮れまでに決着を決めなければ不利ぞ」


領主連合の面々からも苛立ちがみえている。


「ここで表決を取りたい。見た限り異議はないな・・・王都攻めに賛成なら席を立って戦の準備を・・・まだ攻め時でないと思う者は、ここで座って見ていろ」


全員が立上がって天幕から出てゆく。




「よいか!この国の命運が掛かった戦だ!!」の合図で軍が動き抱いた。



「撃て!!」の合図でカタパルト(投石機)から石が撃ちだされた。


壁に命中したがビクともしない。

それでも諦めずに同じ場所へ、何度も何度も石が撃ちだされた。



正門前では、破城槌はじょうついが兵士らによって打ち付けられている。


「まだまだ力を溜めて打ち出せ!」


「ドン、ドン、ドン」と門が鳴り響いた。


本当なら上から矢とか石が襲って来るのだが、そんな素振りもみせない。



壁が崩れ始めた。それと同時刻に門に槌が突き破った。


壊れた壁から兵士が雪崩なだれ込むと、開け放れた門からも大勢の兵が王都へ入り込んだ。


それ以前に、王都内でもあっちこっちで黒煙が上がっていて、内乱中であった。



そんな領主連合の前に、王都の兵士がさえぎるように現れた。

緊張が高まり、両者は睨みあった。


「我らは、国王の命令で領主連合に味方するべく、はせ参じました」


「ならば、王の叔父スレンテへ案内しろ!」


「こちらです」



城内を案内されて向かった先では、兵らによって戦い中で誰が味方か敵か判断が出来ない状態だ。


「やめろ!バカ者が・・・スレンテ公が吸血鬼か判断するだけだ。吸血鬼でなければ殺しはしない」


「それは本当ですか・・・」


「神に誓って宣言する。我、ここに吸血鬼でない者は殺さない。それでいいな・・・」


「皆!剣を捨てよ」


スレンテが立て込む部屋へ、皆が入った。



薄暗い部屋だった。


床に少年が倒れた状態で、胸に剣が突き刺さっている。

その横にスレンテ公が立った状態で、薄笑いを浮かべている。


「甥の国王が今死んだ。だから我が国王ぞ。臣下の分際で下がれ!!」


「なんとむごい事を・・・皆で、廊下の日光に連れ出せ」


「何をする!国王に向かって無礼ぞ」


1人は、スレンテによって打ちのめされた。


「同時に襲い掛かれ」


左右と前後で襲い掛かれて、それでも暴れるスレンテを廊下へと連れ出された。

最初に手が日光に晒されて、手がボロボロと崩壊しながら悲鳴ひめいが「ギャーー!!」と響いた。


「やはり吸血鬼であったな・・・」


土くれになった土を、皆が見てる前で兵士の1人が踏み散らかした。


「お前が悪いんだ、お前が・・・」


誰も止めよとはしなかった。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る