第49話魔王&勇者




まだまだ本はあった。


なんだこの本は、真っ黒だ。タイトルすら書かれてないぞ。

謎過ぎる本だが鑑定してしまえ。


あ、影を使った影魔法だ。

人間や魔物の影に入って、相手を自由に操れるとは・・・究極は、影にひそんで相手を殺してしまう事だ凄過ぎだぞ。

それに1度入った影なら、どんなに遠くに居ても影渡りで一瞬で相手の影から現れるとは・・・凄いの一言でしかない。



真っ黒な本の隣に、お目当ての本を見つけたぞ。

【ヴァンパイア】っと書かれた本が・・・この本の内容はどうなってるんだ。


急いで鑑定だ。


ヴァンパイアは、魔人から発生した亜種あしゅである。

太陽の光を嫌い、夜のみ活動するしかない魔人。


その特色の為に魔人からも格下として嫌われる存在。

そんな存在が・・・人間社会をどん底に落とし入れる存在になろうとは・・・


自身の血を分け与えて、人間を吸血鬼として意のままに操る夜の王となった。

それによって数多の国が滅んだ。


マジでそんな存在なのか・・・凄い情報だ。

あ!あった。太陽以外の弱点だ。


両目と心臓がヴァンパイアの弱点だ。


心臓は、いにしえから弱点らしい。


新たな弱点には、200年前の話らしい。

ヴァンパイアが忌み嫌う光魔法の選出の儀式の話だ。

聖女候補を襲った時に、にらまれて硬直した体であらがいながら必死で両目を指で貫いた。

その攻撃でもがき苦しんだヴァンパイアは、倒れて土くれとなった。

それによってヴァンパイアが支配した人間社会が終わったらしいぞ。


奴の両目が弱点か・・・今度は絶対に殺してやる。




「あれ!この本は・・・」


【勇者アブラーン】って、なぜ勇者の本がここにあるんだ。

とりあえず鑑定だ。


成る程な、この本は、勇者と聖女と賢者の3人によって魔王が封印される話だ。


魔人の悪行が細かく書かれてるな。

長い戦いを乗越えて、様々の種族を引き連れて魔王城に攻め入った。

多大な犠牲を出して、魔王と3人の戦いがこと細かく書かれた本だ。


そして魔王と戦うシーンは凄すぎだ。


傷ついた勇者らは、最後の攻撃に移った。


魔王は、聖なる鎖によって束縛された状態で、一時的に身動きが出来ない。


『こんな鎖で束縛し続けられると・・・魔の力をあなどるな』


「もう全て攻撃が効かないわ。それにもう聖なる鎖も切れ掛かってのよ」


「仕方ない。禁断の魔法を使うぞ」


「あの魔法を使うのか・・・俺たちもどうなるか分からないぞ。それでいいんだな」


「ここまできたら・・・やるしかない。皆の力を貸してくれ」


『まだ諦めない積もりか・・・どのような魔法も我には効かぬわ』


聖女は祈った。賢者は巨大な魔法陣を展開していた。


勇者は聖なる剣を魔法陣に投げ入れた。

魔法陣は縮小しながら鏡になった。


聖女の祈りが鏡に影響して、鏡が動き出した。

向かった先は魔王だ。


『お前ら!何をする気だ!!』


鏡が魔王に当たった瞬間に、光に包まれた。

光りがおさまった時には、魔王も鏡も消え失せていた。


「魔王の封印が終わったのか」


聖女と賢者は、倒れたまま動かなかった。

そんな2人を見ながら勇者はつぶやいた。


「すまない」




俺がこっちに来た状況と、ちょっとだけ似てる。

話には、多かれ少なかれ脚色が入ってる可能性があるから、もっとシンプルだったかも知れない。

3人の誰かが鏡を出して魔王に触れさせた。そして鏡の中に入れた。

ならば魔王は・・・


もしかして魔王を、俺らの世界へ行かせたのか・・・


こっちの人間とは子供は生まれないが、俺らの世界の人間とは子供が出来た可能性は考えられる。

魔王には帰る術が無いのだ。そして好きな女性ができたのかもしれない。

その幸せを大事して、大人しく暮らしたのかも・・・それに魔力が少ないのが俺らの世界だ。

老化も同じように進んだ。


するとハルは、魔王の子孫で魔の継承者なのか、それなら納得出来る話になるのだが・・・

いやいや複雑なストーリだ。



なら俺はどうなんだ。


これは俺の妄想の話だ。


先祖がこっちの世界に来て、帰れないまま住み続けた。

そして現地の人と恋に落ちて、そのまま子供が生まれた。

その子が大人になって、なんらかの方法で俺らの世界へ戻って来た。

顔は。親の顔と似てるから、そのままいつ居た。

親からも俺らの世界の話を聞かされたはずだ。だから何事もなく馴染んで暮らした。


まるで御伽噺おとぎばなしだ。

なら、勇者か聖女か賢者の血を継承していてもおかしくない。

だから異世界へ行けた。ダンジョンのアイテムも切っ掛けなのかも・・・


あああ、ややこしい話だ。



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