第43話鑑定士、アメリカへ行く




久し振りに神須ダンジョンでスライム討伐を終えて、おばさんがいるカウンターテーブルへ青い魔石をぶちまけた。

あ!ちょっと広げ過ぎたかな・・・


「あらあら、やっと青い魔石だね」


ひろがった魔石をかき集めて、1つ1つを念入りに数えだしている。


「そうだ、元村長がね、知らない間にアメリカへ行ったの知ってるかい」


「え!アメリカに行ったの・・・よく行けたね」


「それがね黙って行った事がギルドで問題になってるんだよ」


「そりゃー鑑定士が勝手に何処かへ行ったら怒るよな」


「どうやら在日米空軍の横田基地から、アメリカへ行ったらしいね。家族と一緒に・・・」


「あらららら・・・日本政府は怒ったろうね」


カウンターの下から新聞を取り出して「詳しい事は、この記事をみて」

その新聞は、俺がゾンビ退治をしてる時の新聞だ。


見出しは【日本の鑑定士、アメリカへ連れ去られる】

日米問題に発展かと記事は続いていて大変な事になってるぞ。


「もうこの村では大問題だよ。どうやらだまされて行ったらしいね。誰もアメリカ行きなんか知らなかったし。元村長なら必ずしゃべってしまうからね」




それから数日後だ。


俺とノア姉妹が、ギルド本部の会議に強制的に参加させられた。

どうやらアメリカとリモートで話し合うらしい。

あ、あんな所に佐々木部長が偉そうに座ってるな・・・


あ!話してる相手は、確か総理大臣だ。

最近になった総理で・・・なんだっけ・・・思い出せないや。


あ、画面にアメリカ大統領が映し出されてるぞ。

メアリー・ブラウンだ。初の女性大統領で気が強いのが特徴の大統領だ。


『わたしの国に喧嘩を売るつもりかしら』


あ、耳に付けたワイヤレスイヤホンから通訳された女性の声が・・・

誰かが通訳してる・・・


横の姉妹をちらっと見た。

互い手を握り合って画面を食い入るように見ている。


「そんな積もりはない。ただ礼儀をわきまえてもらいたい。自国の人間を勝手に連れ出されたら、怒るのは当たり前だと思うのが君は違うのか」


なんとなくだが総理と大統領は、知らない仲ではなさそうだ。

総理を鑑定し続けたら・・・な、なんとアメリカ留学時に恋仲の関係だぞ・・・

俺は、そこで鑑定を止めて、もやっとした妄想を振り払うしかない。



「あなた方が、我が国の国民に対して鑑定を渋ってるから、強行手段に出たまでよ。1ヶ月経った帰すわ」


「君の国の唯一の魔法士は、こっちに居るのを忘れてないかね。それに誰が魔法士を育てるんだ。そっちで魔法の素質があっても覚醒した者が居るのかね」


「それがどうしたの・・・時間をかければ自力で覚醒するわ」


「こっちのデータだと、無理だと数字に出てるぞ。君は数字を信用しないタイプなのかね」


大統領の眉間にシワがよって、難しく考え込むしぐさをしてるぞ。

そして補佐官を呼び寄せて何やら耳打ちしてる。


「アメリカ人のノア姉妹も、魔法士として高みを目指してるのが君には分からないのか。それにアメリカで魔法士として育成が出来るのかね。どうだろう100人の魔法士を引き受けよう。鑑定も1月500人まで鑑定しよう。こちら側の譲歩もここまでだ」


そんな光景を見てた俺は、違和感を感じて仕方なかった。


あ!向こうの画面に元村長が、ちらっと映った。

一瞬だが複雑な顔でキョロキョロしている。

本人も場違いだと分かってるのだろう。そして画面が切り替わった。


そうだ。違和感を探さなくては・・・

会議室の人々をゆっくりと鑑定してゆくが、不審な人物は居ないぞ。

変だなーと考え込んだ。



皆が席を立ち上がった。


「先生、行きますよ」とアリンが声を掛けてきた。


「もう終わったのか・・・」


「終わったわよ。聞いてなかったの」キツイ声でシアンが言ってきた。


「どうなった」


「交渉は上手く終わったわ」


俺は振返ると、アメリカ側も席を立つ光景が目にはいった。

そうか・・・そうだったのか・・・


俺も急いで佐々木部長を探して、会議室を出る姿を発見。


誰だよ、俺の押し退けた奴は・・・

あ!総理だ・・・SPに囲まれながら出て行くぞ。


俺を押したのは、SPだ。

俺は、ポカンと見てた。


そして思い出して、佐々木部長にスマホで連絡だ。



日本政府がチャーターした飛行機が、ゆっくりと夜の滑走路を滑り込んだ。

そして村長が待つ位置まで進むとゆっくりと止まった。


ドアが開き牧田のおばさんが顔を出していきなり「村長、偉い事になったね」と話し出した。


「え!あんたが迎えに来たのか」


そして家族共々で牧田のおばさんを歓迎してた。

おばさんは、こっそりと「急いで飛行機に避難するよ」とささやいた。


家族を守っていた女性が動き出したのはその時だ。

しかし、俺は隠蔽状態いんぺいじょうたいのまま女を蹴り倒した。

そのまま後ろ手に手錠を掛けた。


周りは何が起きたのか分からない。


そして、残りの男1人を電撃を放って気絶させた。

ようやく隠蔽を解除。


「お前たちが、吸血鬼だとばれてるぞ。あの会議室を去る時に見せたマリアと一緒の微笑を俺が見逃すと思ったか」


あの2人は、FBIに引き渡された。

この2人は、日光に耐性のある吸血鬼だ。

鑑定にも、日光耐性(10分)と表示だ。


そのまま鑑定をして、マリアの居場所を突き止めた。



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